PAUSEフレーム(ポーズフレーム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
PAUSEフレーム(ポーズフレーム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ポーズフレーム (ポーズフレーム)
英語表記
PAUSE frame (ポーズフレーム)
用語解説
PAUSEフレームは、イーサネットにおけるフロー制御機能の一つだ。ネットワーク上でデータが過剰に送られてくることで、受信側の機器が処理しきれなくなるのを防ぐために使用される。具体的には、受信側のバッファが満杯になりそうになった際に、送信元に対して一時的にデータ送信を停止するよう要求する信号として機能する。これにより、データの破棄を防ぎ、ネットワークの安定稼働を支援する重要な役割を担っている。この機能はIEEE 802.3xとして標準化されている。
ネットワークでは、様々な機器が接続され、高速にデータを送受信している。しかし、すべての機器が同じ処理能力を持っているわけではない。例えば、高速なサーバーが、処理能力がやや低いネットワークスイッチのポートに大量のデータを一気に送る場合や、複数の高速な送信元から一つの受信ポートにデータが集中する場合がある。このような状況で、受信側の機器(例えばスイッチのポート)が、その受信速度や処理能力に対してあまりにも多くのデータを受信し続けると、内部のデータ一時保管場所である「受信バッファ」がすぐに満杯になってしまう。
受信バッファが溢れてしまうと、新たに送られてきたデータは行き場を失い、破棄されてしまう。データが破棄されると、送信元は破棄されたデータを検知し、再度送信し直す必要が生じる。この再送処理は、ネットワーク全体のデータ転送効率を著しく低下させ、遅延の原因となるだけでなく、場合によってはアプリケーションの動作にも悪影響を及ぼす。このようなデータ損失によるパフォーマンス低下を防ぐために、PAUSEフレームは導入された。
PAUSEフレームの仕組みは次のようになる。まず、受信側の機器(例えばネットワークスイッチの特定のポート)が、自らの受信バッファの使用率を常に監視している。もしバッファの使用率が事前に設定された一定のしきい値(ハイウォーターマークと呼ばれる)を超えて上昇し、バッファが満杯に近づいていると判断した場合、その受信ポートは特別なフレームであるPAUSEフレームを生成する。このPAUSEフレームは、直接接続されている送信元(リンクパートナー)に対して、一時的にデータの送信を停止するよう求める信号だ。
PAUSEフレームには、どれくらいの時間データを停止してほしいかを示す「PAUSE時間」という情報が格納されている。このPAUSEフレームを受信した送信元の機器は、そのPAUSE時間の間、当該の受信ポートへのデータ送信を一時的に中断する。送信が停止されている間に、受信側の機器はバッファに溜まったデータを処理し、バッファの空き容量を回復させる。
PAUSE時間が経過すると、送信元は自動的にデータ送信を再開する。また、PAUSE時間が経過する前に、受信側のバッファが十分に回復したと判断した場合、受信側はPAUSE時間が「0」であるPAUSEフレームを送信して、送信元にすぐにデータ送信を再開してもよいことを伝えることもできる。PAUSEフレームは、宛先として特殊なマルチキャストMACアドレス(01-80-C2-00-00-01)を使用する。これは、ローカルに直接接続されている機器にのみ到達するように設計されており、ネットワーク全体に広がることを防ぐ。
PAUSEフレームによるフロー制御は、データ損失を防ぎ、ネットワークの信頼性を高める上で非常に有効な手段だ。しかし、いくつかの考慮すべき点もある。
一つは「ホップ・バイ・ホップ制御」であることだ。PAUSEフレームは、直接接続された二つの機器間でのみ機能し、エンド・ツー・エンド(通信の始点から終点まで)のフロー制御を行うものではない。つまり、途中の機器がPAUSEフレームを生成しても、その先のさらに別の機器には直接影響を与えない。
もう一つの重要な課題は「ヘッドオブラインブロッキング(Head-of-Line Blocking、HOLブロッキング)」と呼ばれる現象を引き起こす可能性がある点だ。PAUSEフレームは、特定の受信ポートへのすべてのトラフィックを一時停止させるため、たとえ一部のトラフィックのみが輻輳(混雑)の原因であったとしても、そのポートを通過する他の、全く問題のないトラフィックまで停止させてしまう可能性がある。例えば、あるスイッチのポートがAという送信元から大量のデータを受信していて輻輳しているとする。このポートがPAUSEフレームをAに送ると、Aは当該ポートへの送信を止めるが、もしAがBという別の機器へもデータを送っていた場合、Bへの送信まで停止してしまう可能性がある。これは、ネットワーク全体の効率を低下させる要因となる場合がある。
このHOLブロッキングの問題を解決するために、「優先度ベースフロー制御(Priority-based Flow Control、PFC、IEEE 802.1Qbb)」という技術が登場した。PFCは、データに優先度を付け、優先度ごとに個別のフロー制御を行うことで、特定の優先度のトラフィックのみを停止させることが可能になる。これは、PAUSEフレームが全トラフィックを停止させるのとは異なり、よりきめ細やかな制御を可能にする。PFCは、データセンターなどの高性能なネットワーク環境で利用されることが多い、DCB(Data Center Bridging)の一部を構成する重要な技術だ。
PAUSEフレームは、ネットワーク機器の設定によって有効/無効を切り替えることができる場合が多い。多くの場合、自動ネゴシエーションによって有効・無効が決定されるが、特定の環境では手動で制御することが推奨されることもある。適切に設定・運用されることで、PAUSEフレームはイーサネットネットワークの安定性と効率を向上させる上で欠かせない基盤技術の一つとなっている。