MDI(エムディーアイ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
MDI(エムディーアイ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
マルチドキュメントインターフェース (マルチドキュメントインターフェース)
英語表記
MDI (エムディーアイ)
用語解説
MDI(エムディーアイ)は、Multiple Document Interface(マルチプル ドキュメント インターフェース)の略称である。これは、複数のドキュメントや作業領域を、単一の親となるウィンドウ(親ウィンドウ)の内部で管理するユーザーインターフェースの設計スタイルを指す。この方式を採用するアプリケーションでは、ユーザーが操作するすべてのドキュメント(子ウィンドウ)は、そのアプリケーションの親ウィンドウという大きな枠の中に閉じ込められて表示される。例えば、かつてのMicrosoft Office製品群、特にWordやExcelの古いバージョンでは、複数の文書ファイルを開くと、それらの文書はアプリケーション全体のウィンドウ内でそれぞれ独立した小さなウィンドウとして表示されていた。ユーザーは親ウィンドウというアプリケーションの枠組みの中で、複数の子ウィンドウを切り替えたり、並べたりして作業を進める。MDIの主な目的は、アプリケーションの操作を単一のウィンドウに集約し、関連するドキュメントへのアクセスを容易にすることにあった。特に、初期のオペレーティングシステムでは、アプリケーションごとに多くの独立したウィンドウを開くと、デスクトップが煩雑になりがちであったため、MDIは特定のアプリケーション内の作業を整理する有効な手段として普及した。
MDIの最大の特徴は、親ウィンドウと子ウィンドウという階層的な構造を持つ点にある。親ウィンドウはアプリケーションそのものの境界を定義し、メニューバーやツールバー、ステータスバーといった共通の要素を持つ。一方、子ウィンドウは個々のドキュメントやデータビューを表し、親ウィンドウの内部でのみ移動、サイズ変更、最小化、最大化が行える。子ウィンドウを親ウィンドウの外に移動させることはできない。この設計にはいくつかの利点があった。一つは、ユーザーが特定のアプリケーションで複数のドキュメントを扱う際に、それらがすべて一つの親ウィンドウ内に収まっているため、デスクトップ全体が散らかりにくいという点である。ユーザーは一つのアプリケーションウィンドウに集中して作業を進めることができる。また、子ウィンドウが最小化されても親ウィンドウのアイコンとして表示されるため、多くのウィンドウを効率的に管理できた。複数のドキュメントを並べて比較したり、カスケード表示(重ねて表示)やタイル表示(並べて表示)といった機能を使って、一度に複数の情報を参照したりするのも容易であった。これにより、アプリケーション内での作業の一貫性が保たれ、ユーザーはどのドキュメントがどのアプリケーションに属しているかを迷うことなく認識できた。
しかし、MDIにはいくつかの欠点も存在した。最も顕著な問題の一つは、子ウィンドウが最大化された場合、親ウィンドウ全体を覆い隠してしまうため、ユーザーが他のアプリケーションやデスクトップ上の他の要素にアクセスするのが難しくなることである。また、複数のアプリケーションをMDI形式で起動している場合、それぞれのアプリケーションが自身の親ウィンドウを持つため、デスクトップ上に複数の大きなウィンドウが立ち並び、かえって煩雑になるという矛盾も生じた。ユーザーが複数のMDIアプリケーションを同時に利用しようとすると、個々のアプリケーションのウィンドウ管理が複雑になり、直感的な操作を妨げることがあった。さらに、アプリケーション間でドラッグ&ドロップなどの連携を行いたい場合、MDIの子ウィンドウがアプリケーションの境界内に閉じ込められているため、操作が煩雑になったり、そもそも実現できなかったりするケースもあった。アプリケーションのメニューバーが親ウィンドウに固定されているため、どのメニューが現在アクティブな子ウィンドウに関連するものなのか、ユーザーが混乱することもしばしば見られた。
これらの課題から、MDIは徐々にその主流の座を明け渡していくことになる。MDIの対極にある概念として、SDI(Single Document Interface、シングル ドキュメント インターフェース)がある。SDIでは、一つのドキュメントにつき一つの独立したトップレベルウィンドウが割り当てられ、各ドキュメントがまるで独立したアプリケーションのように振る舞う。SDIは、複数のアプリケーションを並行して利用する場合や、マルチモニター環境において、より柔軟なウィンドウ配置を可能にしたため、WindowsのGUIが進化するにつれてMDIに代わって主流となっていった。
現代では、SDIの利便性とMDIの一元管理の考え方を組み合わせたような、タブ型インターフェース(Tabbed Document Interface)が広く普及している。ウェブブラウザやテキストエディタ、統合開発環境(IDE)など、多くのアプリケーションでタブが採用されており、一つの親ウィンドウ内で複数のドキュメントやページをタブによって切り替えることができる。これは、MDIの子ウィンドウのように親ウィンドウ内に収まりつつも、タイトルバーなどの表示領域を節約し、より洗練された形で複数の情報を効率的に管理できる方式である。
MDIは現在ではあまり見かけなくなったインターフェース形式ではあるが、そのコンセプトが完全に消え去ったわけではない。例えば、一部のCADソフトウェアや、特定の開発ツールなど、複雑な複数のビューやドキュメントを一つの作業空間で集中して扱いたい場合に、MDIの設計思想が今でも採用されているケースがある。これは、それらの特定の用途において、MDIが提供する一貫した作業環境と集中力が依然として有効であるためだ。システムエンジニアを目指す上で、MDIが過去の技術として位置づけられる一方で、その利点と欠点を理解することは、ユーザーインターフェース設計の歴史と進化を学ぶ上で重要であり、現代のUI設計がなぜ現在の形になっているのかを深く理解するための一助となる。