【ITニュース解説】第181回 2020年代前半のウェブデザインと今後のトレンド[後編]
2025年09月17日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「第181回 2020年代前半のウェブデザインと今後のトレンド[後編]」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
2020年から2024年までのウェブデザイン要素を分析し、その変遷から「ウェブデザインのトレンド」とは何かを探る。記事後編では、これまでのトレンドを踏まえ、今後のデザインがどのような方向へ進むのかを考察する。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す上で、ウェブデザインのトレンドを理解することは非常に重要だ。ウェブサイトやアプリケーションは、その見た目と使いやすさによってユーザーの評価が大きく左右される。技術的なバックエンドがどれほど優れていても、ユーザーが直感的に使えなければ、その価値は半減してしまうからだ。ここでは、2020年代前半のウェブデザインの動きを振り返り、今後どのような方向へと進化していくのかをシステムエンジニアの視点から解説する。
2020年から2024年にかけてのウェブデザインは、単なる見た目の美しさだけでなく、ユーザー体験(UX)の向上と技術的な実現可能性のバランスを追求する時代だった。この期間には、以前主流だったミニマルなフラットデザインから一歩進んだ、よりリッチで深みのある表現が台頭した。例えば、グラデーションやシャドウ、透明感を巧みに利用したデザインが増え、UI要素に立体感や触感を思わせるモーフィズム(Neumorphismなど)が一時的ながら注目を集めた。これは、CSSの表現力が向上し、デザイナーがより複雑な視覚効果をウェブ上で実現できるようになったことが背景にある。システムエンジニアとしては、これらの視覚効果がサイトのパフォーマンスにどのような影響を与えるかを理解し、軽量かつ効率的な実装方法を選択する知識が求められる。
また、ユーザーインターフェース(UI)におけるアニメーションやマイクロインタラクションの重要性も高まった。要素がふわっと現れたり、ボタンを押したときにフィードバックがあったりといった細かな動きは、ユーザーに心地よい操作感を提供し、ウェブサイト全体の質を高める。これらは主にJavaScriptやCSSのトランジション、アニメーションプロパティによって実現されるが、過度なアニメーションはユーザーの集中を妨げたり、ページの表示速度を低下させたりする可能性があるため、そのバランスを見極める技術的な判断が必要となる。
アクセシビリティ、つまり「誰もが利用できるウェブサイト」の実現も、この期間に一層重視されるようになった。色覚多様性を持つ人にも情報が伝わる配色、スクリーンリーダーに対応したセマンティックなHTML構造、キーボード操作だけで全ての機能が利用できるようなUI設計など、様々な配慮が求められる。これは単にデザインの側面だけでなく、HTMLのマークアップ、CSSの記述、JavaScriptによるインタラクションの実装といったシステムエンジニアの技術的なスキルに直結する。WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)のようなガイドラインに準拠したサイト構築は、現代のウェブ開発者にとって必須の知識となりつつある。
さらに、レスポンシブデザインの標準化は続き、様々なデバイスサイズに対応するウェブサイト構築が当たり前になった。これは、PC、タブレット、スマートフォンといった異なる画面サイズでも最適な表示と操作性を提供するもので、CSSのメディアクエリやFlexbox、Gridといったレイアウト技術がその基盤を支えている。システムエンジニアは、これらの技術を駆使して、デザインがどのデバイスでも意図通りに機能し、パフォーマンスが維持されるように実装する責任を負う。
今後のウェブデザインのトレンドは、これらの進化をさらに加速させ、新たな技術と融合していく方向へ向かうだろう。
一つは、人工知能(AI)によるデザイン支援の進化だ。AIがユーザーの行動パターンや好みを学習し、最適なUI/UXを自動的に提案したり、パーソナライズされたコンテンツを生成したりするようになる。これにより、システムエンジニアはAIと連携して、より動的で適応性の高いウェブサイトを構築するスキルが必要になる。例えば、バックエンドでユーザーデータを解析し、フロントエンドでAIが生成したデザイン要素をレンダリングする仕組みなど、AIとウェブ技術の統合が進むだろう。
次に、没入型体験(Immersive Experience)の普及が挙げられる。WebXRなどの技術を用いることで、ブラウザ上でVR(仮想現実)やAR(拡張現実)のコンテンツを提供することが可能になる。これにより、ユーザーはより深いレベルでウェブコンテンツと関わり、製品の試着や仮想空間での体験など、これまでになかったインタラクションが生まれる。システムエンジニアは、3Dグラフィックスのレンダリング技術やWebXR APIの活用など、新たな技術領域への対応が求められる。
サステナビリティ(持続可能性)への意識の高まりも、ウェブデザインに影響を与える。データ転送量を減らし、サーバーの消費電力を抑えるための軽量なデザインや効率的なコーディングが重要視されるようになる。具体的には、画像や動画の最適化、効率的なCSSやJavaScriptの記述、グリーンホスティングサービスの選択などが挙げられる。これは、単にデザインの問題ではなく、システム全体のアーキテクチャや運用にまで関わる、システムエンジニアが積極的に取り組むべき課題である。
最後に、ローコード・ノーコードツールの進化も無視できないトレンドだ。これらのツールが普及することで、デザインと実装の境界線が曖昧になり、非技術者でも高品質なウェブサイトを構築できるようになる。しかし、システムエンジニアの役割がなくなるわけではない。むしろ、これらのツールでは実現できない複雑な機能や、大規模なシステム連携、高度なパフォーマンス最適化など、より専門的で複雑な課題を解決する能力が求められるようになる。また、ローコード・ノーコードツールで作成されたウェブサイトのセキュリティやスケーラビリティを評価し、必要に応じてカスタマイズや拡張を行う知識も重要となる。
システムエンジニアがこれらのウェブデザインのトレンドを理解し、その背後にある技術や考え方を学ぶことは、単にフロントエンドの知識を深めるだけでなく、ユーザーセントリックな視点を持ってシステム全体を設計する能力を養うことに繋がる。デザインと技術は常に密接に連携しており、両方の知識を持つことで、より革新的で持続可能なシステムを開発する力が身につくのだ。