【ITニュース解説】「Windows Admin Center 2410」で利用可能なPowerShellコマンドレットを知る[その5]――Migration関連コマンドレット/PowerShellTools関連コマンドレット

2025年09月10日に「@IT」が公開したITニュース「「Windows Admin Center 2410」で利用可能なPowerShellコマンドレットを知る[その5]――Migration関連コマンドレット/PowerShellTools関連コマンドレット」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Windowsサーバー管理ツール「Windows Admin Center」で使えるPowerShellコマンドを解説。今回はサーバーのデータ移行(Migration)や、PowerShellを便利に使うツール(PowerShellTools)に関するコマンドを紹介し、管理自動化の知識を提供する。(119文字)

ITニュース解説

Windowsサーバーの管理を効率化するツールとして「Windows Admin Center(WAC)」があります。これはWebブラウザからサーバーやコンピュータを視覚的に操作できる、非常に便利な管理ツールです。一方、Windows環境の管理を自動化したり、より詳細な設定を行ったりする際には「PowerShell」というコマンドラインツールが不可欠です。PowerShellでは、「コマンドレット」と呼ばれる小さな命令を組み合わせて、複雑なシステム管理タスクを実行します。実は、WACの分かりやすいグラフィカルな操作画面の裏側では、このPowerShellコマンドレットが実行されています。WACが内部でどのようなコマンドレットを使っているかを知ることは、システムの動作原理を深く理解し、より高度な管理技術を習得するための第一歩となります。ここでは、WACの最新バージョンで利用できるPowerShellコマンドレットの中から、特に「Migration」と「PowerShellTools」という2つのモジュールに含まれるものについて、その役割と機能を解説します。

システムを運用する上で、古いサーバーから新しいサーバーへ機能やデータを移し替える「移行(マイグレーション)」は、避けて通れない重要な作業です。この複雑で手間のかかる移行作業を支援するために用意されているのが、「Migration」モジュールに含まれる一連のコマンドレットです。これらは、サーバーの移行プロセスを自動化し、ミスを減らすのに役立ちます。主要なコマンドレットとして、まず「Export-SmsCsv」が挙げられます。このコマンドレットは、移行元となる古いサーバーから、移行に必要な設定情報やインベントリ情報などを抽出し、CSV(カンマ区切りテキスト)ファイルとして出力する機能を持っています。これにより、移行対象の情報を正確にリストアップし、ファイルとして保存できます。次に対応するのが「Import-SmsCsv」です。このコマンドレットは、Export-SmsCsvで作成したCSVファイルを読み込み、その内容に基づいて新しいサーバーに設定を適用したり、情報をインポートしたりします。この2つのコマンドレットを組み合わせることで、手作業による設定ミスを防ぎながら、体系的にサーバーの情報を新しい環境へ移すことが可能になります。また、移行作業では、ネットワーク構成の都合上、移行元と移行先が直接通信できない場合があります。そのような場合に中継役として機能する「プロキシサーバー」を管理するためのコマンドレットも提供されています。「New-SmsProxy」は、新しいプロキシサーバーの情報を登録し、「Get-SmsProxy」は現在登録されているプロキシ設定を確認します。設定内容を変更したい場合は「Set-SmsProxy」を、不要になったプロキシ設定を削除するには「Remove-SmsProxy」を使用します。これらのコマンドレットを使いこなすことで、WACのGUIを使った移行ツールが内部でどのような処理を実行しているのかを理解でき、より柔軟で確実な移行計画の立案や、トラブルシューティングに役立てることができます。

WACの強力な機能の一つに、Webブラウザの画面から直接対象サーバーのPowerShellを操作できるコンソール機能があります。この機能の基盤を支えているのが「PowerShellTools」モジュールです。このモジュールは、WACと管理対象サーバーとの間でPowerShellの通信セッションを確立し、管理するためのコマンドレットを提供します。まず、サーバーに接続してPowerShellコマンドを実行するためには、通信経路である「セッション」を確立する必要があります。この役割を担うのが「New-PowerShellSession」コマンドレットです。これを実行することで、WACとサーバーとの間に安全な通信路が作られ、コマンドの送受信が可能になります。現在どのようなセッションが確立されているかを確認したい場合には、「Get-PowerShellSession」コマンドレットが役立ちます。これにより、アクティブなセッションの一覧や、各セッションの詳細情報を取得できます。複数のサーバーと同時にセッションを確立している場合などに、接続状況を把握するのに便利です。作業が完了し、セッションが不要になった場合は、「Remove-PowerShellSession」コマンドレットを使用してセッションを終了させます。これにより、サーバーリソースを無駄に消費することなく、安全に接続を閉じることができます。また、時には実行したコマンドの処理が想定以上に長引いたり、何らかの理由で応答しなくなったりすることがあります。そのような状況で役立つのが「Stop-PowerShellCommand」です。このコマンドレットを使うと、指定したセッションで実行中のコマンドを強制的に停止させることができます。意図しないプロセスがサーバーに負荷をかけ続けるのを防ぐための、いわば緊急停止スイッチのような機能です。これらのコマンドレットは、WACのPowerShellコンソール機能の裏側で動いており、その仕組みを理解することで、WACを通じたリモート管理がどのように実現されているかを学ぶことができます。

今回は、Windows Admin Center 2410で利用できるPowerShellコマンドレットの中から、サーバー移行を担う「Migration」モジュールと、WAC内のPowerShell実行環境を管理する「PowerShellTools」モジュールについて解説しました。Migrationモジュールのコマンドレットは、古いサーバーから新しいサーバーへのデータや設定の移行作業を体系的かつ自動的に行うための機能を提供します。一方、PowerShellToolsモジュールのコマンドレットは、WACのWebコンソールからサーバーへ接続し、PowerShellを安全かつ確実に実行するためのセッション管理機能を提供します。システムエンジニアを目指す上で、WACのようなグラフィカルなツールの使い方を覚えることはもちろん重要ですが、その背景で動作しているPowerShellの仕組みを理解することは、より深い知識と技術を身につけるために不可欠です。コマンドレットの役割を知ることで、単なるツール利用者から一歩進んで、システムの挙動を理解し、問題解決や作業の自動化を自ら設計できるエンジニアへと成長することができます。GUIの利便性とコマンドラインの強力さを両方理解し、使い分ける能力は、現代のシステム管理において非常に価値の高いスキルと言えるでしょう。