【ITニュース解説】100 Days of DevOps: Day 38
2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「100 Days of DevOps: Day 38」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
コンテナアプリの新機能テスト準備として、Dockerイメージの操作手順を解説。`docker pull`コマンドで指定のイメージをダウンロードし、`docker tag`コマンドでテスト用に新しい名前を付ける。これにより、一つのイメージを様々なプロジェクトで効率的に使えるようになる。
ITニュース解説
ITシステム開発の現場では、アプリケーションを効率的に開発し、テストし、運用するために様々な技術が使われている。その中でも「コンテナ技術」は、近年特に注目を集めている技術の一つである。コンテナ技術は、アプリケーションとその動作に必要なすべての要素(コード、ランタイム、システムツール、ライブラリなど)を一つの隔離された「コンテナ」と呼ばれるパッケージにまとめることで、どんな環境でも一貫して動作させることができるようにする。これにより、開発者のマシンで動いたものがテスト環境や本番環境で動かない、といった「環境の違いによる問題」を大幅に減らすことが可能になる。
今回のニュース記事では、「Nautilusプロジェクト」という架空のプロジェクトにおいて、新しくコンテナ化されたアプリケーションの機能をテストする準備として、特定のDockerイメージを準備する手順が解説されている。Dockerは、コンテナ技術を実装するための最も広く使われているツールの一つであり、Dockerイメージはそのコンテナを作成するための設計図のようなものである。Dockerイメージは、アプリケーションの実行に必要なファイルシステム、設定、および依存関係をすべて含む、静的で読み取り専用のテンプレートである。
システムエンジニアを目指す上では、このようなコンテナ技術の基礎的な操作を理解することが重要だ。このタスクの目的は、「busybox:musl」という既存のDockerイメージをダウンロードし、それを「busybox:media」という新しい名前でタグ付けし直すことで、Nautilusプロジェクトの特定のテスト要件に合わせたイメージを準備することである。
まず最初のステップは、「Busyboxイメージのプル」だ。これは、インターネット上に公開されているDockerイメージのリポジトリ(倉庫)である「Docker Hub」から、必要なイメージをローカルのサーバーにダウンロードする作業である。今回のケースでは、「busybox:musl」というイメージが対象となる。「busybox」は、Unix系の基本的なコマンド(ls, cp, mvなど)を一つにまとめた非常に軽量なLinuxユーティリティ集で、最小限のリソースで動作するため、コンテナイメージのベースとしてよく利用される。「:musl」は、Busyboxイメージの特定のバージョンやバリアントを示す「タグ」であり、この場合はmusl libcというC言語の標準ライブラリ実装を使用していることを示している。
ダウンロードは、「docker pull busybox:musl」というコマンドを実行することで行われた。このコマンドを実行すると、指定されたイメージがDocker Hubからサーバーに転送される。コマンドの出力には、「Pulling from library/busybox」というメッセージが表示され、Docker Hubの公式ライブラリからダウンロードが開始されたことがわかる。「8e7bef4a92af: Pull complete」は、イメージの特定のレイヤー(層)のダウンロードが完了したことを示しており、Dockerイメージが複数のレイヤーで構成されていることが示唆されている。「Digest: sha256:254e6134b1bf813b34e920bc4235864a54079057d51ae6db9a4f2328f261c2ad」は、ダウンロードされたイメージの整合性を確認するためのチェックサム(ハッシュ値)であり、ダウンロード中にデータが破損していないことを保証する。「Status: Downloaded newer image for busybox:musl」は、ダウンロードが成功し、最新のイメージが取得されたことを報告している。
ダウンロードが完了した後、そのイメージが正しくローカルサーバーに保存されたことを確認するために、「docker images」というコマンドが実行された。このコマンドは、ローカルに存在するすべてのDockerイメージのリストを表示する。出力結果を見ると、「REPOSITORY」が「busybox」、「TAG」が「musl」、「IMAGE ID」が「44f1048931f5」、そして「SIZE」が「1.46MB」という情報が表示されている。これは、busybox:muslイメージが、一意のイメージID 44f1048931f5を持ち、そのサイズがわずか1.46MBであることを示しており、ダウンロードが成功したことが確認できる。IMAGE IDはイメージのコンテンツを一意に識別するためのもので、これは非常に重要な情報である。
次のステップは、「イメージのリタグ」である。これは、既にローカルにあるDockerイメージに、新しい名前(タグ)を付ける作業である。既存のイメージに新しいタグを付けることで、元のイメージを削除することなく、プロジェクト固有の命名規則や特定の用途に合わせた管理が可能になる。今回のタスクでは、「busybox:musl」というイメージに、「busybox:media」という新しいタグを付けることが求められた。これは、Nautilusプロジェクトのテスト対象が「media」関連の機能であることを示唆しているのかもしれない。
リタグには、「docker tag busybox:musl busybox:media」というコマンドが使用された。このコマンドの書式は、「docker tag <元のイメージ名:元のタグ> <新しいイメージ名:新しいタグ>」である。ここで注意すべきは、この操作は元のイメージをコピーするわけではなく、同じIMAGE IDを持つイメージに新たな参照(タグ)を追加するだけであるという点だ。つまり、物理的にディスク容量が二倍になるわけではない。
リタグが成功したことを確認するため、再び「docker images」コマンドが実行された。その結果は、最初の確認時とは異なり、同じ「IMAGE ID」(44f1048931f5)を持つイメージが二つの異なるタグ「musl」と「media」で表示されている。REPOSITORY欄はどちらも「busybox」であり、IMAGE ID、CREATED(作成日時)、SIZEもすべて同じであることが確認できる。これは、busybox:muslとbusybox:mediaが、物理的には同じ基盤となるイメージを指していることを明確に示している。このようにして、Nautilusプロジェクトのテスト要件に合致する「busybox:media」という名前のDockerイメージの準備が完了したのである。
この一連の作業は、コンテナ環境でのアプリケーション開発やテストにおいて非常に基本的ながらも重要な操作である。既存のDockerイメージを再利用し、プロジェクトや用途に応じたタグを付与することで、効率的なイメージ管理が可能となる。システムエンジニアとして、このようなDockerコマンドラインインターフェース(CLI)の基本的な操作を習得することは、現代のITインフラを構築し、運用していく上で不可欠なスキルとなるだろう。コンテナ化されたアプリケーションのデプロイやテストは、このようなイメージの準備から始まることが多く、その第一歩を理解することは、今後の学習の土台を築く上で大いに役立つ。