【ITニュース解説】GleamのJSターゲットにおける天国と地獄
2025年09月22日に「Zenn」が公開したITニュース「GleamのJSターゲットにおける天国と地獄」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Gleamは通常Erlang向けの言語だが、日本では普及のためJavaScript環境での開発に注力している。JSにはないパイプライン演算子やブロック構文といった独自の構文が使える利点がある一方、特有の苦労もある。
ITニュース解説
Gleamは、近年注目を集めているプログラミング言語の一つで、特に「型安全」と「関数型」という特徴を持つ。型安全とは、プログラムの実行中に起こりうる型に関するエラーを、コードを書いている段階で発見しやすくする仕組みである。これにより、予期せぬバグの発生を未然に防ぎ、信頼性の高いソフトウェア開発に貢献する。また、関数型プログラミングは、データの状態変化を最小限に抑え、関数を組み合わせることでプログラムを構築するスタイルで、コードの予測可能性を高め、並行処理(複数の処理を同時に実行すること)を容易にするというメリットがある。Gleamは、書いたコードをコンピューターが実行できる形に「コンパイル」する言語である。
プログラミング言語には、書かれたコードが最終的にどこでどのように実行されるかという「ターゲット」がある。Gleamの場合、主に二つの主要なターゲットが存在する。一つは「Erlangターゲット」で、これはErlangという別のプログラミング言語の実行環境である「Erlang VM (BEAM)」上で動作するようにGleamのコードを変換することを指す。Erlang VMは、高い並行処理能力や耐障害性を持つことで知られている。そのため、GleamをErlangターゲットで利用することは、堅牢なバックエンドシステムや大規模なネットワークサービスを開発する上で強力な選択肢となる。
もう一つの主要なターゲットが「JavaScriptターゲット」である。これは、GleamのコードをJavaScriptのコードに変換することを意味する。JavaScriptはWebブラウザ上で動作する唯一のプログラミング言語であり、またNode.jsのような実行環境を通じてサーバーサイドやデスクトップアプリケーション開発にも広く利用されている。GleamをJavaScriptターゲットでコンパイルすれば、Gleamが持つ型安全性や関数型のメリットを活かしつつ、JavaScriptが動作するあらゆる環境でGleamのプログラムを実行できるようになる。
ニュース記事の筆者は、GleamのコミュニティではErlangターゲットが主流であるにもかかわらず、自身の活動の主軸をJavaScriptターゲットのサポートに置いていると述べている。この背景には、特に日本におけるプログラミング言語の利用状況が大きく関係している。日本では、Erlangの普及度が比較的低い一方で、JavaScriptはWeb開発を中心に非常に広く使われている。このため、日本でGleamの普及を目指すのであれば、より多くの開発者に馴染み深く、活発なコミュニティが存在するJavaScriptの領域でのサポートを拡充することが、言語の採用を促進する上で効果的だと筆者は考えているのだ。GleamのJavaScriptターゲットは、Gleamの堅牢な型システムや関数型のパラダイムをJavaScript開発者が取り入れ、より信頼性の高いWebアプリケーションを開発するための新たな道筋を提供する可能性を秘めている。
筆者は、GleamのJavaScriptターゲットには「天国」と感じるような楽しい点があると語っており、その中でも特に「JavaScriptにはない構文が使える」ことを大きなメリットとして挙げている。具体的には、パイプライン演算子、ブロック構文、そしてuse構文の三つがGleamを使う動機になりうると指摘する。
まず「パイプライン演算子」について説明する。これは、複数の関数や処理を連結し、データの流れを直感的に表現するための構文である。通常のプログラミングでは、ある関数の結果を別の関数の引数として渡す際、内側から外側へと関数をネストして記述するか、あるいは中間変数を使って段階的に処理を進めることが多い。しかし、パイプライン演算子を使うと、データを左から右へと順に処理していく形、データがパイプラインを通って次の工程へ流れていくかのようにコードを書ける。これにより、コードの可読性が格段に向上し、データの変換や加工のロジックを追いやすくなる。複雑なデータ処理を行う際に、何がどのように処理されているのかを一目で理解できる。
次に「ブロック構文」である。JavaScriptにもブロック構文は存在するが、Gleamのブロック構文はより柔軟で強力な機能を持つ。Gleamでは、中括弧で囲まれたブロックが独立したスコープを持ち、そのブロック内で定義された変数や定数はブロックの外からは直接アクセスできない。さらに、Gleamのブロックは最終的な評価結果を値として返すことができる。これは、特定の処理のまとまりを実行した結果を直接変数に代入したり、関数の引数として渡したりできることを意味する。これにより、コードの部品化が進み、より宣言的(何をしたいかを明確に記述する)で、見通しの良いプログラム構造を構築しやすくなる。例えば、条件分岐やループの中で複雑な計算を行った結果を、そのブロックの最終結果として簡単に取り出せる。
最後に「use構文」について解説する。プログラミングにおいて、ファイルを開いたり、データベースに接続したり、ネットワーク通信を行ったりする際には、リソース(資源)を一時的に確保し、処理が完了したら必ず解放する必要がある。もしリソースの解放を忘れると、メモリリークやシステム全体のパフォーマンス低下、さらにはセキュリティ上の問題を引き起こす可能性がある。use構文は、このようなリソースの確保と解放のプロセスを自動的かつ安全に行うための仕組みである。プログラマは、use構文を使ってリソースを宣言するだけで、そのリソースが必要な処理の間だけ確保され、処理が完了すると確実に解放されるようにGleamコンパイラが保証してくれる。これにより、エラーハンドリングを意識することなく、安全で堅牢なコードを少ない記述量で書けるようになり、開発の効率性とコードの信頼性を高めることができる。
これらのJavaScriptにはないGleam独自の構文を利用できることは、Gleamの型安全性や関数型の特徴と相まって、よりモダンで保守性の高いコードを、JavaScriptが動作する環境で開発するための強力な動機となるだろう。システムエンジニアを目指す初心者にとっては、これらの構文が提供するメリットを理解することで、より効率的で信頼性の高いシステムを構築するための思考法やツールに触れる良い機会となるだろう。