KM(ケーエム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
KM(ケーエム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
知識管理 (チシキカンリ)
英語表記
Knowledge Management (ナレッジマネジメント)
用語解説
KMはナレッジマネジメント(Knowledge Management)の略称であり、組織が持つ知識や情報、ノウハウといった知的資産を組織全体で共有し、有効に活用することで、組織全体の生産性や創造性を高めるための経営手法である。個々の従業員が持つ知識や経験は、その人だけが保有している状態では組織の資産とはなり得ない。KMは、これらの知識を組織全体で共有可能な形にし、誰もが必要な時にアクセスできる状態を構築することを目的とする。これにより、業務の属人化を防ぎ、特定の従業員の退職や異動による業務停滞のリスクを低減させることが可能となる。また、過去の成功事例や失敗事例を共有することで、業務の効率化や品質の向上、新たなイノベーションの創出にも繋がる。システム開発の現場においても、過去のプロジェクトで得られた設計ノウハウや、発生した障害への対応記録、有用なプログラミング技術などを共有することは、開発の生産性と品質を維持・向上させる上で極めて重要である。
KMを理解する上で重要な概念として、「暗黙知」と「形式知」という二種類の知識が存在する。暗黙知とは、個人の経験や勘、直感に基づいており、言語化して他者に伝えることが難しい知識を指す。例えば、ベテラン技術者の持つトラブルシューティングの際の勘所や、顧客との交渉における絶妙な間合いの取り方などがこれにあたる。一方、形式知とは、文章や図、数式などを用いて客観的に表現され、他者と共有しやすい知識のことである。マニュアルや設計書、仕様書、データベースに蓄積されたデータなどが形式知の代表例である。KMの核心は、この言語化しにくい暗黙知をいかにして形式知に変換し、組織全体で共有・活用できる知識へと昇華させていくかという点にある。この知識創造のプロセスを理論化したものに「SECIモデル」がある。SECIモデルは、「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」という四つのプロセスから構成される。共同化は、OJTや共同作業を通じて、暗黙知を暗黙知のまま他者と共有する段階である。表出化は、個人の持つ暗黙知を対話や議論を通じて言語化・図式化し、形式知へと変換する段階であり、マニュアル作成などが該当する。連結化は、既存の形式知を組み合わせ、新たな形式知を体系的に創造する段階で、複数の報告書をまとめて分析レポートを作成するような活動を指す。最後の内面化は、形式知化された知識を実践を通じて学び、自身の新たな暗黙知として体得する段階である。このサイクルを継続的に回すことで、組織の知識は質・量ともに向上していく。このKMの実践を支援するために導入されるのが、ナレッジマネジメントシステム(KMS)と呼ばれるITツールである。KMSには、社内Wiki、FAQシステム、文書管理システム、チャットツール、Q&Aサイトなど様々な形態があり、知識の蓄積、検索、共有を円滑に行う機能を提供する。システムエンジニアは、こうしたシステムの利用者としてだけでなく、実践者、そして開発者としてもKMに深く関わる。利用者としては、過去のプロジェクトで蓄積されたノウハウや障害情報を参照し、自身の業務に活かす。実践者としては、自身が得た知見をドキュメントとして整理し、チームや組織に共有する責任を負う。そして開発者としては、顧客企業が抱える知識共有の課題を解決するためのナレッジマネジメントシステムの要件定義、設計、構築を担うこともある。KMの導入は、業務の標準化による品質の安定化や、新人教育の効率化、組織全体の意思決定の迅速化など多くのメリットをもたらす。しかし、単にツールを導入するだけでは成功しない。知識を共有する文化が組織に根付いていない場合や、情報を提供するインセンティブが不足している場合には、情報が蓄積されずに形骸化してしまう。また、情報の鮮度を保つための継続的な更新や、必要な情報を誰もが容易に見つけ出せる検索性の確保も、KMを成功させるための重要な課題となる。