【ITニュース解説】Understanding BEM as a CSS Methodology for Modern Web Development
2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Understanding BEM as a CSS Methodology for Modern Web Development」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
BEMは、Webページの見た目を決めるCSSの「名前の付け方ルール」だ。「Block」「Element」「Modifier」の3つで区別することで、CSSの衝突を防ぎ、コードを再利用しやすく、大人数での開発でも分かりやすく管理できる。初心者向けのCSS設計手法だ。
ITニュース解説
Webサイトやアプリケーションを開発する際、見た目を制御するCSSは非常に重要だ。しかし、プロジェクトが大規模化し、複数の開発者が関わるようになると、CSSのコードは複雑になりがちで、管理が難しくなる。スタイルが互いに影響し合ったり、変更が予期せぬ場所で問題を引き起こしたりすることは珍しくない。このような課題に直面する中で、CSSのコードをより整理し、再利用しやすく、保守しやすい状態にするための手法として注目されているのがBEM(Block Element Modifier)だ。
BEMは、CSSのクラス名に特定のルールを設けることで、スタイルシートの構造を明確にし、開発の効率と品質を高めることを目的とした命名規則である。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、BEMを理解することは、将来、Web開発の現場でクリーンで拡張性の高いコードを書く上で大きな助けとなるだろう。
BEMは、「Block(ブロック)」「Element(要素)」「Modifier(修飾子)」という三つの主要な概念に基づいてクラス名を構成する。
まず「ブロック」は、Webページ上でそれ自体が独立した意味を持つ部品のことだ。例えば、Webサイトのヘッダー、メニュー、ボタン、情報を表示するカードなどがブロックに該当する。ブロックは他の部分から独立して存在し、どこにでも配置できる再利用可能なコンポーネントとして設計される。CSSでは、.card のように、その部品の名前を直接クラス名とする。
次に「要素」は、特定のブロックの一部であり、単独では意味を持たず、必ずそのブロックとセットで機能するものを指す。例えば、「カード」ブロックの中の「タイトル」や「フッター」は要素となる。要素のクラス名は、所属するブロック名と二重アンダースコア(__)で区切って命名する。例えば、「カード」ブロック内の「タイトル」であれば .card__title となる。これにより、クラス名を見ただけで、その要素がどのブロックの一部であるかが明確にわかる。
そして「修飾子」は、ブロックや要素の見た目、状態、または挙動を変更するための目印となるものだ。例えば、同じ「ボタン」ブロックでも、デザインを大きくしたい場合や、特定の色に変えたい場合、あるいはアクティブな状態を示したい場合などに修飾子を使う。修飾子のクラス名は、修飾したいブロックまたは要素の名前と二重ハイフン(--)で区切って命名する。例えば、「大きく」したい「ボタン」には .button--large、「特徴的な」カードには .card--featured といった形だ。要素にも修飾子を適用でき、例えば「中央寄せ」の「タイトル」であれば .card__title--centered のようになる。
これらの命名規則に従うことで、CSSのクラス名が非常に自己説明的になる。.card と見れば独立したカード部品、.card__title と見ればそのカードのタイトル部分、.card--featured と見れば特徴的なカードの状態を指していることが、コードを読むだけで瞬時に理解できる。これは、コードの可読性を大幅に向上させ、新しい開発者がプロジェクトに参加した際も、既存のCSSの構造を素早く把握する手助けとなる。
BEMを導入することには、多くの具体的な利点がある。クラス名が明確な構造を持つため、コードの「可読性」が非常に高まる。各ブロックが独立しているため、Webサイト内の様々な場所で同じ部品を繰り返し使える「再利用性」が向上する。また、ある部分のスタイルを変更しても他の部分に予期せぬ影響を与えにくく、コードの「保守性」が向上する。BEMの命名規則は、CSSのスタイルが互いに競合し、意図しない上書きが発生するのを防ぐ効果があり、これは「CSS衝突の回避」に直結する。そして、チーム全体で一貫した命名規則を使うことで、「チームでの共同作業」がスムーズに進むようになる。
BEMはCSSの「命名規則」や「設計思想」であり、Tailwind CSSやSass/Lessといったツールとは異なる役割を持つ。Tailwind CSSは、text-xl や bg-white のように、それぞれが特定のスタイル(文字サイズを大きくする、背景色を白にするなど)を適用する多数の小さなユーティリティクラスを組み合わせてデザインを構築する「ユーティリティファースト」のフレームワークだ。一方、BEMは意味のあるコンポーネント単位でクラス名を作り、個別にスタイルを定義する。この点で両者の思想は大きく異なる。SassやLessは、CSSに変数を定義したり、スタイルをネストして記述できる機能を追加する「CSSプリプロセッサ」だ。これらはBEMとは異なり命名規則を強制するものではないが、BEMの命名規則と組み合わせて使うことで、より効率的にBEM構造のCSSを記述することが可能となる。例えばSassでは、.card { &__title {} } のようにネストを使って、ブロックと要素の関係をより簡潔に表現できる。
BEMを効果的に運用するためには、いくつかのベストプラクティスと避けるべき落とし穴がある。まず、要素を過度にネストすることは避けるべきだ。例えば、.card__header__title__text のように要素を深く入れ子にすると、BEMのシンプルさが失われる。要素は原則としてブロックの直接の子であるか、その直下の要素を指すように命名すべきだ。また、意味のない要素名、例えば .card__div のような汎用的な名前ではなく、.card__content や .card__actions のようにその役割が明確にわかる名前を付けるべきである。修飾子の命名には一貫性を持たせ、「大きい」を意味するなら常に .button--large のように統一する。さらに、一つのコンポーネント内でBEMのクラス名と、BEMのルールに従わないクラス名を混在させることは、コードの理解を妨げるため避けるべきである。
CSSファイルの整理方法も重要だ。一般的には、styles/components/_card.scss のようにコンポーネントごとにファイルを分けるか、styles/blocks/card/_card.scss のようにブロックごとにディレクトリを作成し、その中にブロックと修飾子のファイルを配置する「ブロック中心」のアプローチが推奨される。BEMはコンポーネントレベルのスタイル管理に非常に有効だが、Webサイト全体に適用される基本的なフォント設定やリセットCSSなどは、BEMのルールとは別に「グローバルスタイル」として管理し、両者を適切に組み合わせることで、一貫性と管理のしやすさを両立できる。
パフォーマンスの観点では、BEMのクラス名は長く見えがちだが、本番環境ではCSSの圧縮や未使用のCSSを削除するツールを用いることでファイルサイズを最適化できる。また、BEMは自然と「低い特定性」を持つシンプルなCSSセレクタを生成する。これにより、スタイルの優先順位が分かりやすくなり、意図しない上書きが減少するため、Webページのレンダリングがより効率的になるというメリットがある。
チームでBEMを導入する際には、明確な「ドキュメント」を作成し、BEMの命名規則、新しいブロックの作成基準、修飾子の使用パターンなどをチームメンバー全員で共有することが重要だ。また、コードレビューの際にBEMのルールが守られているかを確認する「チェックリスト」を用意すると効果的だろう。既存のプロジェクトにBEMを導入する場合は、コードベース全体を一気に変更するのではなく、まずは新しく開発するコンポーネントからBEMを適用し、徐々に既存のコードをリファクタリングしていく「段階的な導入」が現実的でスムーズな移行を促す。
BEMは、単なるCSSの命名規則にとどまらず、Web開発において保守性と拡張性の高いスタイルシートを構築するための強力なフレームワークを提供する。最初はクラス名が長く感じられ、慣れない部分もあるかもしれないが、プロジェクトの規模が大きくなるにつれて、そのメリットは明らかになるだろう。BEMの核心は、厳密な構文の遵守だけでなく、クラス間に論理的で意味のある関係性を築き、一貫したルールを適用することにある。Web開発の技術が進化し続ける現代において、BEMが提唱するモジュール性、明確さ、保守性といった原則は、常に価値あるものとして評価され続けるだろう。BEMを完全に導入するか、その一部の考え方を取り入れるかにかかわらず、この方法論を理解することは、将来のシステムエンジニアとして、より質の高いWeb開発を行うための重要な一歩となるはずだ。チームが一致団結して一貫したルールでCSSを書き、それを長期的に維持できることが、最も優れたCSSアーキテクチャであるということを忘れてはならない。