圧縮ソフト(アッシュクセイソフト)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
圧縮ソフト(アッシュクセイソフト)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
圧縮ソフト (アッシュクセイソフト)
英語表記
compression software (コンプレッションソフトウェア)
用語解説
圧縮ソフトとは、コンピュータ上で扱われるファイルやフォルダのデータサイズを小さく(圧縮)したり、小さくしたデータを元のサイズに戻したり(解凍)するためのソフトウェアを指す。この技術は、データが占める記憶容量を削減し、ファイルをインターネット経由で送信する際の転送時間を短縮することを主な目的とする。また、多数の関連するファイルを一つにまとめて管理しやすくする「アーカイブ」機能も兼ね備えている場合が多い。システムエンジニアを目指す上で、プログラムの配布、ログファイルの管理、バックアップデータの保存といった様々な場面で圧縮・解凍の操作に触れる機会があるため、その基本的な概念と利用方法を理解しておくことは非常に重要である。圧縮ソフトを用いることで、限られたリソースを効率的に活用し、データの取り扱いを最適化することが可能となる。
圧縮の詳細な仕組みは、データの冗長性、つまり無駄な繰り返しや予測可能なパターンを特定し、より効率的な符号に置き換えることに基づいている。例えば、「AAAAA」という連続する文字データがあった場合、これを「Aが5回繰り返す」という短い情報に変換することで、データ量を削減できる。実際の圧縮アルゴリズムはこれよりも遥かに複雑で、統計的な分析や辞書ベースの手法、変換符号化など、様々な技術が組み合わされて高い圧縮率を実現している。
圧縮方式には大きく二つの種類がある。「可逆圧縮(Lossless compression)」と「非可逆圧縮(Lossy compression)」である。可逆圧縮は、圧縮されたデータを完全に元の状態に復元できる方式で、一切のデータ損失がないことが特徴である。テキストファイル、プログラムの実行ファイル、データベースファイル、設計図などの文書ファイル、PNGやGIFといった特定の画像形式、一部の音声・動画フォーマット(FLAC、非圧縮AVIなど)に適用される。これらのデータは、わずかな情報でも欠落すると機能しなくなったり、内容が変化したりするため、完全な復元が必須となる。一般的な圧縮ソフトが提供する機能は、主にこの可逆圧縮を利用している。一方、非可逆圧縮は、データの一部を意図的に削除することで、非常に高い圧縮率を実現する方式である。人間の視覚や聴覚が認識しにくいとされる情報を間引くことで大幅なファイルサイズ削減を可能にするが、一度圧縮すると元のデータには完全に復元できない。主にJPEG画像、MP3音声、MPEGやMP4といった動画ファイルに用いられる。これらのメディアファイルでは、ある程度の品質劣化が許容されるため、データ量の削減が優先される場合に有効である。
主要な圧縮形式(ファイルフォーマット)も複数存在する。世界的に最も普及しているのは「ZIP」形式であり、WindowsやmacOSといった多くのOSが標準でこの形式のファイルを扱えるため、特別なソフトウェアがなくても圧縮・解凍が可能である場合が多い。日本国内ではかつて「LZH」形式も広く利用されていたが、現在はZIP形式が主流となっている。「RAR」は、高い圧縮率と堅牢なアーカイブ構造が特徴であり、特に大容量のファイルを扱う際に選択されることがあるが、この形式で圧縮するには専用のソフトウェアが必要となることが多い。「7z(7-Zip)」は、オープンソースの圧縮ソフトウェア「7-Zip」が採用している形式で、RARに匹敵するか、それ以上の高い圧縮率を提供することで知られている。また、UNIXやLinux環境では、「tar.gz」や「tar.bz2」といった形式が頻繁に用いられる。これらは、複数のファイルを一つのアーカイブにまとめる「tar」コマンドと、それをさらに圧縮する「gzip」や「bzip2」コマンドを組み合わせたもので、特にソースコードの配布やシステムバックアップで利用される。
圧縮ソフトは、単にファイルを小さくするだけでなく、様々な付加機能を提供することで利便性を高めている。例えば、圧縮ファイルにパスワードを設定することで、不正なアクセスから機密性の高いデータを保護するセキュリティ機能がある。これは、重要な情報をメールで送る際や、共有ドライブに保管する際に特に有用である。また、非常に大きなファイルを複数の小さな圧縮ファイルに分割して作成する「分割圧縮」機能は、CD-RやUSBメモリなど、特定の記憶媒体の容量に収まるようにファイルを分割したい場合に利用される。さらに、「自己解凍形式(SFX: Self-eXtracting Archive)」の作成機能も提供されることがある。これは、圧縮されたデータと、それを解凍するためのプログラムを一体化した実行ファイルを作成する機能で、相手のコンピュータに圧縮ソフトがインストールされていない場合でも、このファイルを実行するだけでデータを解凍できるため、広範囲のユーザーにファイルを配布する際に便利である。
圧縮ソフトを利用する際には、いくつかの注意点がある。まず、圧縮形式の互換性を考慮する必要がある。ファイルを他者に送る際は、相手の環境で確実に解凍できる、例えばZIPのような汎用性の高い形式を選ぶべきである。次に、セキュリティに関する注意点として、インターネットからダウンロードした不明な圧縮ファイルは、ウイルスやマルウェアが仕込まれている可能性があるため、安易に解凍せず、必ずセキュリティ対策ソフトウェアでスキャンするなど、十分な警戒が必要である。また、パスワード保護機能を利用する場合、設定したパスワード自体を安全に管理することが極めて重要となる。最後に、既に高い圧縮率でエンコードされているファイル、例えばJPEG画像、MP3音楽ファイル、MP4動画ファイルなどを、さらに汎用の圧縮ソフトで圧縮しても、データサイズの削減効果はほとんど期待できないどころか、場合によってはわずかにファイルサイズが増加することもある点を理解しておくべきである。これらの知識は、システムエンジニアとして効率的かつ安全にデータを取り扱う上で不可欠な要素となる。