代替DNSサーバ (ダイタイディーエヌエスサーバー) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
代替DNSサーバ (ダイタイディーエヌエスサーバー) の読み方
日本語表記
セカンダリDNSサーバ (セカンダリディーエヌエスサーバ)
英語表記
Alternative DNS Server (オルタナティブディーエヌエスサーバー)
代替DNSサーバ (ダイタイディーエヌエスサーバー) の意味や用語解説
代替DNSサーバとは、主として機能するプライマリDNSサーバに障害が発生した場合や、負荷が高い場合に、その代わりに応答する役割を持つ予備のDNSサーバである。DNSは、ドメイン名とIPアドレスを対応付けるシステムであり、インターネットの基盤を支える重要な仕組みである。利用者がウェブサイトにアクセスする際、まずDNSサーバに問い合わせて目的のIPアドレスを取得する。このとき、問い合わせ先となるプライマリDNSサーバが一つだけだと、そのサーバが停止した場合に名前解決ができなくなり、関連する全てのサービスが利用不可能になるリスクがある。このような単一障害点をなくし、DNSシステムの可用性と信頼性を高めるために、代替DNSサーバが設置される。プライマリDNSサーバと代替DNSサーバは、常に同じ情報を持つように同期されており、どちらに問い合わせても同じ結果が返されることで、サービスの継続性を保証する。代替DNSサーバは、セカンダリDNSサーバとも呼ばれる。 代替DNSサーバの最も重要な役割は、冗長性の確保である。プライマリDNSサーバがハードウェアの故障、ソフトウェアの不具合、ネットワーク障害、あるいはメンテナンス作業によって応答できなくなった場合でも、代替DNSサーバがその問い合わせを引き継いで応答を返す。これにより、利用者はプライマリDNSサーバの障害を意識することなく、ウェブサイトへのアクセスやメールの送受信などを継続できる。また、負荷分散も重要な役割の一つである。人気のあるウェブサイトなど、特定のドメインに対する名前解決の問い合わせが大量に発生すると、プライマリDNSサーバ一台だけでは処理が追いつかず、応答遅延を引き起こす可能性がある。代替DNSサーバを複数台設置し、問い合わせを分散させることで、一台あたりの負荷を軽減し、システム全体の応答性能を安定させることができる。さらに、地理的な冗長性を確保する目的でも利用される。プライマリDNSサーバと代替DNSサーバを物理的に異なるデータセンターや国に配置することで、一方の地域で地震や停電などの大規模な災害が発生しても、もう一方の地域のサーバが稼働し続けることが可能となり、グローバルなサービスの継続性を高めることができる。 代替DNSサーバがプライマリDNSサーバと同一の情報を保持するための仕組みとして、ゾーン転送がある。DNSサーバは、自身が管理するドメインの情報をゾーンファイルという形式で保持している。ゾーン転送とは、プライマリDNSサーバが持つゾーンファイルの情報を、代替DNSサーバが定期的にコピーするプロセスのことである。この同期のタイミングや動作は、ゾーンファイル内に記述されているSOAレコードによって制御される。SOAレコードには、情報のバージョンを示すシリアル番号が含まれており、プライマリDNSサーバで情報が更新されると、このシリアル番号がインクリメントされる。代替DNSサーバは、SOAレコードに設定されたリフレッシュ間隔でプライマリDNSサーバにシリアル番号を問い合わせる。自身の持つシリアル番号よりプライマリの番号の方が新しい場合、情報が更新されたと判断し、ゾーン転送を要求して最新の情報を取得する。もしプライマリからの応答がない場合は、リトライ間隔で再試行し、それでも応答がない状態がエクスパイア期間を超えると、代替DNSサーバは自身が持つ情報が古くなったと判断し、そのゾーンに対する応答を停止する。ゾーン転送には、全てのデータを転送する完全ゾーン転送(AXFR)と、変更された差分のみを転送する増分ゾーン転送(IXFR)があり、ネットワーク帯域の効率的な利用が図られている。 代替DNSサーバを運用するためには、適切な設定が必要である。まず、プライマリDNSサーバ側で、どの代替DNSサーバに対してゾーン転送を許可するかを指定する。次に、代替DNSサーバ側では、どのプライマリDNSサーバからどのゾーンの情報を取得するかを設定する。そして、そのドメインを管理するレジストラに対して、ネームサーバ(NS)レコードとしてプライマリDNSサーバと代替DNSサーバの両方のホスト名とIPアドレスを登録する。これにより、インターネット上の他のDNSサーバ(リゾルバ)は、そのドメインの情報をどのサーバに問い合わせればよいかを認識できるようになる。クライアントからの名前解決要求を受け付けたリゾルバは、登録されているネームサーバのいずれかに問い合わせを行う。通常、リゾルバは応答が速いサーバを優先的に利用したり、複数のサーバに順番に問い合わせたりする。もしプライマリDNSサーバから応答がなければ、自動的に代替DNSサーバに問い合わせるため、障害時でも名前解決が滞りなく行われる。このように、代替DNSサーバはプライマリDNSサーバと連携し、ゾーン転送によって情報の整合性を保ちながら、DNSシステム全体の耐障害性とパフォーマンスを向上させる、現代のインターネットインフラに不可欠な存在である。