アレイコントローラ(アレイコントローラ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
アレイコントローラ(アレイコントローラ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アレイコントローラ (アレイコントローラ)
英語表記
Array Controller (アレイコントローラー)
用語解説
アレイコントローラは、複数のハードディスクやSSDを組み合わせて、データの冗長性(耐障害性)を高めたり、処理速度を向上させたりするための重要なハードウェアコンポーネントである。これは主にRAID(Redundant Array of Independent Disks)と呼ばれる技術を実現するために用いられ、サーバーやストレージシステムにおいてデータの保護と性能の最適化に不可欠な役割を担う。単にディスクを接続するだけでなく、それらのディスクをまるで一つの大きなディスクであるかのように、あるいはデータのバックアップを自動的に保持するディスクシステムであるかのように管理する専門の装置と言える。
アレイコントローラが果たす役割を理解するためには、まずRAIDという技術の基本を抑える必要がある。RAIDとは、複数の物理的なディスクドライブを一つにまとめ、仮想的な一つの論理ドライブとして扱えるようにする技術の総称である。この技術を用いることで、例えばデータの一部が失われた場合でも他のディスクから復旧できるようにしたり、複数のディスクに同時にデータを書き込むことで読み書きの速度を上げたりすることが可能になる。アレイコントローラは、このRAIDの構築と管理を専門的に行うためのハードウェア、またはマザーボードに内蔵された機能のことである。
アレイコントローラは、物理ディスクへのデータの書き込みや読み出しを制御する中心的な存在だ。例えば、RAID 0ではデータを複数のディスクに分散して書き込むことで高速化を図るが、このデータ分割の処理をアレイコントローラが行う。RAID 1では同じデータを複数のディスクに同時に書き込む(ミラーリングする)ことで耐障害性を高めるが、この二重書き込みの処理もアレイコントローラが実行する。さらにRAID 5やRAID 6のようにパリティ情報(データが破損した際に元のデータを復元するための計算情報)を分散して書き込む複雑な処理も、アレイコントローラに搭載された専用のプロセッサが担う。これにより、メインCPUはRAIDに関する複雑な計算処理から解放され、本来のアプリケーション処理に専念できるため、システム全体のパフォーマンスが向上する。
アレイコントローラの主要な機能は多岐にわたる。まず、RAIDレベルの選択と設定が可能である。RAID 0, 1, 5, 6, 10など、用途に応じて最適なRAIDレベルを選択し、その構成を管理するインターフェースを提供する。次に、障害発生時のデータ保護と復旧機能が挙げられる。アレイコントローラは接続されたディスクの状態を常に監視しており、ディスクに障害が発生した際にはそれを検知し、管理者への通知を行う。そして、RAIDの冗長性(RAID 1, 5, 6, 10など)が保たれている場合、残りの正常なディスクから失われたデータを自動的に再構築する「リビルド」と呼ばれる処理を実行する。この際、あらかじめ「ホットスペア」として設定された予備のディスクがあれば、障害ディスクが検出された直後に自動的にホットスペアディスクに切り替わり、リビルドを開始することで、システムダウンのリスクを最小限に抑えつつデータ復旧を始めることができる。
さらに、アレイコントローラは多くの場合、キャッシュメモリを搭載している。これは、ディスクへの読み書き要求を一時的にこの高速なメモリに保持することで、実際のディスクアクセスよりもはるかに高速に処理を完了させ、システム全体の応答速度を向上させる機能である。特に書き込みキャッシュは、データが実際にディスクに書き込まれる前にアプリケーション側に書き込み完了を応答できるため、書き込み性能の向上に大きく貢献する。このキャッシュメモリには、停電時にもデータが失われないようにバッテリーバックアップユニット(BBU)やフラッシュメモリが搭載されていることが一般的であり、データの安全性を高める工夫が凝らされている。
アレイコントローラは、その形態によっていくつかの種類がある。最も一般的なのは、PCI Expressなどの拡張スロットに差し込む「拡張カード型」である。これは高性能なRAID機能と多数のディスク接続ポートを提供し、主にサーバーやワークステーションで使用される。また、マザーボードにRAID機能が直接組み込まれている「オンボード型」も存在する。これは主にPCやエントリーレベルのサーバーで見られ、基本的なRAID機能を手軽に利用できる利点があるが、拡張カード型に比べて性能や機能が限定されることが多い。さらに、外部ストレージエンクロージャ内に搭載され、ホスト側のサーバーとはSASやiSCSIなどのインターフェースで接続されるタイプもある。
システムエンジニアを目指す上で、アレイコントローラの理解はデータセンターやエンタープライズシステムを扱う上で必須となる知識である。データの信頼性と可用性を確保し、同時に高性能なストレージ環境を構築するためには、適切なアレイコントローラを選定し、適切に設定・運用することが極めて重要となる。例えば、データ保護の観点からRAIDレベルを選定するだけでなく、将来的なストレージ容量の拡張性や、もしもの障害発生時にどれくらいの時間でデータを復旧できるか(リビルド速度)といった要素も考慮に入れる必要がある。アレイコントローラは、現代のITインフラストラクチャを支える見えないが非常に重要な縁の下の力持ちと言えるだろう。