宛先アドレス(アテサキアドレス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

宛先アドレス(アテサキアドレス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

宛先アドレス (アテサキアドレス)

英語表記

destination address (デスティネーションアドレス)

用語解説

宛先アドレスは、ネットワークを介してデータを送信する際に、そのデータが最終的にどこに到達すべきかを示す情報である。郵便における住所のようなものであり、この情報がなければデータは目的地に届かず、通信は成立しない。あらゆる種類のネットワーク通信において、送信元が受信元を正確に特定するために不可欠な要素である。コンピュータやスマートフォン、サーバーといった機器同士がインターネットやローカルネットワーク上で相互に通信を行うためには、相手を識別するためのユニークな情報が必要となる。この識別情報こそが宛先アドレスであり、データが正しく、そして効率的に意図した受信者へ届けられるための基盤となる。

詳細に入る。宛先アドレスには、通信の目的や利用されるネットワークの階層に応じていくつかの種類が存在する。

最も代表的なものは、インターネットプロトコルアドレス、通称IPアドレスである。IPアドレスは、インターネットやその他のIPネットワークに接続された機器それぞれに割り当てられる識別番号で、主にネットワーク層で機能する。これにより、世界中の膨大な数の機器の中から特定の機器を識別し、データパケットをその機器まで届けることが可能になる。現在広く使われているIPアドレスには、32ビットの数字で構成されるIPv4と、128ビットの数字で構成されるIPv6がある。IPv4は「192.168.1.1」のようにピリオドで区切られた4つの数値の並びで表現され、約43億個のアドレスを識別できる。しかし、インターネットの普及によりこの数が不足してきたため、より多くのアドレスを識別できるIPv6が登場した。IPv6は「2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334」のようにコロンで区切られた8つの16進数の並びで表現され、事実上無限大のアドレスを識別できる。さらにIPアドレスは、インターネット上で一意に識別される「グローバルIPアドレス」と、企業や家庭内などの限られたローカルネットワーク内で使用される「プライベートIPアドレス」に大別される。ルーターなどの機器がグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの変換を行うことで、限られたグローバルIPアドレスを複数のプライベートネットワーク機器で共有し、インターネットに接続することを可能にしている。

次に、メディアアクセス制御アドレス、通称MACアドレスがある。これは、ネットワークインターフェースカード(NIC)など、ネットワークに接続するためのハードウェアに工場出荷時に書き込まれた、世界中で一意の物理的な識別子である。MACアドレスは48ビットの16進数で表現され、「00:1A:2B:3C:4D:5E」のようにコロンやハイフンで区切られることが多い。主にデータリンク層で機能し、同じネットワークセグメント内(例えば、同じルーターに接続された機器間)での通信において、IPアドレスに対応する具体的な機器を特定するために使われる。IPアドレスが「目的地までの住所」とすれば、MACアドレスは「その住所にある建物の部屋番号」のような役割を果たす。ARP(Address Resolution Protocol)というプロトコルが、IPアドレスからMACアドレスを解決するために利用される。

さらに、ポート番号も宛先アドレスの一種として重要である。IPアドレスは通信相手の機器を特定するが、その機器上で動作している多数のアプリケーションやサービスの中から、具体的にどのアプリケーションにデータを届けたいかを指定するのがポート番号である。例えば、ウェブサイト閲覧には通常80番(HTTP)や443番(HTTPS)、電子メールの送受信には25番(SMTP)や110番(POP3)、143番(IMAP)などのポート番号が使われる。TCPやUDPといったトランスポート層のプロトコルで利用され、IPアドレスとセットで「IPアドレス:ポート番号」のように表記されることが多い。これにより、例えば一台のサーバーがウェブサーバーとしてもメールサーバーとしても機能し、それぞれ異なるサービスを提供できる。

電子メールシステムでは、特定のユーザー宛にメールを送るための「メールアドレス」が宛先アドレスとなる。これは「ユーザー名@ドメイン名」という形式で構成され、例えば「user@example.com」のような形をしている。ドメイン名部分はDNS(Domain Name System)によってIPアドレスに変換され、最終的にメールが送られるサーバーが特定される。ユーザー名はそのサーバー上で特定のメールボックスを識別する。

ウェブブラウジングにおいては、URL(Uniform Resource Locator)も広義の宛先アドレスとして機能する。これは、ウェブ上のリソース(ウェブページ、画像、動画など)の場所を示すもので、「https://www.example.com/path/to/resource.html」のような形式を取る。URLはプロトコル(https)、サーバーのドメイン名(www.example.com)、そしてサーバー内のリソースのパス(/path/to/resource.html)で構成される。ドメイン名はDNSによってIPアドレスに変換され、ウェブブラウザはそのIPアドレスのサーバーに対してHTTPやHTTPSプロトコルを用いてリソースを要求する。

これらの宛先アドレスは、それぞれ異なる階層や目的で利用されるが、相互に連携し合って機能する。例えば、ウェブブラウザがURLを解釈すると、まずDNSがドメイン名をIPアドレスに変換する。次に、そのIPアドレスを持つサーバーに対して、特定のポート番号(HTTPSであれば443番)を指定して通信を試みる。そして、同じネットワークセグメント内では、IPアドレスに対応するMACアドレスがARPによって解決され、物理的なデータ転送が行われる。

宛先アドレスが持つ重要性は非常に高い。まず、データが確実に意図した受信者へ届くための基盤となる。アドレスが不正確であれば、データは迷子になるか、誤った相手に届いてしまう可能性がある。また、ネットワークのセキュリティにおいても不可欠な要素である。ファイアウォールなどのセキュリティ機器は、宛先IPアドレスやポート番号に基づいて通信を許可したり拒否したりすることで、不正なアクセスを防ぐ役割を果たす。さらに、ネットワークに問題が発生した際には、宛先アドレスを調べることで、どこで通信が途絶えているのか、あるいは誤った経路を辿っているのかといったトラブルシューティングの手がかりとなる。システムエンジニアを目指す上で、これらの宛先アドレスの仕組みと役割を理解することは、ネットワークの設計、構築、運用、そしてトラブル解決において非常に重要である。

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