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【ITニュース解説】Our Database Migration That Lasted 36 Hours — And Why

2025年09月12日に「Medium」が公開したITニュース「Our Database Migration That Lasted 36 Hours — And Why」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

1時間の予定で2回リハーサルも成功したデータベース移行作業が、実際には36時間もかかってしまった。なぜ計画通り進まず長時間化したのか、その原因と背景を解説する記事。

ITニュース解説

システムにおいてデータベースは情報を保存する非常に重要な場所である。アプリケーションが動くために必要なあらゆるデータ、例えばユーザー情報や商品の在庫、取引記録などがここにある。このデータベースを、性能の良いものにしたり、新しい機能が使えるバージョンにしたり、あるいは古いシステムから新しいシステムへ移し替えたりする作業を「データベース移行」と呼ぶ。この作業はシステムの根幹に触れるため、非常に慎重に行われる必要がある。

今回の事例は、計画では1時間で完了し、サービスを停止させない「ゼロダウンタイム」での移行を目指したにもかかわらず、実際には36時間もの時間がかかってしまったという話である。ゼロダウンタイムとは、移行中もユーザーがサービスを使い続けられるように、システムを一時停止させないことを意味する。これは、大規模なサービスや、24時間365日稼働が求められるシステムにとって、非常に重要な目標となる。移行作業が長時間にわたってサービス停止を引き起こせば、ビジネスに甚大な影響を与える可能性があるからだ。

このチームは、移行を成功させるために綿密な計画を立てた。具体的な計画としては、新しいデータベースを準備し、既存のデータベースから新しいデータベースへデータをリアルタイムで同期させる「レプリケーション」という技術を利用する。これにより、移行中もデータの一貫性を保ちながら、最終的にアプリケーションの接続先を新しいデータベースへ切り替えることで、サービス停止を最小限に抑えようとした。さらに、計画の正しさを確認するため、2回のリハーサルを実施した。リハーサルでは、本番環境に近い条件で移行手順を試し、問題がないことを確認する。ダッシュボードが「グリーン」であったという記述は、システムの監視ツールが正常な状態を示していたことを意味する。つまり、リハーサルは問題なく成功し、本番移行への自信を深めていたわけだ。

しかし、いざ本番の移行作業に取り掛かると、予期せぬ問題が次々と発生し、当初1時間の予定だった作業は36時間にも及ぶ長期戦となってしまった。この事態を引き起こした主な原因として、いくつかの点が考えられる。

まず、最も大きな問題の一つは「レプリケーションの遅延」だった。レプリケーションとは、元となるデータベース(マスター)のデータを、新しいデータベース(スレーブ)へ複製し続ける仕組みのことだ。これにより、マスターでデータが更新されると、その変更がスレーブにもリアルタイムで反映される。しかし、今回のケースでは、マスターデータベースに発生する大量の書き込み処理が、スレーブへのデータ同期速度を上回ってしまい、スレーブ側のデータがマスターに比べて大幅に遅れてしまう事態が発生した。例えば、マスターが1秒間に1000件のデータを書き込んでいるのに、スレーブが1秒間に500件しか処理できないような状況だ。この遅延が発生すると、新旧のデータベース間でデータに差異が生じてしまうため、アプリケーションを新しいデータベースに切り替えることができない。データに整合性がなければ、ユーザーは間違った情報を見たり、システムが正しく動作しなかったりする可能性があるからだ。この遅延の原因としては、レプリケーションの帯域幅不足、スレーブ側のディスクI/O性能不足、あるいはレプリケーション設定の最適化不足などが考えられる。

次に、データベースの「バージョン間の非互換性」も問題だった可能性がある。新しいデータベースのバージョンが古いデータベースのバージョンとわずかに異なる場合、データの扱いやクエリの実行方法に微妙な違いが生じることがある。リハーサル環境では顕在化しなかったこれらの非互換性が、本番環境の大量のデータや複雑なクエリの組み合わせによって表面化し、レプリケーションの遅延や、移行後のアプリケーション動作の異常を引き起こしたのかもしれない。

さらに、アプリケーションからの「接続問題」も考えられる。新しいデータベースへの切り替えは、アプリケーションの設定ファイルを変更し、データベースの接続先を書き換えることで行われる。この設定変更が正しく行われなかったり、新しいデータベースのアクセス権限の設定が不十分だったり、あるいはアプリケーションが新しいデータベースへの接続時に予期せぬエラーを起こしたりする可能性もある。特に、アプリケーション側が大量の接続を同時に試みる場合、新しいデータベースがその負荷に耐えきれず、応答が遅延したり、接続を拒否したりすることもある。

これらの問題が複合的に発生し、かつ問題の特定と解決に時間がかかったことが、移行作業が36時間という長期間に及んだ主な理由である。リハーサルは成功していたにもかかわらず、本番で問題が発生したのは、リハーサル環境が本番環境の全てを再現できていなかったことが原因として大きい。例えば、リハーサル環境では本番と同等のデータ量や同時アクセス数をシミュレーションできていなかった、あるいはリハーサル環境のハードウェアスペックが本番より劣っていた、といったことが考えられる。本番環境で実際に稼働しているアプリケーションからのデータ書き込み量や参照頻度は、リハーサル環境での想定をはるかに超えることが多いため、テストだけでは見つけられない問題が存在するのだ。

この事例からシステムエンジニアを目指す初心者が学ぶべき教訓は非常に多い。まず、システム移行のような重要な作業においては、どれだけ準備を重ねても予期せぬ問題が発生する可能性があるという現実を受け入れる必要がある。そのため、単に成功計画を立てるだけでなく、「万が一問題が発生した場合にどうするか」という「緊急時対応計画」や「ロールバック計画」(元の状態に戻す計画)を具体的に準備しておくことが不可欠である。今回のケースでは、問題が起きた際にすぐにロールバックできる状態ではなかった、あるいはロールバックにかかる時間が非常に長かったため、問題解決に集中せざるを得なかった状況も考えられる。

次に、本番環境とテスト環境の差異を極力なくす努力が重要だ。ハードウェアのスペック、ネットワーク構成、データベースのパラメータ設定、そしてデータの量や種類など、可能な限り本番環境に近い状態をリハーサルで再現することで、本番でのリスクを減らすことができる。また、移行中の監視体制も徹底し、少しでも異常が見られたらすぐに検知し、原因を特定できるような体制を整えておく必要がある。ダッシュボードがグリーンだったからといって油断せず、より詳細なログやメトリクスを常に監視し、変化を察知する準備が求められる。

最後に、チーム内のコミュニケーションも極めて重要となる。問題発生時には、エンジニアだけでなく、プロジェクトマネージャー、ビジネス部門など、関係者全員に状況を正確に伝え、今後の対応について迅速に意思決定を行う必要がある。今回の36時間という長期のダウンタイムは、ビジネスに大きな影響を与えたはずであり、その間の情報共有や意思決定のプロセスも非常に重要だっただろう。

システムエンジニアとして、このような大規模なシステム移行に携わる際には、技術的な知識だけでなく、リスクマネジメント、計画性、問題解決能力、そしてコミュニケーション能力といった、幅広いスキルが求められることをこの事例は明確に示している。計画通りに進まないことを前提に、あらゆる可能性を考慮し、最悪の事態にも対応できる準備をしておくことこそが、成功への鍵となる。

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