【ITニュース解説】iPhone 17シリーズ、日本でもeSIMのみ 物理SIM廃止

2025年09月10日に「CNET Japan」が公開したITニュース「iPhone 17シリーズ、日本でもeSIMのみ 物理SIM廃止」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Appleが発表したiPhone 17シリーズでは、日本モデルも物理SIMスロットが廃止された。これにより、従来のカード型SIMは利用できず、本体に組み込まれたデジタルなeSIMのみの対応となる。SIMのオンラインでの発行や切り替えがより手軽になる。(118文字)

ITニュース解説

アップル社が発表した新しいiPhone 17シリーズにおいて、日本国内で販売されるモデルからも物理的なSIMカードスロットが廃止され、全面的にeSIMのみに対応することが決定した。この変更は、単にスマートフォンの部品が一つなくなるというだけでなく、私たちが携帯電話の通信契約を結び、利用する方法そのものを大きく変える技術的な転換点となる。

まず、これまで一般的だったSIMカードの役割から理解する必要がある。SIMとは「Subscriber Identity Module」の略で、契約者の識別情報、電話番号、契約している通信事業者の情報などが記録されたICチップである。スマートフォンはこのSIMカードを読み込むことで、どの契約者がどの通信事業者のネットワークに接続しようとしているのかを識別し、通話やデータ通信を可能にする。物理SIMカードは、このICチップをプラスチック製のカードに埋め込んだものであり、端末のスロットに挿入して使用する。機種変更の際は、古い端末からSIMカードを抜き、新しい端末に差し替えるだけで、電話番号や契約情報を簡単に引き継ぐことができた。

これに対して、iPhone 17で全面的に採用されるeSIMは「embedded SIM」の略称である。その名の通り、SIMの機能を持つチップが、製造段階でスマートフォン本体の基板に直接組み込まれている。物理的なカードの抜き差しは一切不要となり、通信契約に関する情報は、インターネットを通じて遠隔からこの内蔵チップにダウンロードして書き込むことで設定される。この設定作業は、通信事業者のウェブサイトやアプリ上で発行されるQRコードをスマートフォンのカメラで読み取ったり、アプリの指示に従って操作したりすることで完了する。物理的なSIMカードが郵送で届くのを待つ必要がなく、オンラインで契約手続きを終えれば即座に通信サービスを開始できるのが大きな利点である。

eSIMへの完全移行は、利用者と端末メーカーの双方にとってメリットがある。利用者にとっては、一つのスマートフォンに複数の通信事業者の契約情報(プロファイル)を保存できる柔軟性が生まれる。例えば、仕事用とプライベート用で電話番号を使い分けたり、国内用のメイン回線とは別に、海外渡航時に現地の割安なデータ通信プランを追加したりといったことが、SIMカードを入れ替える手間なく、設定画面から簡単に切り替えて利用できるようになる。また、物理的なカードが存在しないため、紛失や盗難による不正利用のリスクが低減され、セキュリティも向上する。一方、メーカーにとっては、物理SIMスロットという部品とスペースを削減できるという利点がある。これにより生まれた端末内部の余剰スペースを、より大容量のバッテリーや高性能なカメラ部品の搭載に割り当てたり、筐体の密閉性を高めて防水・防塵性能をさらに向上させたりと、端末設計の自由度が高まる。

Appleがこのタイミングで物理SIMの全廃に踏み切った背景には、eSIMという技術が十分に成熟し、世界中の多くの通信事業者がeSIMサービスに対応するインフラを整備したことがある。しかし、この移行期においては、利用者が注意すべき点も存在する。最も大きな変化は、機種変更時の手続きである。これまでのSIMカードの差し替えという物理的な作業に代わり、新しい端末で通信事業者のウェブサイトにログインし、eSIMのプロファイルを再発行してダウンロードするという、ソフトウェア上の操作が必要になる。この手続きは通信事業者によって手順が異なる場合があるため、事前に確認が必要となる。また、スマートフォンが突然故障してしまった際、予備の端末にSIMカードを差し替えて急場をしのぐ、といった従来の方法が使えなくなることにも留意しなければならない。

システムエンジニアを目指す者にとって、この変化はハードウェアの仕様変更という側面だけでなく、その背後にあるソフトウェアやネットワーク技術の重要性を理解する良い機会となる。eSIMの仕組みは「Remote SIM Provisioning(RSP)」と呼ばれる、SIM情報を遠隔で安全に書き換える技術によって成り立っている。通信事業者は、膨大な数の契約者のプロファイルを管理し、要求に応じてセキュアに各端末へ配信するためのサーバーシステムを構築・運用する必要がある。このシステムの安定稼働やセキュリティの確保は、通信インフラを支える上で極めて重要な課題となる。また、利用者が契約や設定変更をスムーズに行うためのアプリケーションやウェブシステムの開発においても、eSIMのプロビジョニング処理を自動化するためのAPI連携や、誰にとっても分かりやすいUI/UXの設計がこれまで以上に求められる。iPhoneにおける物理SIMの廃止は、通信機能の制御がハードウェアからソフトウェアへと移行していく「ソフトウェア化」の大きな流れを象徴する出来事であり、今後のITサービス開発においても、このような変化がもたらす影響を考慮することが不可欠となるだろう。