【ITニュース解説】Don’t Fear the Command Line

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Don’t Fear the Command Line」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

コマンドラインは難しそうに見えるが、システムエンジニアを目指すなら怖がる必要はない。いくつかの基本コマンドを覚えれば、プロジェクトのセットアップやスクリプト実行が効率的に行えるようになる。慣れるとGUIより高速で便利なので、積極的に使ってみよう。

出典: Don’t Fear the Command Line | Dev.to公開日:

ITニュース解説

システムエンジニアを目指す多くの初心者は、黒い画面に白い文字が並ぶ「コマンドライン」というものに、最初強い抵抗を感じるかもしれない。ボタンもメニューもなく、まるで謎の呪文を打ち込むかのように見えるそのインターフェースは、確かに威圧的だ。しかし、今回の記事が力強く語るように、コマンドラインは決して恐れるべきものではない。むしろ、少しの基本を学ぶだけで、開発作業の効率を劇的に高め、システムエンジニアとしての能力を大きく広げてくれる強力なツールとなる。

コマンドラインとは、コンピューターに対してキーボードから直接命令を入力して操作する仕組みのことだ。普段私たちが使っているスマートフォンやパソコンは、マウスでアイコンをクリックしたり、指で画面をタップしたりして操作する「グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)」が主流だ。これに対して、コマンドラインは「キャラクターユーザーインターフェース(CUI)」とも呼ばれ、文字によるコマンド(命令)を使ってファイルやフォルダの操作、プログラムの実行などを行う。一見すると難しそうだが、この文字ベースの操作こそが、開発者にとって大きなメリットをもたらす。

GUIでは、目的の操作のために複数のメニューを開いたり、ウィンドウを切り替えたりする必要がある場合がある。しかし、コマンドラインなら、一つの命令文を入力するだけで、瞬時に目的の操作を完了できることが多い。これは、特に複雑な作業や繰り返し行う作業において、圧倒的な速度と効率の差を生み出す。また、コマンドラインでの操作は、GUIのようにマウスカーソルの位置やクリックのタイミングに依存しないため、より正確で再現性の高い作業を可能にする。プログラムを自動で実行する「スクリプト」を作成する際にも、コマンドラインの命令が不可欠となる。システムエンジニアとして、日々の開発作業やサーバー管理を行う上で、コマンドラインの知識は避けて通れない、まさに基礎体力のようなものだ。

記事では、コマンドラインを学ぶ上で、ほんの一握りの基本的なコマンドを習得するだけで良いと強調している。決してLinuxの熟練者になる必要はなく、フォルダ間の移動やプログラムの実行、そして簡単な問題解決ができる程度の知識で十分なのだ。具体的には、次の四つのコマンドから始めるのが良いだろう。

まず「cd project-folder」というコマンドは、現在のフォルダから別のフォルダへ移動する際に使う。「cd」は「Change Directory(ディレクトリを変更する)」の略で、その後ろに移動したいフォルダの名前を指定する。例えば「cd my_project」と入力すれば、「my_project」というフォルダの中に移動できる。これで、ファイルやプログラムが格納されている場所へ素早くアクセスできる。

次に「ls」またはWindows環境では「dir」というコマンドは、現在自分がいるフォルダの中身、つまりどのようなファイルやサブフォルダがあるかを表示する。例えば、新しいプロジェクトフォルダに移動した後でこのコマンドを使えば、そこにどのようなコードファイルがあるのかを一覧で確認できる。視覚的なGUIのファイルエクスプローラーのように、フォルダ内の構成を文字で把握する手段となる。

そして「npm install」というコマンドは、特にWeb開発で頻繁に利用される。多くのプロジェクトは、他の開発者が作成した便利な機能やツール(これを「依存関係」と呼ぶ)を利用している。例えば、特定のUIコンポーネントライブラリやテストツールなどがこれにあたる。「npm」は「Node Package Manager」の略で、JavaScriptのプロジェクトにおける依存関係を管理するツールだ。「npm install」を実行すると、プロジェクトが必要とするこれらの依存関係が自動的にダウンロードされ、開発環境に準備される。これにより、開発者は個々の依存関係を手動で探してインストールする手間から解放される。

最後に「git status」は、バージョン管理システムであるGitの状態を確認するためのコマンドだ。システムエンジニアの仕事において、Gitは複数の開発者と協力してコードを管理したり、過去の変更履歴を追跡したりするために不可欠なツールである。「git status」を実行すると、現在作業中のブランチは何か、どのようなファイルが変更されたのか、まだGitに記録されていない変更があるか、といったプロジェクトの変更状況を瞬時に把握できる。これにより、変更の漏れや意図しない変更を防ぎ、常にプロジェクトの状態を正確に把握しながら作業を進めることができる。

これらの基本的なコマンドが、どのように実世界の開発現場で使われるのか、具体的な例を見てみよう。例えば、あなたがGitHubから既存のプロジェクトのコードを自分のパソコンにダウンロードして、すぐに動かしたい場合を想像してほしい。

まず、「git clone https://github.com/username/project.git」と入力する。このコマンドは、指定されたURLにあるGitHub上のプロジェクトの全コードを、自分のパソコンにコピー(クローン)する。

次に、クローンしたばかりのプロジェクトのフォルダの中に移動する必要がある。ここで「cd project」と入力する。これで、ダウンロードしたコードが格納されているフォルダに移動できる。

プロジェクトフォルダに入ったら、そのプロジェクトが動作するために必要な依存関係をインストールする。「npm install」を実行する。これで、プロジェクトが参照している外部ライブラリなどが全て自動的に設定される。

最後に、プロジェクトを起動する。「npm start」と入力すれば、多くのWebプロジェクトで開発サーバーが立ち上がり、ブラウザでアプリケーションが動作するようになる。

わずかこれら四つのコマンドを順に実行するだけで、あなたはGitHubからコードをダウンロードし、必要なツールを準備し、そしてアプリケーションを起動させるという一連の複雑な作業を完了できる。GUIを使って同様の作業を行おうとすれば、ブラウザでGitHubのページを開き、ダウンロードボタンを探し、ダウンロードしたファイルを解凍し、その中のフォルダを探し、さらにプロジェクトのセットアップに関する手順書を読んで、個別にツールをインストールし、実行ファイルをダブルクリックする、といった多くのステップが必要になるかもしれない。コマンドラインでは、そのような手間が一切ない。指示されたコマンドを打ち込むだけで、速やかに、そして確実に作業が進む。これは、開発者にとっての「スピード」と「効率」の象徴とも言える。

もちろん、最初からすべてのコマンドを完璧に覚える必要はない。むしろ、まずは少数の基本的なコマンドから使い始め、少しずつ慣れていくことが重要だ。記事が伝えるように、コマンドラインは使えば使うほど、その威圧感が薄れ、やがては「クリック操作よりも速く、便利だ」と感じるようになるだろう。そして最終的には、まるで自分の手足のように自然に扱える「第二の天性」と化していくはずだ。

コマンドラインへの抵抗感を乗り越えることは、システムエンジニアとしての成長にとって大きな一歩となる。それは決して難解な魔法ではなく、効率的な作業を可能にするための実践的なスキルだ。新しいスキルを学ぶときには常に勇気が必要だが、コマンドラインに関して言えば、その学習曲線は見た目ほど急峻ではない。少しだけ学び、そして頻繁に練習すること。このシンプルなアプローチが、あなたのエンジニアとしての未来を大きく切り拓いてくれるだろう。恐れずに、一歩踏み出して、コマンドラインの世界を体験してほしい。

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