【ITニュース解説】クラファン開始3日で約1.5億円を調達、中国発のARグラス「Rokid Glasses」とは

作成日: 更新日:

ITニュース概要

中国Rokid社のARグラス「Rokid Glasses」がクラウドファンディングで注目を集めている。現実世界にデジタル情報を重ねるメガネ型デバイスで、開始わずか3日で約1.5億円の資金調達に成功し、市場の高い期待を示した。(109文字)

ITニュース解説

現実世界にデジタル情報を重ねて表示するAR(拡張現実)技術は、近年急速に進化し、私たちの生活や仕事を変える可能性を秘めている。この分野で今、大きな注目を集めているのが、中国のスタートアップ企業Rokidが開発したARグラス「Rokid Glasses」である。この製品は、クラウドファンディングでプロジェクトを開始してからわずか3日間で約1.5億円もの資金調達に成功し、その期待の高さを示した。 Rokid Glassesが多くの支持を集めた最大の理由の一つは、そのデザインにある。従来のARデバイスは、大きく重たいヘッドセット型が主流であり、日常的に使用するには抵抗があった。しかし、Rokid Glassesは一見すると普通のサングラスと見間違えるほどスタイリッシュで、重量も非常に軽い。この「日常に溶け込むデザイン」が、ARグラスを特別なガジェットから普段使いのデバイスへと引き上げる可能性を感じさせ、多くのユーザーの心を掴んだのである。 その軽量な筐体には、最先端の技術が凝縮されている。まず、映像表示の核となるディスプレイには、ソニーセミコンダクタソリューションズ製のMicro-OLED(マイクロ有機EL)が採用されている。OLEDは、画素一つひとつが自ら発光するため、液晶ディスプレイのようにバックライトを必要としない。これにより、非常に高いコントラスト比、つまり黒の表現が引き締まり、色鮮やかで深みのある映像を実現できる。解像度は片目あたり1920×1200ピクセルと高く、高精細な映像を映し出すことが可能だ。 さらに重要なのが、リフレッシュレートと視野角である。リフレッシュレートとは、1秒間に画面が何回更新されるかを示す数値で、この値が高いほど映像の動きが滑らかになる。Rokid Glassesは最大120Hzという高いリフレッシュレートに対応しており、動きの速い映像やゲームでも残像感が少なく、快適な視聴体験を提供する。視野角(FoV)は50度で、これは装着者の視界に約6メートル先にある215インチ相当の巨大なスクリーンが浮かんでいるように見える体験をもたらす。映画館のような没入感を、いつでもどこでも手軽に味わえるのが大きな魅力だ。また、ディスプレイの輝度は最大600ニトあり、日中の明るい屋外環境でも映像の視認性が確保されている。 音響面にも工夫が凝らされている。テンプル(つる)の部分には指向性スピーカーが内蔵されており、音を装着者の耳に直接届ける仕組みになっている。これにより、イヤホンをしなくてもクリアな音声を聞き取れる一方で、周囲への音漏れは最小限に抑えられる。公共の場でも気兼ねなくコンテンツを楽しめるように配慮された設計である。 Rokid Glassesの使い方は非常にシンプルだ。本体から伸びるUSB Type-Cケーブルを、スマートフォンやPC、Nintendo Switchなどのゲーム機に接続するだけで、外部ディスプレイとして機能する。特別なソフトウェアのインストールや複雑な設定は不要で、デバイスを接続すればすぐに目の前に大画面が広がる。出張先のホテルでPC作業のサブモニターとして使ったり、移動中の新幹線で映画を楽しんだりと、様々な場面でその利便性を発揮する。 さらに、Rokidはエコシステムの拡充にも力を入れている。「Rokid Station 2」というAndroidベースのコンパニオンデバイスが用意されており、これを使えばスマートフォンなどを介さずに、単体で動画配信サービスのアプリケーションなどを利用できる。Rokid Station 2はメディアハブでありながら、リモコンとしても機能するため、より快適なコンテンツ視聴が可能となる。また、スマートフォンに専用アプリ「Rokid AR」をインストールすれば、スマートフォン自体をタッチパッドのように使ってポインター操作を行うこともできる。 このように、Rokid Glassesは洗練されたデザイン、高品質な映像体験、そして手軽な接続性を兼ね備えることで、ARグラスの普及を大きく前進させる可能性を秘めたデバイスと言える。単に映像を視聴するだけでなく、将来的にはナビゲーションや情報検索、翻訳など、AR技術を活用した様々なアプリケーションが登場することも期待される。システム開発の観点からも、このような新しいヒューマン・マシン・インターフェースは、新たなサービスやビジネスを生み出す土壌となるだろう。Rokid Glassesの成功は、AR技術がコンシューマー市場で本格的に受け入れられ始める転換点の一つとなるかもしれない。

【ITニュース解説】クラファン開始3日で約1.5億円を調達、中国発のARグラス「Rokid Glasses」とは