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1000BASE-TX(センベースティーエックス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

1000BASE-TX(センベースティーエックス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

せんベーす ティーエックス (センベーエスティーエックス)

英語表記

1000BASE-TX (センベースティーエックス)

用語解説

1000BASE-TXは、カテゴリ5eまたはカテゴリ6のツイストペアケーブルを使用して1ギガビット/秒(Gbps)の通信速度を実現することを目指したイーサネットの物理層規格の一つである。一般的にギガビットイーサネットと呼ばれる高速通信技術群の一部として位置づけられる。この規格が登場した背景には、既存のケーブルインフラを活かしつつ、より高速なネットワークを構築したいというニーズがあった。しかし、同時期に開発され、より広く普及した「1000BASE-T」という別のギガビットイーサネット規格との技術的な違いから、1000BASE-TXは最終的に市場での主流となることはなく、現在ではほとんど利用されていない幻の規格とも言える存在である。それでも、イーサネット技術の進化の過程における一つの試みとして、その技術的な特徴や普及に至らなかった理由を理解することは、ネットワーク技術の全体像を把握する上で非常に有益である。

ギガビットイーサネットは、100メガビット/秒(Mbps)のFast Ethernetの次世代として登場し、データ転送速度を飛躍的に向上させた。その中でも、ツイストペアケーブルを利用する規格として、主に「1000BASE-T」と「1000BASE-TX」の二つの技術が並行して開発された。これらの規格は、どちらも1Gbpsの通信速度を目標としていたが、その実現アプローチには大きな違いがあった。

まず、ギガビットイーサネットの基本となるツイストペアケーブルについて触れておく。一般的に、LANケーブルとして知られるツイストペアケーブルは、通常4対(計8本)の銅線で構成されている。この4対の線を使ってどのように1Gbpsの通信を実現するかが、各規格の技術的な肝となる。

広く普及した1000BASE-Tは、この4対のケーブルをすべて使用し、各対で250Mbpsのデータを送受信することで合計1Gbpsの通信速度を実現する。さらに、各対は同時に送受信を行う全二重通信に対応しており、PAM-5(Pulse Amplitude Modulation 5-level)と呼ばれる5レベルの信号変調方式を用いることで、効率的なデータ伝送を可能にしている。PAM-5は、一度に5種類の電圧レベルを信号として送ることで、限られた周波数帯域でより多くの情報を伝送する技術である。

一方、1000BASE-TXが採用したのは、Fast Ethernetの100BASE-TXに近いアプローチだった。100BASE-TXが2対のケーブルをそれぞれ送信専用と受信専用に割り当てていたように、1000BASE-TXも4対のケーブルのうち2対を送信に、残りの2対を受信に割り当てることで、全二重通信を実現しようとした。この方式では、各送信対と受信対がそれぞれ500Mbpsのデータを処理する必要がある。この500Mbpsを実現するために、1000BASE-TXはPAM-8(Pulse Amplitude Modulation 8-level)と呼ばれる8レベルの信号変調方式を採用した。PAM-8は、PAM-5よりもさらに多くの情報(8種類の電圧レベル)を一度に伝送できるため、同じ周波数帯域でもより高速な通信が可能となるはずだった。

しかし、PAM-8には技術的な課題があった。信号のレベル数が増えれば増えるほど、信号の判別が難しくなり、ノイズの影響を受けやすくなる。つまり、PAM-8はPAM-5に比べて、より高品質で安定した信号伝送環境、すなわちより高品質なケーブルが必要となる傾向があった。当初の目標はカテゴリ5eケーブルでの1Gbps通信だったが、PAM-8の要求する信号品質を満たすには、実際にはカテゴリ6以上のケーブルが必要となることが多く、既存のカテゴリ5eインフラをそのまま流用することが難しいという問題に直面した。

さらに、信号処理の複雑さも課題となった。PAM-8はPAM-5に比べて送信機・受信機の回路が複雑になり、結果として消費電力が増加する、あるいは製造コストが高くなる可能性があった。

これらの技術的な課題に対し、1000BASE-Tはカテゴリ5eケーブルで安定した1Gbps通信を実現し、かつ全4対を双方向通信に利用することでケーブルの利用効率も高かった。結果として、IEEE(米国電気電子学会)によって標準化された1000BASE-Tがギガビットイーサネットの主流規格として広く採用されることとなり、1000BASE-TXは市場にほとんど普及することなく姿を消した。1000BASE-TXはIEEEの標準規格ではなく、TIA/EIA(米通信工業会/電子工業会)によって標準化が進められたという背景もあり、技術的な優位性を持つ1000BASE-Tの普及を止めることはできなかったのである。

現在、ギガビットイーサネットといえば、ほとんどの場合が1000BASE-Tを指す。1000BASE-TXは、高性能な変調方式を用いて高速化を目指したが、その複雑さやケーブル要件の高さから、より堅牢で普及しやすい技術に道を譲った、イーサネット進化の歴史における一つの興味深い試みとして記憶されている。このような過去の規格を知ることは、現代のネットワーク技術がどのように選択され、発展してきたかを理解する上で貴重な学習材料となるだろう。

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