【ITニュース解説】From MostereRAT to ClickFix: New Malware Campaigns Highlight Rising AI and Phishing Risks

2025年09月09日に「The Hacker News」が公開したITニュース「From MostereRAT to ClickFix: New Malware Campaigns Highlight Rising AI and Phishing Risks」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

新たなマルウェア「MostereRAT」がフィッシング攻撃で拡散。検知を回避する高度な技術でPCに侵入し、遠隔操作で完全に制御する。機密情報を盗むだけでなく、プラグインで機能拡張も可能であり、警戒が必要だ。(110文字)

ITニュース解説

サイバーセキュリティの世界では、攻撃者が常に新しい技術を駆使して防御を突破しようとする、絶え間ない攻防が繰り広げられている。近年、特に注意が必要な脅威として、AI技術を悪用したフィッシング詐欺と、それによって配布される高性能なマルウェアが挙げられる。最近報告された「MostereRAT」と呼ばれるマルウェアを用いた攻撃キャンペーンは、まさに現代のサイバー攻撃の巧妙さと危険性を象徴する事例である。

MostereRATは、もともとインターネットバンキングの認証情報などを盗み出すことを目的とした「バンキングマルウェア」として開発された。しかし、その後の進化により、攻撃者が感染したコンピュータを遠隔から自由に操作できる「リモートアクセス型トロイの木馬(RAT)」としての強力な機能を持つに至った。トロイの木馬とは、一見すると無害なソフトウェアやファイルに見せかけてコンピュータに侵入し、内部から破壊活動や情報窃取を行うマルウェアの一種である。RATは、その中でも特に悪質で、攻撃者はまるで自分の手元にあるコンピュータのように、感染した端末を遠隔で操作することが可能になる。具体的には、キーボードの入力内容を記録してパスワードを盗んだり、ファイルを外部に送信したり、ウェブカメラを起動して盗撮したりと、あらゆる操作ができてしまう。

この危険なMostereRATが拡散される主な手口は、「フィッシングキャンペーン」である。フィッシングとは、実在する企業や公的機関などを装った偽の電子メールやSMSを送りつけ、受信者をだまして悪意のあるウェブサイトへ誘導したり、マルウェアが仕込まれた添付ファイルを開かせたりする攻撃手法だ。今回のキャンペーンで使われるフィッシングメールは非常に巧妙に作られており、受信者が疑いを持つことなく指示に従ってしまうように設計されている。例えば、業務連絡や請求書、荷物の配送通知などを装い、緊急性や重要性を煽ることで、冷静な判断力を奪う。

さらに、MostereRATが厄介なのは、セキュリティソフトによる検知を逃れるための「高度な回避技術」を多数搭載している点である。システムエンジニアが構築・運用するセキュリティシステムは、不審なプログラムや通信を検知してブロックする役割を持つが、攻撃者はそれを逆手にとる。例えば、マルウェアが解析用の仮想環境(サンドボックス)で実行されていることを察知すると、本来の悪意ある活動を停止し、無害なプログラムのように振る舞うことで解析の目をごまかす。また、プログラムのコード自体を暗号化したり複雑にしたりする「難読化」という技術を使い、アンチウイルスソフトがマルウェアの特徴をスキャンしにくくする。このように、幾重にも施された回避技術によって、MostereRATは静かにシステム内部へ侵入し、潜伏することができるのである。

一度システムへの侵入に成功した攻撃者の目的は、侵害したコンピュータの完全な制御と、そこにある機密情報の窃取である。個人の認証情報やクレジットカード情報はもちろんのこと、企業ネットワークに侵入した場合は、顧客データ、設計図、財務情報といった重要な経営資源が根こそぎ盗まれる危険性がある。さらに、MostereRATは「セカンダリプラグイン」と呼ばれる仕組みを持ち、攻撃者が後から自由に追加機能(モジュール)を送り込めるようになっている。これにより、当初は情報窃取が目的だった攻撃が、データを暗号化して身代金を要求するランサムウェア攻撃に発展したり、他のシステムへの攻撃を踏み台として利用されたりするなど、被害が際限なく拡大する可能性がある。

ニュースのタイトルにもあるように、こうした攻撃の背後にはAI技術の悪用という側面も見え隠れする。AIを利用することで、文法的に自然で、標的の興味を引くような説得力のあるフィッシングメールの文面を、人間が作成するよりもはるかに高速かつ大量に生成できるようになった。これにより、従来の見分けやすかった不自然な日本語のフィッシングメールは減少し、見破ることが一層困難になっている。

このような高度化したサイバー攻撃は、システム開発や運用に携わるシステムエンジニアにとって、決して他人事ではない。単に機能するシステムを構築するだけでなく、設計段階からセキュリティを考慮し、外部からの脅威にいかにして耐えるかを考える「セキュリティ・バイ・デザイン」の思想が不可欠となる。MostereRATのような攻撃手法を理解することは、どのような経路で侵入され、どのような被害が発生しうるかを具体的に想定し、ファイアウォールの設定、アクセス制御、監視体制の強化といった適切な防御策を講じるための基礎知識となる。現代のサイバー攻撃は、単一の技術で防ぎきることは難しい。そのため、攻撃者の手口を常に学び、多層的な防御と継続的な改善を実践していく姿勢が、これからのシステムエンジニアには強く求められる。

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