ソケット (ソケット) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
ソケット (ソケット) の読み方
日本語表記
ソケット (ソケット)
英語表記
socket (ソケット)
ソケット (ソケット) の意味や用語解説
「ソケット」は、コンピュータネットワークにおけるデータ通信の終端点として機能する、プログラミング上の抽象的な概念である。プロセスがネットワークを通じてデータを送受信するために利用する、一種の通信口と考えることができる。この通信口を通じて、同一のコンピュータ上にある異なるプログラム間や、インターネットを介して離れた場所にあるコンピュータ上のプログラム間でのデータ交換が可能となる。システムエンジニアにとって、ソケットはネットワークアプリケーションの設計と実装の根幹をなす要素であり、その理解は必須である。 ソケットの最も一般的な用途は、クライアントとサーバー間の通信を確立することである。例えば、ウェブブラウザ(クライアント)がウェブサーバーにページの表示を要求したり、メールクライアントがメールサーバーと送受信したりする際に、その裏側でソケットが利用されている。各ソケットは、特定のプロトコル(TCPやUDPなど)と関連付けられ、ネットワークアドレス(IPアドレスとポート番号)によって識別される。これにより、データがどのコンピュータのどのプログラムに届けられるべきかが明確に定義される。 詳細として、ソケットには主にストリームソケットとデータグラムソケットの二種類がある。ストリームソケットは通常、伝送制御プロトコル(TCP)を使用し、信頼性が高く、順序保証とエラー検出、再送機能を持つコネクション指向の通信を提供する。データの欠落や重複がなく、正しい順序で届けられるため、ファイル転送やウェブ通信(HTTP)など、データの正確性が重要な場面で用いられる。通信を開始する前に、クライアントとサーバー間で「コネクション(接続)」を確立する必要があり、この接続が確立されると、データの送受信が可能になる。通信終了時には、このコネクションを明示的に切断する。 一方、データグラムソケットは通常、ユーザーデータグラムプロトコル(UDP)を使用し、コネクションレス型の通信を提供する。データグラムソケットは、通信の信頼性や順序保証を行わない代わりに、オーバーヘッドが少なく高速な通信が可能である。データの送受信は個々のパケット(データグラム)として行われ、各パケットは独立して処理されるため、送信された順序で届く保証はなく、途中で失われる可能性もある。そのため、音声通話(VoIP)やオンラインゲーム、DNS(ドメインネームシステム)のように、リアルタイム性や高速性が重視され、多少のデータ損失が許容されるアプリケーションで利用される。 プログラムがソケットを利用するためには、オペレーティングシステムが提供するソケットAPI(Application Programming Interface)を使用する。これは、ソケットの作成、ネットワークアドレスへのバインド(結合)、接続の待機、接続の受け入れ、データの送受信、ソケットのクローズといった一連の操作を行うための関数群である。これらのAPIは、C言語の`socket()`、`bind()`、`listen()`、`accept()`、`connect()`、`send()`、`recv()`、`close()`などの関数として実装されていることが多い。 サーバー側では、まず`socket()`関数でソケットを作成し、次に`bind()`関数で自身のIPアドレスとポート番号にソケットを結びつける。これにより、ネットワーク上の特定の「場所」で通信を受け付ける準備が整う。その後、`listen()`関数でクライアントからの接続要求を待ち受け、`accept()`関数で実際に接続を確立する。`accept()`は新しいソケットを返し、この新しいソケットを通じて個々のクライアントと通信を行う。これは、一つのサーバーが複数のクライアントと同時に通信できるようにするための仕組みである。 クライアント側では、同様に`socket()`関数でソケットを作成した後、`connect()`関数を用いてサーバーのIPアドレスとポート番号に接続を試みる。接続が成功すると、クライアントとサーバー間でデータの送受信が可能となり、それぞれ`send()`や`recv()`といった関数を使ってデータ交換を行う。通信が終了したら、クライアント・サーバー双方で`close()`関数を使ってソケットを閉じる。 このように、ソケットはネットワーク通信の低レベルな詳細を抽象化し、プログラマが比較的容易にネットワークアプリケーションを開発できるようにする基盤技術である。システムエンジニアとして、このソケットの仕組みと動作原理を理解することは、ネットワークの動作原理やトラブルシューティング、さらには分散システムやクラウドネイティブなアプリケーションの設計・開発において不可欠な知識となる。