Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】空飛ぶ基地局「HAPS」の実験、エリア端でも平均33Mbpsを達成--ソフトバンク

2025年09月18日に「CNET Japan」が公開したITニュース「空飛ぶ基地局「HAPS」の実験、エリア端でも平均33Mbpsを達成--ソフトバンク」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

ソフトバンクは、空飛ぶ基地局「HAPS」を使い、成層圏からの5G通信実験に成功したと発表。電波の届きにくい場所でも平均33Mbpsの通信速度を達成した。2026年の実用化を目指す。

ITニュース解説

ソフトバンクが成層圏を飛行する「空飛ぶ基地局」ことHAPS(High Altitude Platform Station)を用いた5G通信実験に成功したというニュースは、未来の通信インフラの可能性を大きく広げる重要な一歩である。この実験では、特にエリアの端でも平均33Mbpsという速度を達成し、2026年のプレ商用化を目指すという具体的な目標も示された。

まず、HAPSとは何かを理解する必要がある。HAPSは、地上の基地局とは異なり、成層圏と呼ばれる地上約20kmの上空を飛行する無人航空機や飛行船に、通信用の基地局設備を搭載したものである。通常、我々が利用する携帯電話の電波は、地上のタワーに設置された基地局から発信されている。しかし、この方法では、山間部や離島、広大な砂漠や海洋といった、基地局の設置が難しい場所では通信が困難になるという課題があった。HAPSは、地球の約20km上空という高い位置から電波を送り出すことで、一台で非常に広い範囲をカバーできるという大きな特徴を持つ。まるで空に浮かぶ巨大な通信タワーのようなものと考えると分かりやすいだろう。これにより、従来の地上基地局ではカバーしきれなかった地域にも、高速で安定した通信を提供できる可能性を秘めている。

なぜHAPSのような「空飛ぶ基地局」が必要とされているのだろうか。最大の理由は、現在の通信インフラが抱える地理的な制約とコストの問題だ。通信が利用できない「デジタルデバイド」と呼ばれる地域は世界中にまだまだ多く存在する。こうした地域に地上基地局を建設するには莫大な費用と時間がかかり、地形的な制約も大きい。また、地震や津波、台風といった自然災害が発生した際、地上の基地局が損壊し、通信網が寸断されることは少なくない。HAPSは、上空から柔軟に通信エリアを展開できるため、こうした災害時にも迅速に通信サービスを復旧させる手段として期待されている。さらに、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の普及が進むにつれて、農業分野でのセンサーデータ収集、広大な工場敷地内の機器監視、海上での船舶間通信など、あらゆる場所で安定した高速通信が求められるようになっている。HAPSは、これらの新しいニーズにも対応できる、革新的なソリューションとなり得るのだ。

今回のソフトバンクの実験で特に注目すべきは、「6セル対応の大容量ペイロード」を開発し、上空からの5G通信実験に成功した点だ。ペイロードとは、HAPSに搭載される通信機器一式のことである。通常、地上の基地局は複数のアンテナを用いて、それぞれが異なる方向や範囲に電波を送信することで、より効率的に広範囲をカバーする。これを「セル」という単位で表現する。今回の「6セル対応」とは、HAPSに搭載された基地局が、同時に6つの異なる方向や範囲に電波を送り出し、より多くのユーザーやデバイスに安定した通信を提供できる能力を持つことを意味する。これは、HAPSが単に広範囲をカバーするだけでなく、その広範囲内で十分な通信容量と速度を確保できることを示す重要な進歩である。

実験では、HAPSが成層圏から地上に向けて5Gの電波を送信し、地上にいる端末がそれを受信できるかを検証した。そして、「エリア端で平均33Mbps」という通信速度を達成したことが報告された。Mbps(メガビットパーセカンド)は、1秒あたりに送受信できるデータ量を表す単位で、この数値が大きいほど通信速度が速いことを意味する。地上での5G通信は、条件が良ければ数百Mbpsからギガbpsを超える速度が出ることもある。しかし、HAPSのように上空から電波を届ける場合、電波の伝搬距離が長くなることや、大気の影響を受けることで、地上基地局と同じ条件での速度を出すことは難しい。そのため、エリアの「端」という、電波が最も届きにくい場所で平均33Mbpsという速度が出たことは、実用化に向けて非常に有望な結果と言える。これは、多くのウェブサイトの閲覧や動画視聴、ビデオ通話などが問題なく行える速度であり、過疎地や災害時といった特定の利用シーンにおいては十分に活用できるレベルである。

HAPSの実現には、高度な技術的課題が伴う。まず、成層圏という過酷な環境で、無人航空機を長期間安定して飛行させる技術が必要だ。昼夜問わず電力を供給するため、太陽電池とバッテリーを組み合わせたシステムが開発されている。また、上空から広範囲に電波を安定して届けるためには、電波のビームを正確に制御する技術や、地上の通信網との連携をスムーズに行う技術も不可欠である。さらに、世界中で空域を利用するための国際的な法規制や周波数帯の調整も重要な課題となる。ソフトバンクは、これらの技術的な障壁を一つずつ乗り越え、2026年のプレ商用化という具体的な目標を設定している。

HAPSが実用化されれば、私たちの生活や社会に大きな変革をもたらすだろう。これまで通信が困難だった地域でも、高速インターネットが利用できるようになり、教育や医療、ビジネスの機会が拡大する。災害発生時には、迅速に通信インフラを復旧させ、人命救助や復旧活動を支援できる。また、地球規模でのIoTネットワークの構築も加速し、スマートシティや自動運転、環境モニタリングなど、新たなサービスや産業が生まれる可能性を秘めている。ソフトバンクの今回の実験成功は、HAPSが単なる夢物語ではなく、現実のものとして着実に進歩していることを示す強力な証拠であり、システムエンジニアを目指す皆さんにとっても、未来の通信技術を牽引するエキサイティングな分野として注目に値するだろう。この技術の発展は、世界中の人々の生活をより豊かにし、新たな社会インフラを築き上げる可能性を秘めている。

関連コンテンツ