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【ITニュース解説】Hashed sorting is typically faster than hash tables1

2025年09月11日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Hashed sorting is typically faster than hash tables1」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

データを効率的に扱う技術として、「ハッシュソート」は一般的に「ハッシュテーブル」よりも高速である。これは、大量の情報を並べ替えたり、素早く探したりする際の性能に影響する重要な点で、システム構築時の技術選定の参考になる。

ITニュース解説

コンピュータが扱う膨大な情報の中で、データを効率良く整理し、必要な時に素早く見つけ出す技術は、システム開発の根幹をなす。アルゴリズムと呼ばれるこれらのデータ整理術は多岐にわたり、それぞれに得意なことと苦手なことがある。今回は、データ構造の一つである「ハッシュテーブル」と、ソート手法の一つである「ハッシュソート」というアプローチを比較し、なぜ後者が時に前者よりも高速になり得るのかを解説する。

まず、ハッシュテーブルについて理解を深めよう。ハッシュテーブルは、キーと値のペアを保存し、キーを使って値を高速に検索、挿入、削除できるデータ構造だ。その高速性の秘密は、「ハッシュ関数」という特殊な計算にある。ハッシュ関数は、任意の長さのデータ(キー)を受け取り、それを固定長の数値(ハッシュ値)に変換する。このハッシュ値が、内部の配列のインデックスとして利用されることで、目的のデータへ直接アクセスするような形で、非常に高速な処理が可能となる。理論上は、データの量が増えても検索にかかる時間はほとんど変わらない(定数時間:O(1)に近い)とされている。

しかし、ハッシュテーブルにも課題がある。それは「衝突(コリジョン)」だ。異なるキーが同じハッシュ値を生成してしまうことがあり、この衝突を解決するための工夫(例:チェイニングやオープンアドレス法など)が必要となる。衝突が増えれば増えるほど、ハッシュテーブルの性能は低下し、最悪の場合、検索に時間がかかってしまう可能性もある。また、ハッシュテーブルはデータを格納する際に、キーの順序を考慮しない。そのため、格納されたデータをソートされた順序で取り出したい場合は、一度全てのデータを取り出して、別のソートアルゴリズムを使って並べ替えるという追加の処理が必要になる。

一方、「ソート」とは、データを特定の基準(例えば数値の昇順や降順、文字列のアルファベット順など)で並べ替える処理全般を指す。クイックソートやマージソート、ヒープソートなど、様々なソートアルゴリズムが存在し、それぞれが異なる特性と計算効率を持つ。

今回話題となる「ハッシュソート」は、従来の比較ソート(データの大小を比較して並べ替える)とは少し異なるアプローチだ。これは、ハッシュテーブルが「検索」のためにハッシュ関数を使うのに対し、ハッシュソートは「並べ替え」のためにハッシュ関数の特性を利用する。一般的には、データをハッシュ値に基づいて複数の「バケット」(一時的な格納場所)に分類し、各バケット内をソートするか、あるいはハッシュ値自体が順序性を持つように設計することで、最終的なソート処理を効率化する手法を指す。これは、広義には「非比較ソート」の一種、例えば基数ソートやバケットソートの考え方に近い。

ハッシュソートの典型的な処理の流れは以下のようになる。まず、ソートしたい各データに対してハッシュ関数を適用し、そのハッシュ値を計算する。次に、計算されたハッシュ値に基づいてデータを適切なバケットに配置する。例えば、ハッシュ値の範囲を均等に分割し、各範囲に対応するバケットにデータを振り分ける。全てのデータがバケットに振り分けられたら、各バケット内を(通常は少ないデータ量なので)効率の良いソートアルゴリズムでソートする。最後に、ソートされた各バケットを順番に結合することで、全体としてソートされた結果が得られる。

では、なぜこの「ハッシュソート」が、ハッシュテーブルを使うよりも速い場合があるのか。その理由はいくつか考えられる。

第一に、目的の違いだ。ハッシュテーブルの主な目的は、特定のキーに対応する値を高速に見つけることであるのに対し、ハッシュソートの目的はデータ全体を効率的に並べ替えることにある。ハッシュテーブルを使ってデータをソートされた順序で得るには、データを全てハッシュテーブルに挿入した後、全ての要素を走査して取り出し、改めて別のソートアルゴリズムで並べ替えるという二段階の処理が必要となる。この「取り出し+ソート」のコストが、特に大量のデータでは無視できないほど大きくなる。一方、ハッシュソートは、データを配置する段階で既にハッシュ値の順序性を利用しているため、最終的なソート処理が大幅に効率化されるか、あるいはほとんど不要になる場合がある。

第二に、データアクセス効率の向上がある。ハッシュソートでデータをバケットに分類する際、ハッシュ値が近いデータ、つまりある種の関連性の高いデータがメモリ上で物理的に近い場所に集まりやすくなる。これは、CPUのキャッシュメモリが効率的に利用されることを意味し、データへのアクセス速度が向上する。ハッシュテーブルの場合、衝突解決のためにメモリ上の離れた場所へのアクセス(キャッシュミス)が増えることがあり、これが性能低下の一因となる。

第三に、並列処理の容易さも挙げられる。データを複数のバケットに分割した後、それぞれのバケットは独立して処理できるため、マルチコアCPU環境下では、各バケットのソート処理を複数のコアに割り当てて並列に実行できる。これにより、全体としての処理時間を大幅に短縮することが可能となる。

第四に、特定のデータ特性での優位性だ。特に、大量の数値データや固定長の文字列データ、あるいはユニークなIDなどをソートする場合において、ハッシュソートは真価を発揮しやすい。データが広範囲に分布しているものの、均一性がある程度保たれており、かつ優れたハッシュ関数が設計できる状況では、非常に高速なソートを実現できる可能性がある。例えば、重複しない大量のデータを抽出し、それをソートするような複合的なタスクでは、ハッシュソート的なアプローチがハッシュテーブルと後続ソートの組み合わせよりも有利になることが多い。

もちろん、ハッシュソートも万能ではない。最適な性能を発揮するためには、データの分布に適したハッシュ関数の設計が不可欠であり、ハッシュ関数の計算自体にかかるコストも考慮しなければならない。また、バケットの数や各バケットのサイズによっては、大量のメモリが必要になることもある。データが特定のパターンに偏っていたり、ハッシュ関数の性能が良くない場合は、かえって効率が悪くなる可能性もある。

システムエンジニアを目指す上で重要なのは、単一のアルゴリズムやデータ構造が常に最良であるとは限らないという点だ。今回解説したハッシュソートのように、既存の常識を覆すような新しいアプローチや、特定の条件下で絶大な効果を発揮する技術は常に生まれている。どのような状況で、どのアルゴリズムが最も効率的であるかを見極めるためには、それぞれの特性を深く理解し、目の前の課題に対して最適な道具を選択する判断力が求められる。コンピュータサイエンスの世界は常に進化しており、その知識を貪欲に吸収し、実践に活かすことが、優れたシステムエンジニアへの道となるだろう。

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