【ITニュース解説】GitLab 17.11、カスタムコンプライアンスフレームワークと拡張コントロールでDevSecOpsを強化

2025年09月01日に「InfoQ」が公開したITニュース「GitLab 17.11、カスタムコンプライアンスフレームワークと拡張コントロールでDevSecOpsを強化」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

GitLab 17.11がリリースされ、カスタムコンプライアンスフレームワークを導入。これにより、法律やセキュリティなどの「守るべきこと」を開発の最初から組み込むことが可能になった。安全なソフトウェア開発(DevSecOps)をより強力に進められる。

ITニュース解説

GitLab 17.11のリリースは、ソフトウェア開発におけるコンプライアンス管理とDevSecOps(デブセックオプス)の統合において重要な進展を示す。このバージョンアップの中心となるのは、企業が持つ独自のルールや法的な義務をソフトウェア開発のプロセスに直接組み込むことを可能にする「カスタムコンプライアンスフレームワーク」の導入である。

まず、GitLabとは何か、その基本的な役割から理解しよう。GitLabは、ソフトウェア開発のすべての段階をサポートする包括的なプラットフォームだ。具体的には、プログラムのソースコードを管理する「バージョン管理システム(Git)」、テストやデプロイを自動化する「CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)」、さらにセキュリティ機能や運用監視機能まで、開発プロジェクトに必要な様々なツールを一元的に提供する。これにより、開発チームは一つのプラットフォーム上で協力し、効率的かつ迅速に高品質なソフトウェアを開発できる。

今回のバージョン17.11のリリースが注目されるのは、「コンプライアンス管理」と「DevSecOps統合」という二つの側面で大きな強化が図られた点にある。これらは、現代のソフトウェア開発において避けて通れない重要な課題である。

コンプライアンスとは、「法令遵守」や「企業倫理」を意味する言葉だ。ソフトウェア開発の現場におけるコンプライアンスとは、例えば個人情報保護法、医療分野における特定の規制(HIPAAなど)、金融分野における規制(PCI DSSなど)、または企業独自のセキュリティポリシーや品質基準といった、守るべき多くのルールや要件を指す。これらのルールを遵守しなければ、企業は法的罰則を受けたり、顧客や社会からの信頼を失ったりするリスクがある。これまでの開発プロセスでは、コンプライアンスチェックが開発の最終段階や監査時に行われることが多く、そこで問題が見つかると大きな手戻りが発生し、時間やコストが無駄になるという課題があった。

DevSecOpsとは、「開発(Development)」「セキュリティ(Security)」「運用(Operations)」の三つの要素を統合し、ソフトウェア開発プロセス全体を通じてセキュリティを考慮するアプローチのことだ。従来の開発では、セキュリティは開発の終盤にテストされることが多く、その段階で脆弱性(セキュリティ上の弱点)が見つかると、修正に多大な労力を要した。DevSecOpsは、開発の企画段階から、コードを書く段階、テスト、デプロイ、運用に至るまで、あらゆるフェーズでセキュリティの視点を取り入れることで、より安全で信頼性の高いソフトウェアを迅速に提供することを目指す。これは、セキュリティを「後付け」ではなく「組み込み型」にする考え方と言える。

GitLab 17.11で導入された「カスタムコンプライアンスフレームワーク」は、これらの課題に対する具体的な解決策となる。この機能を使えば、企業は自社の事業内容や業界の特性、または特定のプロジェクトに合わせた独自のコンプライアンス要件をGitLabのプラットフォーム内に設定できる。例えば、あるプロジェクトでは「個人情報を含むデータは必ず暗号化する」、別のプロジェクトでは「特定のライブラリの使用は禁止する」といったルールを明確に定義し、それをフレームワークとして登録できるのだ。

このフレームワークが設定されると、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の各段階で、そのルールが自動的に適用され、チェックされるようになる。開発者がコードをコミットする際や、新しい機能がテストされる際、あるいは本番環境にデプロイされる直前など、様々なタイミングでコンプライアンス違反がないかどうかがシステムによって検証される。もし違反が検出されれば、開発者に即座に通知され、問題が早期に発見・修正される。これにより、コンプライアンス違反が原因でプロジェクトが遅延したり、リリース後に大きな問題が発生したりするリスクを大幅に低減できる。

この機能の導入は、コンプライアンス遵守にかかる手作業の負担を軽減し、監査対応を効率化する上で非常に有効だ。これまで、開発チームや品質管理チームが手動で行っていた多くのチェック作業や証拠収集作業が自動化され、より正確かつ迅速に行われるようになる。また、コンプライアンス要件が開発プロセスに直接組み込まれることで、開発者自身がセキュリティやコンプライアンスに対する意識を高め、より責任感を持って開発に取り組むようになる効果も期待できる。

ソフトウェア開発ライフサイクルにコンプライアンスが直接組み込まれるということは、企画から開発、テスト、リリース、運用までの一連の流れの中で、常に適切な規制や基準が守られていることを確認できるということだ。これは、開発の初期段階で問題を発見し、手戻りを減らすことにつながるだけでなく、最終的な製品の品質と信頼性を向上させることにも貢献する。

システムエンジニアを目指す初心者にとって、このようなツールの進化は、今後のキャリアを考える上で非常に重要な意味を持つ。現代のソフトウェア開発では、単に技術的な知識やプログラミングスキルだけでなく、セキュリティやコンプライアンス、さらにはビジネス全体の要件を理解する能力が強く求められる。GitLabのような統合プラットフォームが、開発プロセスの効率化と安全性確保にどのように貢献しているかを理解することは、将来のシステムエンジニアとして不可欠な素養となるだろう。開発ツールが進化するにつれて、開発者はより高度な視点からシステム全体を設計し、管理する役割を担うようになっていく。今回のGitLabのアップデートは、その方向性を示す一つの事例だと言える。