IntServ(インツセブ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IntServ(インツセブ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

インテサービス (インテサービス)

英語表記

IntServ (インツサヴ)

用語解説

IntServは、Integrated Servicesの略称であり、インターネットなどのIPネットワーク上で通信品質を保証するためのアーキテクチャの一つである。日本語では「統合サービス」と訳される。従来のインターネット通信は、すべての通信を平等に扱うベストエフォート型が基本であり、ネットワークが混雑するとパケットの遅延や損失が発生し、品質が保証されなかった。これに対しIntServは、IP電話やビデオ会議といったリアルタイム性が求められるアプリケーションのために、特定の通信に対して帯域幅や遅延といったリソースを事前に確保し、安定した通信品質を提供する仕組みを定義している。その最大の特徴は、通信を開始する前に、アプリケーションがネットワークに対して必要なリソース量を明示的に要求し、予約する点にある。この予約プロセスを通じて、通信経路上のネットワーク機器(ルーターなど)は、その通信のために必要な帯域を確保する。これにより、予約が成功した通信は、他の通信の影響を受けにくくなり、エンドツーエンドでの品質が保証される。

IntServのQoS(Quality of Service)制御は、個々の通信フロー単位で実行される。フローとは、送信元と宛先のIPアドレス、ポート番号、プロトコル番号の組み合わせによって識別される一連のパケットの流れを指す。このフローごとに品質を管理するため、アプリケーション単位でのきめ細やかな品質設定が可能となる。このリソース予約を実現するために、IntServではRSVP(Resource Reservation Protocol)というシグナリングプロトコルが用いられる。RSVPは、通信を行うホストと経路上のルーターとの間で、リソース予約に関する情報をやり取りするための規約である。

RSVPの動作は、送信者と受信者の間のメッセージ交換によって行われる。まず、データを送信したい送信者が、通信経路やこれから送信するデータの特性を記述したPATHメッセージを宛先の受信者に向けて送信する。このPATHメッセージは、経由する各ルーターに、これからリソース予約要求が通る可能性があることを通知し、経路情報を記録させる役割を持つ。PATHメッセージを受け取った受信者は、自身が必要とする通信品質(例えば、帯域幅や遅延の許容範囲)を定義し、RESV(Reservation)メッセージを送信者に向けて送り返す。このRESVメッセージは、PATHメッセージが通ってきた経路を逆方向にたどる。経路上の中間ルーターはRESVメッセージを受け取ると、その要求内容を確認し、自身の持つリソース(帯域など)から要求分を確保できるか判断する。確保可能であれば、そのフローのためのリソースを予約し、予約情報を保持(ステートを維持)した上で、さらに上流(送信者側)のルーターへRESVメッセージを転送する。もし、どこかのルーターでリソースが不足していて予約ができない場合は、予約失敗を示すエラーメッセージが受信者に返される。経路上のすべてのルーターで予約が成功すると、送信者までRESVメッセージが到達し、リソース予約が完了する。これ以降、このフローに属するパケットは、予約されたリソースを使って優先的に転送され、品質が保証されることになる。

IntServは、提供するサービスの品質レベルに応じて、いくつかのサービスモデルを定義している。代表的なものに「Guaranteed Service」と「Controlled-Load Service」がある。Guaranteed Service(保証型サービス)は、その名の通り、絶対的な帯域幅を確保し、遅延時間が最大値を決して超えないことを厳密に保証する、最も高品質なサービスモデルである。遅延やパケット損失が致命的な影響を及ぼす遠隔医療やミッションクリティカルな産業制御システムなどに適している。一方、Controlled-Load Service(負荷制御型サービス)は、ネットワークが混雑していない、負荷が軽い状態と同等の通信品質を提供することを目標とするサービスモデルである。Guaranteed Serviceほど厳密な保証はないが、ベストエフォート型通信よりは遥かに高品質で安定している。IP電話やビデオストリーミングなど、ある程度の品質が求められるが、多少の揺らぎは許容できるアプリケーションに利用される。

しかし、IntServには重大な課題が存在する。それはスケーラビリティの問題である。IntServは、すべての通信フローの予約情報を、経路上の中間ルーターが個別に保持・管理(ステートフル管理)する必要がある。企業内の小規模なネットワークであれば問題にならないが、インターネットのような不特定多数のユーザーが膨大な数のフローを生成する大規模ネットワークでは、ルーターが管理すべきステート情報が爆発的に増加してしまう。これにより、ルーターのメモリやCPUに過大な負荷がかかり、性能が著しく低下するため、現実的な運用が困難となる。このスケーラビリティの欠点から、IntServはインターネット全体で広く普及するには至らなかった。現在では、この問題を解決するために考案された、個々のフローではなくパケットの優先度クラスごとに制御を行うステートレスなアプローチであるDiffServ(Differentiated Services)が、QoS技術の主流となっている。それでも、IntServはエンドツーエンドでのQoS保証という理想的なモデルを提示したアーキテクチャとして、ネットワーク技術を学ぶ上で非常に重要な概念である。