【ITニュース解説】IBM X-Forceに学ぶ:セキュリティを9倍強化する「Redチーム」と「Blueチーム」のアーキテクチャ
2025年09月12日に「Qiita」が公開したITニュース「IBM X-Forceに学ぶ:セキュリティを9倍強化する「Redチーム」と「Blueチーム」のアーキテクチャ」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
システムは「どう動くか」だけでなく「どう壊れるか」を深く探求することが重要だ。IBMは攻撃役のRedチームと防御役のBlueチームを使い、エシカルハッキングでシステムの脆弱性を発見・改善する。これは、セキュリティを強化し、堅牢なシステムを構築するための鍵となる。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、情報セキュリティは避けて通れない重要なテーマだ。現代のシステムはますます複雑になり、サイバー攻撃の手口も巧妙化の一途をたどっている。システムを開発する上で、「どのようにすればうまく機能するか」を考えるのは当然だが、それと同じくらい、いやそれ以上に「どのようにすればシステムが攻撃されてしまうのか」「どのような弱点が存在しうるのか」という視点を持つことが、非常に強固なシステムを構築するための鍵となる。今回解説する「Redチーム」と「Blueチーム」の考え方は、まさにこの「失敗」から学び、セキュリティを飛躍的に強化するための実践的なアプローチだ。
まず、エシカルハッキングという言葉を理解する必要がある。これは、一般的な「ハッキング」が持つ犯罪的なイメージとは異なり、システム所有者の許可を得て、善意の目的で行われるハッキング行為を指す。具体的には、システムの脆弱性(弱点)を見つけ出し、それを修正することでセキュリティレベルを高めることが目的だ。このエシカルハッキングを組織的に、かつ専門的に行うのがRedチームとBlueチームの活動なのである。
Redチームは、システムの攻撃者側の視点に立ち、あらゆる手を使ってシステムへの侵入や情報の窃取を試みる専門家集団だ。彼らは、実際のサイバー攻撃者が用いる最新の技術や手法を常に研究し、ターゲットとなるシステムに対して模擬的な攻撃を行う。その目的は、システムの防御機構の弱点や、セキュリティ運用上の問題点を発見することにある。例えば、外部からシステムに侵入できないか、従業員を騙して情報を引き出せないか(フィッシング攻撃など)、あるいはシステム内部に潜り込んだ際にどこまで権限を昇格できるかといったことを、実際の攻撃さながらに試す。Redチームの活動は、システムが抱える潜在的なリスクを白日の下にさらし、具体的な脅威を浮き彫りにする重要な役割を担っている。
一方で、Blueチームは、Redチームの攻撃からシステムを守る防御側の専門家集団だ。彼らは、システムの監視、不正アクセスの検知、脆弱性の管理、インシデント(セキュリティ事故)発生時の対応など、日常的なセキュリティ運用全般を担っている。Redチームが仕掛ける模擬攻撃に対して、Blueチームはそれを検知し、阻止し、適切に対応することが求められる。具体的には、IDS/IPS(不正侵入検知・防御システム)やSIEM(セキュリティ情報イベント管理)といったツールを駆使して、異常な挙動をリアルタイムで監視する。また、OSやアプリケーションの脆弱性がないか常にチェックし、最新のセキュリティパッチを適用したり、設定の最適化を行ったりする。もし攻撃を受けた場合は、被害を最小限に抑え、システムを速やかに復旧させるための手順を実行する。Blueチームの役割は、システムの安全を継続的に確保することであり、組織のセキュリティ体制の要となる。
RedチームとBlueチームの活動は、それぞれが独立して行われるのではなく、密接に連携することで真価を発揮する。Redチームが発見した脆弱性や攻撃手法、そしてBlueチームがそれに対してどのように検知し、対応したかという結果は、詳細に分析され、両チーム間で共有される。このフィードバックのサイクルこそが、セキュリティを継続的に向上させる上で極めて重要となる。例えば、Redチームが特定の侵入経路で成功した場合、Blueチームはその経路に対する防御策を強化し、監視体制を改善する。また、BlueチームがRedチームの攻撃を検知できなかった場合、検知ルールの見直しやツールの設定変更を行う。このように、攻撃と防御を繰り返すことで、組織全体のセキュリティレベルは着実に、そして劇的に向上していくのだ。この連携をさらに円滑にするために、「Purpleチーム」という概念も存在する。Purpleチームは、RedチームとBlueチームの間に立ち、コミュニケーションを促進し、知見の共有を最適化する役割を担い、セキュリティ改善のサイクルを加速させる。
このRedチームとBlueチームの考え方は、システムを設計する段階、つまりセキュリティアーキテクチャの構築においても非常に重要だ。セキュリティアーキテクチャとは、システム全体のセキュリティをどのように設計し、実装するかという骨格を示すものだ。設計の初期段階から「どうすれば攻撃されるか」という視点を取り入れ、Redチーム的な思考でシステムの潜在的な弱点を予測し、Blueチーム的な思考でそれを防御するための仕組みを組み込んでいく。例えば、データの暗号化、アクセス制御の厳格化、ネットワークの分離、堅牢な認証機構の導入など、様々なセキュリティ対策を計画的に配置することで、開発初期から強固なセキュリティ基盤を築くことができる。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このようなセキュリティの考え方を学ぶことは、将来的にどのようなシステム開発に携わる上でも非常に役立つ。単に機能を実装するだけでなく、その機能がどのようなセキュリティリスクを抱えうるのか、どのようにすれば安全に利用できるのかという視点を持つことが、これからのIT社会で求められるエンジニア像だ。RedチームとBlueチームのアーキテクチャは、システムを多角的に検証し、継続的に改善していくための強力なフレームワークであり、これからのシステム開発において不可欠な考え方と言えるだろう。このような専門チームの知見から学ぶことで、皆さんもより安全で信頼性の高いシステムを構築できるようになるだろう。