IEEE 802.3z(アイ・トリプル・イー・ハチマルニ・テン・ゼット)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
IEEE 802.3z(アイ・トリプル・イー・ハチマルニ・テン・ゼット)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
IEEE 802.3z (アイ・イー・イー・イー・ハチマルニ・テン・サン・ゼット)
英語表記
IEEE 802.3z (アイ・トリプル・イー・ハチマルニ・イー・ゼット)
用語解説
IEEE 802.3zは、通信速度1Gbps(ギガビット毎秒)を実現するイーサネット規格群の一つであり、一般に「ギガビットイーサネット」と呼ばれる技術の初期の標準である。この規格は1998年にIEEE(米国電気電子学会)によって標準化され、それまでの主流であった100Mbpsのファストイーサネットに比べて10倍の高速化を達成した。IEEE 802.3zの最も重要な特徴は、主に光ファイバーケーブルを伝送媒体として利用し、高速かつ長距離のデータ通信を可能にした点にある。これにより、企業の基幹ネットワーク(バックボーン)やデータセンター、ビル間接続など、大量のデータを安定して遠くまで伝送する必要がある環境で広く採用されることとなった。従来のイーサネット規格のフレームフォーマットや基本的な動作原理を継承しつつ、物理的な伝送部分を高速化に対応させたことで、既存のネットワーク技術からのスムーズな移行を促し、今日の高速なLAN環境の礎を築いた重要な規格である。
IEEE 802.3z規格の詳細を理解するためには、その物理層の仕様に注目する必要がある。この規格は、使用するケーブルの種類や通信距離に応じて、複数の物理層仕様を定義している。その中でも中心的な役割を担ったのが、光ファイバーを利用する1000BASE-SXと1000BASE-LXである。1000BASE-SXの「SX」はShort Wavelength(短波長)を意味し、波長850nm(ナノメートル)の短波長レーザー光を使用する。伝送媒体には、コア径が比較的大きいマルチモードファイバー(MMF)が用いられる。マルチモードファイバーはシングルモードファイバーに比べて安価である一方、光の分散が大きいため長距離伝送には向いていない。そのため、1000BASE-SXの通信距離は、使用するファイバーの品質にもよるが、一般的に数百メートル程度に制限される。この特性から、主にビルディング内のフロア間を結ぶ垂直配線や、同一施設内の比較的短距離なバックボーン接続に利用された。一方、1000BASE-LXの「LX」はLong Wavelength(長波長)を意味し、波長1310nmの長波長レーザー光を使用する。この仕様は、マルチモードファイバーと、コア径が非常に細いシングルモードファイバー(SMF)の両方に対応している。シングルモードファイバーは光の分散が極めて少なく、長距離伝送に適しているため、1000BASE-LXをシングルモードファイバーで利用した場合、5kmから10kmといった長距離通信が可能となる。この能力により、離れたビル間を結ぶキャンパスネットワークの基幹部分などで広く活用された。また、IEEE 802.3zには1000BASE-CXという銅線を利用する規格も含まれていた。これは専用のシールド付きツイストペアケーブル(STP)や同軸ケーブルを使用し、サーバーラック内など25m以下の極めて短い距離での接続を想定していたが、後に登場するIEEE 802.3ab(1000BASE-T)規格が、より汎用的な非シールドツイストペアケーブル(UTP)で最大100mの通信を可能にしたため、1000BASE-CXは限定的な利用にとどまった。IEEE 802.3zが主に光ファイバーによる中長距離のバックボーン向けであるのに対し、IEEE 802.3abは一般的なLANケーブルによるデスクトップPCやサーバーへの接続向け、という役割分担が確立されることになった。OSI参照モデルで見ると、IEEE 802.3zは主に物理層(レイヤ1)の仕様を定めたものであるが、データリンク層(レイヤ2)のMAC副層にも高速化に伴う変更が加えられている。ギガビットの高速通信では、従来の半二重通信で用いられたCSMA/CD方式の衝突検出メカニズムが非効率となるため、送受信を同時に行う全二重通信が標準的な動作モードとなった。これにより、安定した1Gbpsのスループットが保証される。このように、IEEE 802.3zは光ファイバー技術をイーサネットに本格的に導入することで、ネットワークの適用範囲を大幅に拡大させた画期的な規格であると言える。