LATCHの法則(ラッチのほうそく)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
LATCHの法則(ラッチのほうそく)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ラッチの法則 (ラッチノホウソク)
英語表記
LATCH principle (ラッチ プリンシプル)
用語解説
LATCHの法則とは、情報アーキテクチャの分野で提唱されている、情報を整理・分類するための基本的な5つの方法論を指す。米国の建築家でありグラフィックデザイナーでもあるリチャード・ソール・ワーマンによって提唱された。この法則は、私たちが日々接する膨大な情報を、人間が直感的に理解しやすい形で構造化するための指針となる。LATCHは、Location(場所)、Alphabet(アルファベット順)、Time(時間)、Category(カテゴリー)、Hierarchy(階層・程度)という5つの英単語の頭文字を取ったものである。システムエンジニアは、Webサイトのナビゲーション、アプリケーションのUI、データベースのスキーマ、各種ドキュメントなど、様々な情報の設計に携わる。ユーザーが必要な情報に迷わず、迅速にたどり着けるシステムを構築するためには、情報をいかに分かりやすく整理・提示するかが極めて重要となる。LATCHの法則は、その際の普遍的で強力な思考のフレームワークを提供する。この5つの分類軸を理解し、適切に使い分けることで、論理的で一貫性のある情報設計が可能となり、システムのユーザビリティを大幅に向上させることができる。
詳細として、LATCHの法則を構成する5つの要素についてそれぞれ解説する。第一に、Location(場所)は、地理的な位置や空間的な配置に基づいて情報を整理する方法である。地図上の位置情報と関連付けて情報を提示する場合に特に有効だ。例えば、天気予報サイトにおける地域別の天気情報、店舗検索システムにおける現在地からの距離順での店舗リスト、不動産情報サイトでのエリア別物件一覧などが挙げられる。ITインフラの分野では、データセンター内のサーバーラックの物理配置図や、ネットワーク構成図などもこの分類方法に該当する。物理的な位置関係が意味を持つ情報を扱う際に、最も直感的で分かりやすい整理方法となる。
第二に、Alphabet(アルファベット順)は、情報の名称を基準に、アルファベットや五十音の順序で整理する方法である。この方法の最大の利点は、探したい情報の名称が明確に分かっている場合に、ユーザーが目的の情報を非常に素早く見つけ出せることである。辞書や電話帳がその典型例であり、多くのWebサイトの索引や用語集、FAQページなどでも採用されている。システム開発の現場では、ファイルエクスプローラーにおけるファイル名でのソート機能や、プログラミングにおけるクラスや関数のリファレンスドキュメントなどで活用される。客観的で普遍的な基準であるため、誰にとっても公平で理解しやすい分類方法と言える。
第三に、Time(時間)は、時間的な順序、つまり時系列に沿って情報を整理する方法である。イベントが発生した順序や、情報の更新日時が重要な意味を持つ場合に適している。新しい情報から古い情報へ並べる「新着順」が最も一般的で、ニュースサイトの記事一覧、ブログの投稿履歴、SNSのタイムラインなどがこれに該当する。システム開発においては、バージョン管理システムにおけるコミットログの履歴、システムの動作を記録したイベントログの分析、プロジェクト管理におけるガントチャートなど、時間の流れを追跡する必要がある場面で不可欠な手法となる。
第四に、Category(カテゴリー)は、情報の持つ性質や機能、種類といった共通項に基づいてグループ化し、整理する方法である。LATCHの5つの要素の中で最も柔軟性があり、様々な場面で広く用いられる。ECサイトにおける「ファッション」「家電」「食品」といった商品分類や、ニュースサイトの「政治」「経済」「スポーツ」といったジャンル分けが代表例だ。システム設計においては、アプリケーションの機能メニューの構成や、ファイルシステムにおけるフォルダ分けなどが挙げられる。この分類方法を効果的に用いるには、ユーザーの思考モデルや利用文脈を深く理解し、直感的で分かりやすいカテゴリーを設計することが重要となる。カテゴリー設計の質が、システムの使いやすさを大きく左右すると言っても過言ではない。
第五に、Hierarchy(階層・程度)は、情報の重要度、規模、量、価格といった何らかの序列や等級に基づいて整理する方法である。つまり、情報の間に大小や高低といったランク付けを行い、その順序で並べる。ECサイトの売れ筋ランキングやレビュー評価順、検索エンジンの検索結果における関連性の高い順での表示、価格比較サイトでの「価格の安い順」「価格の高い順」によるソート機能などが具体例である。また、企業の組織図やシステムのアクセス権限レベル(管理者、編集者、閲覧者など)のように、明確な階層構造を持つ情報を表現する際にも用いられる。多くの選択肢の中から、ユーザーが自身の基準に合った最適な情報を見つけ出す手助けをする上で非常に有効な方法である。
これらの5つの方法は、それぞれ単独で用いられるだけでなく、実際のシステムでは複合的に組み合わせて利用されることがほとんどである。例えば、ECサイトでは、まず「カテゴリー」で商品を絞り込み、次に「Hierarchy(価格の安い順)」で並べ替え、さらに「Location(配送可能な地域)」でフィルタリングするといった操作が行われる。システムエンジニアは、扱う情報の特性とユーザーの目的を考慮し、これら5つの分類軸をいかに最適に組み合わせるかを設計する必要がある。LATCHの法則は、情報設計の引き出しを増やし、より論理的でユーザー中心のシステム構築を実現するための基礎知識となる。