セントロニクス仕様 (セントロニクスシヨウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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セントロニクス仕様 (セントロニクスシヨウ) の読み方

日本語表記

セントロニクス仕様 (セントロニクスシヨウ)

英語表記

Centronics interface (セントロニクスインターフェース)

セントロニクス仕様 (セントロニクスシヨウ) の意味や用語解説

セントロニクス仕様とは、パーソナルコンピュータ(PC)とプリンターを接続するために広く普及したパラレルインターフェース規格の一つである。この名称は、1970年代にこの規格を開発し、自社のプリンターに採用したCentronics Data Computer Corporationに由来する。当時、PCからプリンターへデータを効率的に転送する主要な手段として、コンピュータ業界において重要な役割を果たした。その最大の特徴は、複数のデータビットを同時に並行して転送するパラレル通信方式を採用している点にある。これにより、シリアル通信と比較して一度に多くのデータを送ることができ、高速なデータ転送を可能にした。しかし、その後の技術革新により、USBなどのより汎用的で高速なインターフェースが登場したため、現在ではほとんど利用されていないレガシーインターフェースとなっている。 セントロニクス仕様のインターフェースは、初期のPC環境において、テキストやグラフィックデータをプリンターへ出力するための主要な接続方式であった。この規格では、一般的にプリンター側には36ピンのアンフェノールコネクタが、PC側には後に25ピンのD-Subコネクタ(DB-25)が標準的に用いられた。このPC側の25ピンコネクタは、プリンターポートまたはLPT(Line Printer Terminal)ポートとも呼ばれた。 技術的な詳細を見ると、セントロニクス仕様は、8ビットのデータを同時に転送するための8本のデータ線、データ転送を制御するための数本の制御線、そしてプリンターの状態をPCに伝えるための数本のステータス線で構成される。データ転送の際には、ハンドシェイクと呼ばれる手順が用いられた。これは、PCがデータを送り出す準備ができたことをプリンターに通知し、プリンターがデータを受け取る準備ができたことをPCに知らせることで、データの整合性を保ちながら転送を行う仕組みである。具体的には、PCが「Strobe」信号を送ってデータを有効にし、プリンターが「Ack」信号を返してデータを受け取ったことをPCに知らせる、といった一連のやり取りが行われる。このハンドシェイクによって、異なる転送速度を持つ機器間でも確実にデータをやり取りすることが可能であった。初期のセントロニクス仕様の転送速度は、おおよそ数十KB/sから数百KB/s程度であり、当時のプリンターやデータの種類を考慮すると十分な速度であった。 しかし、PC周辺機器の多様化とともに、プリンターからPCへの情報伝達の必要性や、スキャナーや外部ストレージなどの双方向通信を必要とする機器の登場により、従来のセントロニクス仕様(Standard Parallel Port: SPP)の限界が露呈した。SPPは主にPCからプリンターへの一方向のデータ転送に特化しており、双方向通信能力が限定的であったためである。 この課題を解決するために、1990年代初頭にIEEE 1284規格として、パラレルポートの拡張仕様が策定された。これがEPP (Enhanced Parallel Port) とECP (Extended Capabilities Port) である。EPPは、主に高速な双方向データ転送を実現するために設計された。制御信号の数を減らし、より効率的なハンドシェイクプロトコルを採用することで、約1MB/sから2MB/s程度の速度でのデータ転送を可能にした。これは、双方向通信が可能なテープドライブや外付けハードディスクなどの接続にも利用された。一方、ECPは、プリンターとの高速通信に特化して設計された。EPPよりもさらに高速なデータ転送(数MB/s)を実現し、DMA(Direct Memory Access)転送に対応することで、CPUに負担をかけることなくデータの送受信を可能にした。また、データ圧縮機能もサポートし、大容量の印刷データを効率的に転送することに適していた。これにより、カラープリンターや複合機など、より多くのデータを扱う機器への対応が可能となった。 しかし、これらのパラレルインターフェースの進化も、USB (Universal Serial Bus) の登場により、その優位性を失っていく。USBは、よりシンプルなケーブルとコネクタ、高速な転送速度、ホットプラグ対応、そしてPCへの接続の容易さ(特にプラグアンドプレイ機能)といった多くの利点を提供した。また、シリアル通信方式を採用しながらも、複数のデバイスをデイジーチェーン接続できるハブを介した接続性や、電源供給能力も持ち合わせていたため、瞬く間にPC周辺機器の標準インターフェースとなった。結果として、セントロニクス仕様およびその派生規格は、PCの進化とともにレガシーインターフェースとしての位置づけとなり、現在のPCにはほとんど搭載されていない。一部の古い産業用機器や組み込みシステムではその名残を見ることができる場合もあるが、一般的な用途ではUSBやEthernetなどの新しいインターフェースに完全に置き換わっている。

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