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【ITニュース解説】AI Reasoning Is Fake — Large Language Models Are Just Expensive Autocomplete

2025年09月08日に「Medium」が公開したITニュース「AI Reasoning Is Fake — Large Language Models Are Just Expensive Autocomplete」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

大規模言語モデル(LLM)は、人間のように思考や推論をしているわけではない。その本質は、統計パターンから次に来る単語を予測する、非常に高価で大規模な「オートコンプリート(自動補完)」機能だという指摘。

ITニュース解説

近年、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)の進化は目覚ましく、人間と自然な対話を行ったり、複雑な文章を生成したりする能力は多くの人々を驚かせている。その流暢な応答から、AIが人間のように物事を理解し、論理的に「推論」しているかのように感じられることも少なくない。しかし、その内部の仕組みを深く見ると、AIの能力は真の思考や理解とは異なり、本質的には非常に高度で大規模な「オートコンプリート」、つまり次に来る単語を予測する機能の延長線上にあるという指摘がある。この視点は、AI技術の可能性と限界を正しく理解する上で極めて重要である。

この主張を裏付ける象徴的な例として、あるユーザーがAIに行った質問が挙げられる。まず、「これまでに月面を歩いた人間は何人いるか?」と尋ねると、AIは「12人です」と正確に回答した。次に、「その12人の名前を教えて」という要求にも、アポロ計画の宇宙飛行士12名の名前を正確にリストアップして見せた。ここまでは、AIが事実を正確に記憶し、理解しているように見える。しかし、最後に「その中でニール・アームストロングは何番目に月面を歩いたか?」と尋ねたところ、AIは「11番目です」と誤った回答をした。正解は、人類で最初に月面に降り立った人物として有名な「1番目」である。この一連のやり取りは、LLMの動作原理を理解する上で重要な示唆を与えてくれる。

なぜこのような間違いが起きるのか。それは、LLMが人間のように事実を論理体系として理解しているのではなく、学習した膨大なテキストデータの中に存在する単語のつながりやパターンを、統計的な確率に基づいて再現しているからに他ならない。「月面を歩いた12人の宇宙飛行士」という情報は、インターネット上の多くの文書にリストとして存在するため、AIはそれを正確に記憶し、出力することができる。しかし、「ニール・アームストロングがそのリストの1番目である」という特定の順序に関する情報は、単なるリストの存在に比べて、文脈的な特殊性が高い。AIは「ニール・アームストロング」と「アポロ11号」という単語の強い関連性を学習しているが、その情報と「1番目」という順序情報を正しく結びつけて論理的に回答するのではなく、学習データ全体の統計的なパターンから最もそれらしい単語の並びを生成しようとする。その結果、何らかの別のパターンに影響され、誤った答えを生成してしまったと考えられる。

LLMの技術的な基盤は、主にTransformerアーキテクチャと呼ばれるモデルに基づいている。このモデルの中核をなすのが「自己注意(Self-Attention)」という仕組みであり、入力された文章の中のどの単語が他の単語と関連が深いかを計算し、文脈を捉える能力に優れている。LLMは、この仕組みを使い、インターネット全体から収集したような膨大な量のテキストデータを学習する。その学習方法とは、文章の一部を隠し、そこに当てはまる単語を予測するという作業を何十億、何兆回と繰り返すことである。このプロセスを通じて、モデルは文法、単語の意味、事実関係、さらには文章のスタイルといった、言語に関するあらゆるパターンを内部に蓄積していく。その結果、与えられた文脈に対して、統計的に最も可能性の高い次の単語、次の文章を予測し、生成することが可能になる。

この仕組みは、まさしくスマートフォンのキーボードなどで利用されるオートコンプリート機能の究極的な進化形と言える。我々が数文字入力すると次の単語の候補が表示されるように、LLMはより長く複雑な文脈を考慮して、次の単語を予測し続けることで、一見すると人間が書いたような自然な文章を生成するのである。この能力は非常に強力で、要約、翻訳、プログラミングコードの生成など、多岐にわたる応用を可能にしているが、その根底にあるのはあくまで確率的な予測であり、人間のような意識や意図、そして論理的な推論能力ではない。この性質は「確率的オウム」と表現されることもある。つまり、意味を理解せずに、聞いた言葉をそれらしく真似して返すオウムのように、LLMもまた、学習した膨大なテキストのパターンを確率的に模倣しているに過ぎないという見方である。

したがって、システムエンジニアを目指す者にとって、LLMは魔法の技術ではなく、その特性と限界を正確に把握すべきツールとして捉えることが不可欠である。LLMは驚くほど有用なアシスタントになり得るが、その出力は常に正しいとは限らず、事実に基づかない情報(ハルシネーション)を生成することもある。そのため、LLMが生成した情報やコードを鵜呑みにせず、必ず検証やファクトチェックを行う必要がある。この「高価なオートコンプリート」という本質を理解することで、AIを過度に擬人化することなく、その強みを最大限に活用し、弱点を補うようなシステム設計や開発アプローチを考えることができるようになるだろう。

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