Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

IrDA(アイアールディーエー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IrDA(アイアールディーエー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

赤外線通信 (セキガイセンツウシン)

英語表記

IrDA (アイアールディーエー)

用語解説

IrDAはInfrared Data Associationの略称であり、「アイアールディーエー」と読む。これは、赤外線を利用して近距離のデータ通信を行うための国際的な標準規格である。1990年代から2000年代にかけて、ノートパソコンや携帯電話、PDA、プリンターなどの機器間で、ケーブルを使わずにデータを交換する手段として広く普及した。主な用途としては、携帯電話同士での電話帳データ(アドレス帳)の交換や写真の送受信、パソコンからプリンターへの印刷データの送信などが挙げられる。通信を行うには、送受信したい機器同士の赤外線ポートを互いに向き合わせる必要があり、通信距離も1メートル程度と短いのが特徴である。現在では、より利便性の高いBluetoothやWi-Fiといった無線通信技術にその役割を譲り、一般のコンシューマー向け製品で見かけることはほとんどなくなったが、無線通信技術の発展における過渡期を支えた重要な規格の一つである。

IrDA規格は、1993年に設立された同名の業界団体によって標準化が進められた。この規格は単に物理的な赤外線の送受信方法を定めているだけでなく、通信を確立し、データを確実にやり取りするための一連の通信手順を階層的に定義したプロトコルスタックも含まれている。このプロトコルスタックは、物理層、データリンク層、ネットワーク層、トランスポート層、セッション層に相当する複数のプロトコルから構成される。主要なものとして、物理的な信号のやり取りを規定するIrPHY、データリンク層でエラー訂正やフロー制御を行うIrLAP、複数の通信セッションを管理するIrLMPなどがある。さらにその上位には、従来のシリアルポート通信をエミュレートするIrCOMMや、ファイルやオブジェクトを交換するためのプロトコルであるIrOBEXなどが存在する。このIrOBEXは、後にBluetoothでも採用されるなど、他の技術にも影響を与えた。

IrDAの通信速度は、規格のバージョンアップに伴い向上してきた。最も初期の規格はSIR(Serial Infrared)と呼ばれ、最高通信速度は115.2kbpsであった。これは当時のシリアルポートの最高速度に合わせたものである。その後、より高速な通信への要求が高まり、最大4Mbpsの通信を可能にするFIR(Fast Infrared)が標準化された。FIRはノートパソコンやプリンターなどで広く採用され、IrDAの普及を後押しした。さらに高速な規格として、最大16MbpsのVFIR(Very Fast Infrared)も策定されたが、この頃には競合技術であるBluetoothが台頭し始めていたため、VFIRが広く普及するには至らなかった。

IrDAの技術的な最大の特徴は、通信媒体として赤外線を利用する点にある。赤外線は光の一種であるため直進性が強く、通信は送受信ポート間の見通せる範囲に限定される。間に壁や障害物があると通信は遮断される。この指向性の強さは、利点と欠点の両面を持つ。利点としては、セキュリティの高さが挙げられる。通信範囲が限定的で、物理的に遮られてしまうため、意図しない第三者によるデータの盗聴が極めて困難である。また、電波を使用しないため、他の無線LANや電子機器との電波干渉を引き起こす心配がない。この特性から、電波の使用が制限される医療機関や工場など、特定の環境での利用に適していた。加えて、送受信モジュールの構造が比較的単純で、低コストかつ低消費電力で実装できるというメリットもあった。

一方で、この指向性の強さは利便性の面で大きな欠点となった。通信中は機器同士のポートを正確に向かい合わせ、その状態を維持する必要があった。少しでも位置がずれたり、間に物が挟まったりすると通信が途切れてしまうため、ユーザーは機器を動かさずに通信が完了するのを待たなければならなかった。通信距離が約1メートルと非常に短いことも、利用シーンを限定する要因となった。これらの欠点を克服したのが、電波を利用するBluetoothである。Bluetoothは指向性がなく、数メートルから十数メートルの範囲であれば、機器がカバンやポケットの中にあっても、あるいは間に障害物があっても通信が可能である。また、一対一の通信が基本のIrDAに対し、Bluetoothは複数のデバイスと同時に接続することもできる。こうした利便性の高さから、携帯電話やパソコンの近距離無線通信機能は、2000年代半ば以降、急速にIrDAからBluetoothへと置き換えられていった。

結論として、IrDAは赤外線を用いた、指向性が強く短距離な無線通信規格である。かつてはケーブルレスでのデータ交換を実現する標準的な技術として多くの機器に搭載されたが、指向性の制約や通信距離の短さといった利便性の問題から、より柔軟な通信が可能なBluetoothやWi-Fiにその地位を譲った。しかし、その高いセキュリティ性や電波干渉がないという特性は、現在でも一部の産業用・医療用機器などで限定的に活用されることがある。システムエンジニアを目指す上では、過去の技術がどのような課題を解決し、どのような理由で新たな技術に代替されていったのかを理解しておくことは、現代の技術を深く知るための重要な礎となる。

関連コンテンツ