【ITニュース解説】ニュースレタープラットフォームGhost(Pro)、ActivityPubへの対応をパブリックベータに
2025年03月18日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「ニュースレタープラットフォームGhost(Pro)、ActivityPubへの対応をパブリックベータに」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
ニュースレタープラットフォームGhost(Pro)が、分散型SNS連携プロトコルActivityPubへの対応をパブリックベータとして開始。これにより、Ghostで配信するコンテンツがMastodonなどのActivityPub対応サービスに直接連携・配信可能となる。ウェブコンテンツの自動的な拡散手段が増える技術的進歩だ。
ITニュース解説
ニュースレタープラットフォームのGhost(Pro)が、分散型ソーシャルネットワークのための通信規約であるActivityPubへの対応をパブリックベータとして開始したというニュースは、Webコンテンツの配信方法やソーシャルネットワークの未来を考える上で非常に重要な進展だ。このニュースを理解するために、いくつかの重要なキーワードについて詳しく見ていこう。
まず、「Ghost」とは何かについて説明する。Ghostは、主にブログやニュースレターの配信に特化したオープンソースのコンテンツ管理システム(CMS)である。WordPressなどと似ているが、よりシンプルで高速な動作を目指して設計されている点が特徴だ。執筆者がコンテンツ作成に集中できるよう、洗練されたエディタや、有料購読者向けのニュースレター機能などを提供している。ユーザーは自身のサーバーにGhostをインストールして無料で利用することもできるが、ニュースにある「Ghost(Pro)」とは、Ghostの開発元が公式に提供するマネージドサービスを指す。「マネージドサービス」とは、ユーザーが自分でサーバーを用意したり、ソフトウェアをインストールしたり、日々の運用・保守を行ったりする必要がなく、サービス提供元がそれらの面倒を全て見てくれるサービスのことである。利用者は月額料金を支払うだけで、Ghostの機能をすぐに使い始めることができる。プログラミングやサーバー構築の知識がなくても、Webサイトやニュースレターを簡単に公開できる点が大きなメリットだ。
次に、「ActivityPub」について説明する。これは、分散型ソーシャルネットワークのための通信プロトコル、つまり異なるWebサービス間で情報をやり取りするためのルールや手順を定めた規約である。現在私たちが利用している多くのソーシャルメディア(X旧Twitter、Facebookなど)は、特定の企業が運営する中央集権的なプラットフォームだ。これらのサービスでは、ユーザーのデータはすべてその企業が管理し、ユーザーはその企業のルールに従って利用することになる。これに対し、「分散型ソーシャルネットワーク」とは、特定の企業が全てを管理するのではなく、世界中に散らばる様々なサーバーがそれぞれ独立して運営され、それらがActivityPubのようなプロトコルを通じて相互に連携し合うネットワークのことだ。最も有名な例がMastodon(マストドン)だろう。Mastodonは、X(旧Twitter)に似たマイクロブログサービスだが、無数の独立したサーバー(インスタンスと呼ばれる)で構成されており、異なるインスタンスのユーザー同士でもフォローし合ったり、投稿を閲覧したりできる。ActivityPubは、このような分散型サービス間でユーザーの投稿や「いいね」、フォロー関係といった「アクティビティ」をスムーズにやり取りするための共通言語の役割を果たす。これにより、ユーザーは特定のプラットフォームに縛られることなく、自分のデータやフォロー関係を維持しやすくなるという利点がある。
では、Ghost(Pro)がActivityPubに対応したことによって何が変わるのだろうか。これまでGhostでニュースレターやブログ記事を公開した場合、読者はGhostのWebサイトを直接訪問するか、メールで配信されるニュースレターを読む必要があった。コンテンツをソーシャルメディアで共有するには、手動でURLを投稿するなどの手間がかかることが多かった。ActivityPubに対応することで、Ghostで作成されたコンテンツは、ActivityPubをサポートする他の分散型ソーシャルサービスとシームレスに連携できるようになる。具体的には、Ghostで新しい記事を公開すると、その情報がActivityPubを通じて自動的にMastodonなどのサービスに配信されるようになる。これは、Ghostのニュースレターの読者が、Mastodonのアカウントを通じてGhostの著者(記事を投稿した人)をフォローできるようになることを意味する。Mastodonユーザーは、自分のタイムライン上でGhostの記事の更新情報を受け取り、まるでMastodonの他の投稿を見るかのように記事を読んだり、そこに返信を書き込んだり、自分のフォロワーにシェア(ブースト)したりできるようになるのだ。Ghostの執筆者にとっては、より広い範囲の潜在的な読者にコンテンツを届けられるチャンスが生まれる。特定のプラットフォームに依存せず、より自由な形で読者とつながり、コンテンツを共有できるようになることは、分散型Webの大きな利点であり、これまでのWebコンテンツ配信のあり方に新たな選択肢をもたらすものと言える。
今回の機能提供が「パブリックベータ」である点も重要だ。「ベータ版」とは、ソフトウェアや機能がまだ開発途中で、正式リリース前のテスト段階にあることを指す。特に「パブリックベータ」は、一部の限られたテスターだけでなく、一般のユーザーも広く利用して試すことができる段階である。Ghost(Pro)がActivityPub対応をパブリックベータとして提供するのは、開発チームがこの新機能の安定性や使い勝手を検証し、ユーザーからのフィードバックを収集するためだ。パブリックベータ期間中は、まだ不具合(バグ)が含まれていたり、機能が変更されたりする可能性がある。しかし、多くのユーザーが実際に利用することで、開発チームは様々な環境での動作状況やユーザーニーズを把握し、正式リリースに向けて機能の改善や品質向上を行うことができる。
このニュースは、Ghostというニュースレタープラットフォームが、ActivityPubという分散型ソーシャルネットワークのプロトコルに対応することで、コンテンツ配信のあり方を多様化させ、よりオープンで相互運用性の高いWebの実現に貢献しようとしていることを示している。コンテンツ制作者はより広範な読者に到達する機会を得て、読者は特定のプラットフォームに縛られずに情報を収集できる可能性が広がる。これは、現代のWebサービスが単に情報を提供するだけでなく、どのように情報を流通させ、ユーザー間のつながりを生み出すかという点で、重要な一歩となるだろう。