【ITニュース解説】Keeping Your AI Agents Under Control: Tool Max Tries in Neuron V2
2025年09月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「Keeping Your AI Agents Under Control: Tool Max Tries in Neuron V2」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
PHP用AIフレームワーク「Neuron V2」は、AIが処理を無限に繰り返す問題を解決する新機能「Tool Max Tries」を導入。各処理の試行回数に上限を設けることで、リソースの浪費やコスト増大を防ぎ、AIエージェントを安定稼働させる。
ITニュース解説
AI(人工知能)を活用した「AIエージェント」というプログラムが注目されている。これは、ユーザーからの指示に基づき、特定のタスクを自律的に実行する賢いプログラムのことである。例えば、注文番号を伝えると自動で配送状況を調べてくれたり、スケジュールを調整してくれたりする。このようなAIエージェントは、多くの場合、外部のサービスやデータベースと連携して機能を実現する。その連携の手段として「API」という、プログラム同士が情報をやり取りするための接続口が使われる。しかし、この便利なAIエージェントには、運用時に深刻な問題を引き起こす落とし穴が存在する。それが「無限ループ」である。
無限ループとは、プログラムが特定の処理を意図せず延々と繰り返してしまう状態を指す。AIエージェントの文脈では、これが特に起こりやすい。例えば、顧客の注文状況を追跡するAIエージェントを考えてみよう。このエージェントは、「GetOrderStatus」という、注文情報を取得するためのツール(機能)を持っている。このツールは、社内の在庫管理システムのAPIを呼び出して情報を取得する設計になっている。通常時は問題なく動作するが、もし在庫管理システムが一時的なサーバーダウンやメンテナンスでエラーを返してきたらどうなるだろうか。AIエージェントは、エラーが発生した原因を正確に理解できず、「一度失敗しただけだから、もう一度試せば成功するかもしれない」と判断し、再び同じAPIを呼び出してしまうことがある。そして、システムが復旧しない限り、この呼び出しを際限なく繰り返してしまうのだ。これが無限ループの正体である。この状態は単に迷惑なだけでなく、実害を伴う。AI、特に大規模言語モデル(LLM)と呼ばれる頭脳部分の利用には、処理量に応じた費用が発生する。この費用は「トークン」という単位で計算されるが、無限ループによってAPI呼び出しが繰り返されると、トークンが大量に消費され、想定外の高額な請求につながる危険性がある。さらに、ユーザーは応答が返ってこないまま待たされ続け、サービスへの信頼を失ってしまう。
この深刻な問題を解決するため、PHP言語でAIアプリケーションを開発するためのフレームワーク「Neuron V2」に、「Tool Max Tries」という新しい機能が導入された。これは、AIエージェントが暴走しないように制御するための、シンプルかつ非常に効果的な安全装置である。その仕組みは、AIエージェントが使用する個々のツール(機能)に対して、呼び出し回数の上限を設定するというものだ。先ほどの注文状況追跡エージェントの例で言えば、「GetOrderStatus」ツールの呼び出しは「最大3回まで」といった制限をあらかじめ設けておくことができる。これにより、連携先のAPIがエラーを返し続けても、エージェントは3回試行した時点で処理を諦め、無限ループに陥るのを防ぐことができる。
この機能の設定方法は柔軟に設計されている。まず、エージェント全体に対して「すべてのツールの試行回数は最大5回まで」というように、共通のルールを設定することができる。これに加えて、特定のツールだけ個別に上限回数を変更することも可能だ。例えば、エラーが起こりやすい外部のWebサービスと連携するツールには試行回数を3回に設定し、一方で、内部で完結する単純な計算ツールには1回しか試行させない、といったように、ツールの特性に応じて細かく制御できる。もし個別の設定があれば、そちらが全体設定よりも優先される。そして、設定した上限回数に達してしまった場合、プログラムは「ToolMaxTriesException」という種類のエラー通知(例外)を発生させる。開発者はこのエラー通知を検知し、「現在、関連サービスが一時的に利用できません。時間をおいて再度お試しください」といったメッセージをユーザーに表示するなど、状況に応じた適切な処理を実装することができる。これにより、システムが完全に停止することなく、ユーザーに状況を伝え、会話を正常に継続させることが可能になる。
AIエージェントのような複雑なシステムを開発し、安定して運用していくためには、このような暴走防止の仕組みだけでなく、内部の動作を監視する仕組みも不可欠である。AIエージェントの処理は、内部で大規模言語モデルの呼び出し、ツールの使用、データベースへのアクセスなど、多数のステップが連鎖的に実行されるため、外側から見ると何が起きているのか分かりにくい。問題が発生した際に、「エージェントがどのような判断を下し、どのツールを呼び出し、どこで失敗したのか」を正確に追跡できなければ、原因の特定や修正は困難を極める。この課題に対応するため、Neuron V2は「Inspector」という監視ツールと連携する機能を提供している。このツールを導入すると、AIエージェントの全活動が時系列で記録・可視化される。これにより、開発者は各処理にかかった時間、実行された命令、発生したエラーなどを一目で把握でき、デバッグやパフォーマンスの改善を効率的に行うことができる。信頼性の高いAIアプリケーションを構築するためには、エラーを未然に防ぐ仕組みと、発生した問題を迅速に解決するための可視化の仕組み、その両方が重要な役割を果たすのである。