第4層 (ダイヨンソウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
第4層 (ダイヨンソウ) の読み方
日本語表記
トランスポート層 (トランスポートソウ)
英語表記
Layer 4 (レイヤーフォー)
第4層 (ダイヨンソウ) の意味や用語解説
第4層は、OSI参照モデルにおけるトランスポート層に該当する階層である。OSI参照モデルとは、コンピュータネットワークにおける通信機能を7つの階層に分割して定義した国際標準モデルであり、通信プロトコルの設計や理解を助けるための指針となる。第4層は、このモデルの中で上位層と下位層を繋ぐ中心的な役割を担っており、通信を行う両端のコンピュータ、すなわちエンドツーエンドでのデータ転送の信頼性を確保する責任を持つ。具体的には、第3層であるネットワーク層が提供するホスト間のデータ転送サービスを利用して、個々のアプリケーションプロセス間の通信を実現する。ネットワーク層が「どのコンピュータにデータを届けるか」を決定するのに対し、トランスポート層は「そのコンピュータの、どのアプリケーションにデータを届けるか」を決定し、その通信品質を管理する。 第4層の最も重要な機能の一つに、アプリケーションの識別がある。一台のコンピュータ上では、Webブラウザ、メールソフト、ファイル転送プログラムなど、複数のアプリケーションが同時にネットワーク通信を行うことが一般的である。ネットワーク層から送られてきたデータが、これら複数のアプリケーションのうち、どれを宛先としているのかを正確に振り分ける必要がある。この識別に用いられるのが「ポート番号」と呼ばれる識別子である。IPアドレスがコンピュータの住所だとすれば、ポート番号はその住所にある建物の部屋番号に相当する。第4層は、送信するデータに送信元と宛先のポート番号を付与し、受信側ではこのポート番号を見て、データを適切なアプリケーションに届ける。この仕組みにより、複数のアプリケーションが同時に通信を行っても、データが混線することなく、正確なプロセス間通信が実現される。 また、第4層は通信の信頼性を確保するための様々な制御機能を提供する。上位のアプリケーション層から渡された大きなデータを、ネットワークで転送しやすい小さな単位、すなわち「セグメント」に分割する。受信側では、受信したセグメントを元の順序に並べ替えてデータを再構築する。このデータ分割と再構築により、効率的で安定したデータ転送が可能となる。さらに、データ転送の過程で発生しうるエラーを検出し、対処するエラー制御機能も持つ。データが正しく相手に届いたかを確認し、もしデータが破損したり消失したりした場合には、再送を要求する仕組みが備わっている。加えて、受信側の処理能力を超えてデータが送られてこないように、データ転送量を調整するフロー制御も行う。これにより、受信側のバッファ溢れによるデータ損失を防ぎ、安定した通信を維持する。 第4層で利用される代表的なプロトコルとして、TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)の二つが存在する。これらは異なる特性を持ち、アプリケーションの要求に応じて使い分けられる。 TCPは、信頼性を最重視したプロトコルである。通信を開始する前に、送信元と宛先の間で「3ウェイハンドシェイク」と呼ばれる手順を用いて仮想的な通信路(コネクション)を確立する。このコネクションが確立されてからデータの送受信が開始されるため、コネクション指向のプロトコルと呼ばれる。TCPは、送信する各セグメントにシーケンス番号を付与し、受信側でこの番号を基にデータの順序を正しく再構築する。また、受信側はデータを受け取ると送信側に確認応答(ACK)を返す。一定時間内にACKが返ってこない場合、送信側はデータが消失したと判断し、同じデータを再送する。この再送制御と確認応答の仕組みにより、データが確実に相手に届くことが保証される。これらの高度な制御機能を持つため、データの完全性や順序が重要となるWebブラウジング(HTTP/HTTPS)、メール送受信(SMTP/POP3)、ファイル転送(FTP)といったアプリケーションで広く利用されている。 一方、UDPは、通信の速度とリアルタイム性を重視したプロトコルである。TCPのような事前のコネクション確立は行わず、データを一方的に送信するコネクションレス型の通信方式を採用する。UDPには、シーケンス番号による順序保証、確認応答、再送制御、フロー制御といった信頼性を確保するための機能が備わっていない。そのため、データが途中で消失したり、送信した順序とは異なる順番で宛先に到着したりする可能性がある。しかし、これらの制御機能がない分、プロトコルのヘッダ情報がシンプルで、通信におけるオーバーヘッドが非常に小さいという利点がある。結果として、高速なデータ転送が可能となる。多少のデータ欠損は許容できる一方で、遅延が致命的となるようなアプリケーション、例えば、動画ストリーミング、オンラインゲーム、DNS(名前解決)、VoIP(IP電話)などで主に使用される。 このように、第4層であるトランスポート層は、ポート番号を用いてアプリケーションを識別し、アプリケーションが要求する通信品質に応じてTCPやUDPといったプロトコルを使い分けることで、多様なネットワークサービスを支える基盤となっている。システムエンジニアにとって、この層の役割と二つの代表的なプロトコルの特性を深く理解することは、ネットワークの設計、構築、そしてトラブルシューティングを行う上で不可欠な知識である。