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RAII(アイ・エー・アイ・アイ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

RAII(アイ・エー・アイ・アイ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

リソース獲得はオブジェクト生成時に、リソース解放はオブジェクト破棄時に (リソースカクトク ワ オブジェクトセイセイジ ニ、リソースカイホウ ワ オブジェクトハキジ ニ)

英語表記

RAII (アイーアイーアイー)

用語解説

RAII(Resource Acquisition Is Initialization)は、プログラミングにおけるリソース管理の重要なイディオムである。これは、リソースの確保と解放をプログラムで自動的に行い、プログラムの信頼性と安全性を高めることを目的としている。リソースとは、プログラムが使用する有限な資源のことで、例えばメモリ、ファイルハンドル、ネットワークソケット、データベース接続、排他ロックなどがこれにあたる。RAIIの基本的な考え方は、リソースの取得をオブジェクトの初期化(コンストラクタの実行)と結びつけ、リソースの解放をオブジェクトの破棄(デストラクタの実行)と結びつけることにある。これにより、プログラムの実行フローやエラー発生に関わらず、リソースが常に適切に管理されることが保証される。この概念は主にC++で発展してきたが、他のプログラミング言語でも同様の考え方やメカニズムが採用されている。

ソフトウェア開発において、リソースの管理は非常に重要な課題である。プログラムが何らかのリソースを使い始めたら、その利用が終わったときには必ずそのリソースを解放しなければならない。もし解放を忘れると、メモリリーク、ファイルハンドルの枯渇、デッドロックといった問題が発生し、システムのパフォーマンス低下や予期せぬ障害につながる可能性がある。 従来、リソースの手動管理では、プログラマが明示的にリソースを取得し、そして明示的に解放するコードを記述する必要があった。しかし、関数からの複数の戻りパス、条件分岐、そして特に例外処理が発生するような複雑な状況では、すべての解放パスを正しく記述することは非常に困難である。例えば、リソースAとリソースBを順に取得し、途中でエラーが発生した場合、リソースAだけが解放されずに残ってしまう、といった事態が起こりうる。

RAIIはこの問題を解決するために考案された。RAIIでは、リソースの管理を特定のオブジェクトに委ねる。具体的には、リソースを管理するクラスを定義し、そのクラスのコンストラクタ内でリソースの取得処理を実行する。リソースの取得に失敗した場合は、コンストラクタが例外を投げることで、そのオブジェクトが不完全な状態になることを防ぐ。次に、このクラスのデストラクタ内で、コンストラクタで取得したリソースの解放処理を実行する。 C++のような言語では、オブジェクトがスコープを抜けるときや、プログラムが例外によってスタックを巻き戻す(unwinding)ときなど、オブジェクトが破棄される際には必ずデストラクタが自動的に呼び出されるという言語の特性がある。この自動的なデストラクタ呼び出しの仕組みを利用することで、プログラマは明示的にリソース解放のコードを記述することなく、リソースの確実な解放を保証できる。

RAIIがもたらす主な利点は以下の通りである。第一に、リソースリークの防止とプログラムの信頼性向上である。リソースの取得と解放がオブジェクトの寿命に厳密に紐付けられるため、手動での解放忘れや誤った解放順序によるバグのリスクが大幅に減少する。第二に、コードの簡潔化と保守性の向上である。リソース管理に関するロジックが、そのリソースを管理するオブジェクトのクラス内にカプセル化されるため、アプリケーションコード本体からリソース解放のための冗長なtry-finallyブロックやエラーハンドリングが消え、コードが読みやすく、理解しやすくなる。また、リソース管理に関する変更が必要になった場合でも、影響範囲を限定しやすくなるため、保守性が向上する。第三に、例外安全性である。RAIIを使用することで、プログラムの実行中に例外が発生しても、スタック巻き戻しの過程で関連するオブジェクトのデストラクタが自動的に呼び出され、リソースが適切に解放されるため、リソースリークを防ぎ、プログラム全体の堅牢性を高めることができる。

C++の標準ライブラリには、RAIIの原則に基づいて設計された多くのクラスがある。最も代表的な例は、動的に確保されたメモリを管理するスマートポインタ(std::unique_ptrstd::shared_ptrなど)である。これらのスマートポインタは、コンストラクタでメモリを確保し、デストラクタでそのメモリを解放するdelete演算子を呼び出すことで、メモリリークを防ぐ。また、ファイル入出力を扱うstd::fstreamのようなファイルストリームクラスも、コンストラクタでファイルを開き、デストラクタでファイルを閉じることでRAIIを実現している。マルチスレッドプログラミングにおける排他制御でもRAIIは有効で、std::lock_guardstd::unique_lockは、コンストラクタでミューテックスをロックし、デストラクタでアンロックすることで、デッドロックのリスクを軽減しながら安全な排他制御を提供する。

他のプログラミング言語でも、C++のRAIIと全く同じメカニズムではないが、同様の目的を達成するための構文やイディオムが存在する。例えば、Javaのtry-with-resources文やPythonのwith文(コンテキストマネージャ)は、特定のブロックの開始時にリソースを取得し、ブロックの終了時(正常終了か例外発生かを問わず)にリソースを自動的に解放するメカニズムを提供している。これらは、リソースの自動管理によってプログラムの安全性と保守性を高めるという点で、RAIIと同じ思想を共有していると言える。

RAIIは、現代のシステムプログラミングにおいて、安全で堅牢なソフトウェアを構築するために不可欠な設計原則の一つであり、システムエンジニアを目指す上で理解しておくべき重要な概念である。

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