【ITニュース解説】How Code Becomes Software: Execution Models Explained
2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「How Code Becomes Software: Execution Models Explained」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
人が書いたソースコードは、機械語への翻訳を経て実行される。事前に一括翻訳するコンパイル方式は高速だが、実行時に都度翻訳するインタプリタ方式は手軽。両者の利点を組み合わせたハイブリッド方式も存在する。(116文字)
ITニュース解説
プログラマーが記述するコードは、人間が読み書きしやすいように作られたテキストファイルであり、これをソースコードと呼ぶ。しかし、コンピュータの頭脳であるプロセッサは、このソースコードを直接理解することはできない。プロセッサが理解できるのは、0と1の羅列で構成されたマシン語だけである。この人間向けのソースコードを、コンピュータが実行できる形式に変換する仕組み全体を「実行モデル」と呼ぶ。実行モデルにはいくつかの種類があり、それぞれに長所と短所が存在する。
最も古典的で基本的な実行モデルが「コンパイル方式」である。この方式では、プログラムを実行する前に、「コンパイラ」と呼ばれる専門のプログラムを使って、ソースコード全体を一度にマシン語へ翻訳する。この翻訳作業をコンパイルといい、その結果として生成されるのが、プロセッサが直接実行可能なファイルである。この方式の最大の利点は、実行速度が非常に速いことだ。実行時にはすでに全ての命令がマシン語に翻訳されているため、プロセッサは翻訳作業を介さずに、ただ命令を順次処理するだけで済む。このため、オペレーティングシステムやゲームエンジンなど、極限のパフォーマンスが要求されるソフトウェア開発には、C言語やC++といったコンパイル方式の言語が採用されることが多い。しかし、欠点も存在する。ソースコードを少しでも変更した場合は、プログラム全体をもう一度コンパイルし直さなければならないため、開発サイクルに時間がかかることがある。また、生成された実行可能ファイルは、コンパイルされた環境(例えばWindows)に特化しているため、別の環境(例えばLinux)では動作しない。これをプラットフォーム依存性という。
コンパイル方式とは対照的なのが「インタプリタ方式」である。この方式では、事前の翻訳作業を行わない。「インタプリタ」と呼ばれるプログラムが、ソースコードを一行ずつ読み込み、その都度解釈して実行していく。この方式の利点は、手軽さと移植性の高さにある。コンパイルの待ち時間が不要なため、コードを書いたらすぐに実行して結果を確認できる。また、同じソースコードであれば、インタプリタさえインストールされていれば、Windows、macOS、Linuxなど、どのプラットフォームでも動かすことができる。PythonやJavaScript、Rubyなどがこの方式の代表例である。一方で、実行のたびに一行ずつ翻訳処理を挟むため、コンパイル方式に比べて実行速度が遅くなるという明確な欠点がある。また、実行中は常にインタプリタがメモリ上に常駐する必要があるため、メモリ使用量も多くなる傾向がある。
現代の多くのプログラミング言語では、コンパイル方式の「速さ」とインタプリタ方式の「移植性」を両立させるための「ハイブリッド方式」が採用されている。この方式では、まずソースコードをマシン語ではなく、「バイトコード」と呼ばれる中間的なコードにコンパイルする。このバイトコードは、特定のプロセッサに依存しない汎用的な形式となっている。そして、このバイトコードを「仮想マシン(VM)」というソフトウェア上で実行する。仮想マシンは、OSやハードウェアの違いを吸収する層として機能し、バイトコードをその環境に応じたマシン語に解釈しながら実行する。これにより、一度バイトコードを生成すれば、仮想マシンが動作するあらゆる環境でプログラムを動かすことができ、高い移植性を実現している。
さらに、ハイブリッド方式の性能を向上させる重要な技術が「JIT(Just-In-Time)コンパイル」である。日本語では「実行時コンパイル」とも呼ばれる。仮想マシンはプログラムの実行中に、どの部分が頻繁に繰り返し実行されているかを監視している。そして、繰り返しが多く、処理のボトルネックとなっている箇所(ホットスポット)を見つけ出すと、その部分のバイトコードだけを動的にマシン語へコンパイルする。一度マシン語にコンパイルされた箇所は、次回以降、高速に実行される。これにより、プログラムは最初はインタプリタのように手軽に動き始め、実行を続けるうちに重要な部分が最適化され、最終的にはコンパイル方式に近い速度で動作するようになる。JavaやC#はこのハイブリッド方式とJITコンパイルの代表的な言語である。
これら以外にも、仮想マシン上で動くことを前提とした言語を、実行前にあらかじめ全てマシン語へコンパイルしておく「AOT(Ahead-of-Time)コンパイル」という方式も存在する。これはJITコンパイルの弱点である「プログラム起動時の遅さ」を解消するのに有効であり、起動速度が重視されるモバイルアプリや、リソースが限られた組み込みシステムで利用されることがある。
このように、ソースコードが実際に動くソフトウェアになるまでには、多様な実行モデルが関わっている。どの実行モデルを採用しているかによって、そのプログラミング言語の得意なこと、不得意なことが決まる。最高のパフォーマンスが求められる場面ではコンパイル方式、素早い開発やプラットフォームを問わない動作が重要な場面ではインタプリタ方式やハイブリッド方式が選ばれる。システムエンジニアとして、自分が使う言語がどのような仕組みで動いているのかを理解することは、より良いソフトウェアを設計し、開発するために不可欠な知識である。