NSチャート(エヌエスチャート)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
NSチャート(エヌエスチャート)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
エヌエスチャート (エヌエスチャート)
英語表記
NS Chart (エヌエスチャート)
用語解説
NSチャートは、プログラムの論理構造を視覚的に表現するための図法である。正式名称はNassi-Shneiderman chart(ナシ-シュナイダーマン・チャート)といい、プログラミング教育やシステム設計の現場で、プログラムの動作原理を明確にし、その構造を理解するために用いられる。この図法は、特に構造化プログラミングの概念を厳密に反映しており、プログラムの流れを上から下へと一方通行に進むよう設計されている点が大きな特徴だ。これにより、プログラムの実行順序が直感的になり、可読性や保守性が向上する。NSチャートは、プログラムを構成する基本的な要素である順次処理、選択処理(条件分岐)、繰り返し処理(ループ)の三つの構造のみを用いて記述されるため、複雑なプログラムであっても、その本質的な構造を分かりやすく示すことができる。プログラムの設計段階でNSチャートを作成することで、実装前に論理的な誤りを発見しやすくなり、手戻りのリスクを低減する効果も期待できる。
より詳しくNSチャートについて見ていこう。NSチャートは、1972年にアイザック・ナシとベン・シュナイダーマンによって考案された。当時のプログラミングでは、GOTO文と呼ばれる無条件ジャンプ命令が多用され、プログラムの流れが複雑に入り組み、「スパゲッティコード」と呼ばれる読みにくい状態になることが大きな課題だった。このような背景の中、エドガー・ダイクストラらが提唱した構造化プログラミングの考え方が登場し、プログラムは順次、選択、繰り返しのわずか三つの基本構造だけで記述できることが示された。NSチャートは、この構造化プログラミングの原則を視覚的に強制するツールとして開発され、GOTO文に頼らずにプログラムの論理を表現するための有力な手段として注目されたのである。
NSチャートの記述では、主に以下の三つの基本図形を使用する。一つ目は「順次構造」であり、処理が順番に実行されることを示す長方形で表現される。この長方形のブロックの中に、具体的な処理内容を記述し、上のブロックから下のブロックへと処理が流れることを意味する。二つ目は「選択構造」で、条件によって処理が分岐することを示す。これは、大きな長方形のブロックを斜めの線で区切り、条件部を記述する領域と、条件が真の場合の処理ブロック、偽の場合の処理ブロックを配置する形で表現される。例えば、「もし〜ならばAを実行し、そうでなければBを実行する」といった条件分岐がこれに該当する。さらに、複数の条件に応じて多岐にわたる処理を選択する「多分岐(Case)構造」も、同様に区分けされたブロックを用いて表現することが可能だ。三つ目は「繰り返し構造」で、特定の条件が満たされるまで処理を繰り返すことを示す。これは、長方形の枠の一部を区切り、そこに繰り返しを行う条件を記述し、残りの部分に繰り返される処理本体を配置する形で表現される。繰り返しには、ループに入る前に条件を評価する「前判定ループ(Do-While / While-Do)」と、ループを実行した後に条件を評価する「後判定ループ(Repeat-Until)」があり、それぞれ図形表現の細部が異なるが、基本的な考え方は同じである。また、特定の回数だけ繰り返す「カウンタ制御ループ(For)」も、同様の枠組みの中で表現できる。これらの基本図形は、それぞれが自己完結的なブロックとして機能し、他のブロックの中に自由に入れ子(ネスト)にすることができるため、非常に複雑なプログラム構造であっても、NSチャート上では視覚的にその階層性を明確に表現できるのである。
NSチャートの大きな利点としては、まずその視認性の高さが挙げられる。プログラムの構造が図の形状やブロックの配置によって直感的に理解できるため、プログラムの全体像や個々のロジックが、コードを一行一行追うよりもはるかに容易に把握できる。特に、ネストの深さが図のインデント(字下げ)として表現されるため、どこまでが同じスコープの処理なのかが一目で分かる。また、GOTO文の使用を許さない構造であるため、必然的にプログラムが構造化され、スパゲッティコードの発生を防ぐ。これにより、コードの可読性が向上し、バグの混入を防ぎやすくなるだけでなく、将来的な保守や変更も容易になる。プログラムの設計段階でNSチャートを用いてロジックを検討することは、論理的な矛盾や欠陥を早期に発見する手助けとなり、結果として開発効率の向上に貢献する。さらに、NSチャートはプログラムの設計ドキュメントとしても有効であり、開発チーム内でのコミュニケーションツールとして、あるいは後任者への引き継ぎ資料として、プログラムの意図を正確に伝える役割を果たす。
一方で、NSチャートにもいくつかの課題や限界がある。最も顕著なのは、大規模で複雑なプログラムの場合、NSチャートが非常に大きな図になりやすく、一枚の紙や画面に収まりきらないことがある点だ。そのため、分割して記述したり、複数のNSチャートを関連付けたりする必要が生じる場合がある。また、NSチャートはあくまでプログラムのロジックフローを表現することに特化しており、ユーザーインターフェース(GUI)の設計や、オブジェクト指向プログラミングにおけるクラス間の相互作用、イベント駆動型のプログラムの流れといった要素を表現することにはあまり適していない。これらの場合は、UML(Unified Modeling Language)などのより汎用的なモデリング言語が用いられることが多い。NSチャートの作成には、専用のツールを使うか、手書きで丁寧に描く必要があり、特に手書きの場合は手間と時間がかかるという点もデメリットとして挙げられることがある。しかし、これらの制約があるにもかかわらず、NSチャートはプログラムの基本的なアルゴリズムを理解し、構造化された思考を養う上で依然として非常に有効なツールである。特にシステムエンジニアを目指す初心者にとっては、プログラムの論理的な流れを整理し、視覚的に表現する能力を養うための優れた学習教材となり得るだろう。NSチャートの概念を理解し、その利用を通じて、より堅牢で保守しやすいプログラム設計の基礎を築くことが期待される。