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【ITニュース解説】Building a Simple Stack-Based Virtual Machine in Go

2025年09月15日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Building a Simple Stack-Based Virtual Machine in Go」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Go言語で、プログラムの実行基盤となるシンプルなスタックベース仮想マシンを開発した。これは、バイトコードを解釈し、基本的な計算や処理の流れを制御する仕組みだ。

ITニュース解説

このニュース記事は、Go言語を使ってシンプルなスタックベースの仮想マシンを構築したという話題だ。システムエンジニアを目指す上で、プログラムがどのように動作するのか、コンピュータの基本的な仕組みが気になる人も多いだろう。この仮想マシンの話は、その内部構造を理解する良い足がかりになる。

まず「仮想マシン(Virtual Machine, VM)」とは何かから説明しよう。コンピュータは、CPUやメモリといった物理的な部品、つまりハードウェアの上でプログラムを実行する。しかし、仮想マシンはこれらの物理的なハードウェアの機能をソフトウェアで模倣し、仮想的なコンピュータ環境を作り出すものだ。例えば、Windowsの上でLinuxを動かすためのVMwareやVirtualBoxのような製品をイメージする人もいるかもしれないが、ここで述べられている仮想マシンは、特定のプログラムだけを実行するために特化された、より軽量な実行環境を指している。この仮想マシンがあることで、作成したプログラムは特定の物理的なハードウェアに縛られず、様々な環境で同じように動作できるようになる。これは「プラットフォーム非依存性」と呼ばれる重要な特性だ。

次に、「スタックベース」という部分に注目する。これは仮想マシンがデータをどのように扱うか、その動作原理の一つを示している。スタックとは、データを「後から入れたものが先に取り出される(Last-In, First-Out, LIFO)」という原則を持つ記憶領域のことだ。例えるなら、皿を積み重ねるように、新しいデータは常にスタックの一番上に追加され、データを取り出す際も一番上のものからしか取り出せない。スタックベースの仮想マシンでは、計算を行う際に、まず操作対象となる数値や変数の値(オペランド)をスタックに積んでいく。そして、足し算や引き算といった操作(演算子)が来たら、スタックから必要な数のオペランドを取り出し、計算を実行する。計算結果はまたスタックの一番上に戻される。この仕組みにより、命令の構造をシンプルに保ちながら、複雑な計算を段階的に処理できるという特徴がある。レジスタというCPU内部の高速な記憶領域を直接管理する必要がないため、仮想マシンの設計や実装が比較的容易になる利点もある。

そして、「コンパイルされたバイトコード」とは何か。通常、私たちがGoやJava、C++といった高級言語で書いたプログラムは、コンピュータが直接理解できる機械語に変換される「コンパイル」という処理を経て実行される。バイトコードは、この高級言語と機械語の中間にある「中間表現」のことだ。人間が理解しやすい高級言語と、コンピュータが直接実行する機械語の橋渡し役を果たす。仮想マシンは、このバイトコードを解釈し、その命令を実行する。これにより、一度バイトコードに変換してしまえば、WindowsでもmacOSでも、あるいは異なるCPUアーキテクチャを持つコンピュータ上でも、それぞれの仮想マシンがそのバイトコードを解釈してプログラムを実行できるため、真にプラットフォーム非依存なプログラムを実現できる。

この仮想マシンがGo言語で構築されたことには、いくつかの理由が考えられる。Go言語は、シンプルで読みやすい文法を持ちながら、高いパフォーマンスを発揮する。特に並行処理(複数の処理を同時に実行すること)の記述が容易であり、システムプログラミングや、今回のような低レベルなツールを開発するのに非常に適している。高速なコンパイルと実行速度、ガベージコレクションによるメモリ管理の簡素化も、仮想マシンのような基盤システムを開発する上での大きなメリットとなるだろう。

この記事の著者は、WebAssembly(Wasm)とEthereum Virtual Machine(EVM)から着想を得たという。これらもスタックベースの仮想マシンであるため、初心者にとっても理解を深める参考になるだろう。WebAssemblyは、Webブラウザ上でC++やRustといった様々な言語で書かれたプログラムを、JavaScriptよりも高速に実行するための仮想マシンだ。これにより、Webアプリケーションがより高性能な処理を実行できるようになる。一方、Ethereum Virtual Machine(EVM)は、ブロックチェーン技術の一つであるイーサリアム上で動作するスマートコントラクト(自動実行される契約プログラム)を実行するための仮想マシンだ。これらの仮想マシンは、それぞれの特定の目的のために、効率的かつ安全にプログラムを実行する環境を提供しており、スタックベースの設計がその実現に貢献している。

今回構築されたシンプルな仮想マシンは、「基本的な算術演算」と「シンプルな実行フロー」を扱えるという。基本的な算術演算とは、足し算、引き算、掛け算、割り算といった計算のことだ。これらができれば、より複雑な数値計算も可能になる。シンプルな実行フローとは、プログラムがどのような順序で命令を実行するかを制御する機能で、例えば「もし条件Aが真ならこの処理を行い、そうでなければ別の処理を行う(条件分岐)」や「この処理を特定の回数または条件が満たされるまで繰り返す(ループ)」といったものだ。これらプログラミング言語の基本的な要素を仮想マシンが処理できるようになることで、様々なアルゴリズムやロジックを持つプログラムを実行できる基盤が作られる。

このような仮想マシンを自ら構築する試みは、コンピュータがどのようにプログラムを解釈し、実行しているのかという、コンピュータサイエンスの根本的な部分を深く理解する上で非常に価値がある。高級言語の裏側で何が起こっているのか、あるいは新しいプログラミング言語や実行環境をどのように設計・実装できるのかといった知見を得られる。これは、システムエンジニアとしてより高度な問題解決能力や設計能力を身につけるための重要な学習プロセスと言える。このシンプルな仮想マシンの構築は、単なる実験にとどまらず、プログラミングやコンピュータシステムの奥深さを探求するための第一歩なのだ。

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