LIF(エルアイエフ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LIF(エルアイエフ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ライフ (ライフ)

英語表記

LIF (ライフ)

用語解説

LIFは、Logical Interfaceの略称であり、主にNetApp社のストレージOSであるONTAPで利用されるネットワークインターフェースの概念である。システムエンジニアがストレージネットワークを設計、構築、運用する上で非常に重要な要素となる。これは、物理的なネットワークポートとは独立して存在する、ソフトウェアによって定義された仮想的なネットワークインターフェースを指す。具体的には、サーバーなどのクライアントがストレージシステムにデータを読み書きするために接続する際の窓口となるIPアドレスを持つアクセスポイントである。物理的なネットワークポートがストレージ装置という建物に備え付けられた物理的なドアだとすれば、LIFはそのドアに設置された、特定の通信を受け付けるための仮想的な受付窓口に相当する。この仮想的な窓口は、必要に応じて別のドアへ瞬時に移動できるため、特定のドアが故障してもサービス提供が止まることがない、という大きな利点を持つ。LIFを理解することは、現代のストレージシステムが持つ高い可用性や柔軟性をどのように実現しているかを把握するための第一歩となる。

LIFのより詳細な仕組みを理解するためには、物理インターフェースとの関係性、役割、そしてその中心的な機能である可用性と移動性について掘り下げる必要がある。まず、ストレージ装置には、LANケーブルを接続するための物理的なネットワークポート、すなわちネットワークインターフェースカード(NIC)が存在する。LIFは、この物理ポート、あるいは複数の物理ポートを束ねて冗長性や帯域幅を向上させたLAG(Link Aggregation Group)といった論理的なポートグループの上に構成される。重要なのは、LIFと物理ポートは一対一の関係ではないという点である。一つの物理ポート上に複数のLIFを定義することも可能であり、IPアドレスや役割が異なる複数の仮想的な窓口を一つの物理的な出入り口に設けることができる。この柔軟性により、限られた物理リソースを効率的に活用することが可能となる。

LIFの主な役割は、クライアントからのデータアクセス要求を受け付けることである。クライアントは、LIFに割り当てられたIPアドレスを宛先として指定し、NFSやCIFS/SMBといったファイル共有プロトコル、あるいはiSCSIのようなブロックアクセスプロトコルを用いてストレージとの通信を行う。それぞれのプロトコル通信の終着点、つまりエンドポイントとして機能するのがLIFである。

LIFが持つ最も特筆すべき機能は、高可用性を実現するためのフェイルオーバー機能である。LIFが稼働している物理ポートやその先のネットワーク経路に障害が発生し、通信が不能になった場合、ストレージOSはその障害を検知し、LIFを自動的にあらかじめ設定された別の正常な物理ポートへ移動させる。この一連の動作がフェイルオーバーである。移動が完了すると、LIFは新しい物理ポート上で同じIPアドレスを用いて通信を再開する。この際、ネットワーク上の他の機器に対して、自身のIPアドレスと新しいMACアドレスの対応関係を通知する仕組みが働くため、クライアントは通信相手のIPアドレスを変更することなく、ごく短時間の中断の後、透過的に通信を継続できる。この仕組みによって、単一の物理ポートの故障がサービス全体の停止に繋がることを防ぎ、システム全体の可用性を劇的に向上させている。

この移動能力は、障害発生時だけでなく、管理者が意図的に実行することも可能であり、これをLIFマイグレーションと呼ぶ。例えば、特定の物理ポートにネットワーク負荷が集中している場合に、LIFを負荷の低い別のポートへ移動させてトラフィックを分散させたり、ネットワークスイッチのメンテナンスなどで物理ポートを計画的に停止させる必要があったりする場合に、事前にLIFを安全なポートへ退避させることができる。これにより、サービスを無停止で維持したまま、インフラのメンテナンスや構成変更を柔軟に行えるようになる。

さらに、LIFはStorage Virtual Machine(SVM)という概念と密接に関連している。SVMは、一つの物理ストレージクラスタを、論理的に複数の独立したストレージシステムであるかのように分割して利用するための機能である。LIFは必ずいずれか一つのSVMに所属する。例えば、社内の開発部門用SVMと営業部門用SVMを作成し、それぞれに専用のLIFを割り当てることで、各部門は完全に独立したネットワーク経路とストレージ領域を持つことができる。これにより、マルチテナント環境の実現や、部門間のセキュリティ境界の明確化が容易になる。LIFは、この仮想化されたストレージ環境における、それぞれのテナント専用のネットワーク玄関口として機能するのである。このように、LIFは単なるIPアドレスを持つインターフェースではなく、ストレージシステムの可用性、運用性、そして柔軟な仮想化を実現するための根幹をなす技術と言える。

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