【ITニュース解説】ジョンソンコントロールズ、データセンター向け熱管理ソリューションを拡充
2025年09月11日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「ジョンソンコントロールズ、データセンター向け熱管理ソリューションを拡充」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
ジョンソンコントロールズは、データセンターの熱対策を強化する新製品「Silent-Aire CDUプラットフォーム」を発表した。これは、高密度化するサーバーラックを効率的に冷却するため、信頼性の高い液冷技術を用いる。これにより、データセンターの安定稼働と省エネに貢献する。
ITニュース解説
データセンターとは、私たちがインターネットやクラウドサービスを利用する上で欠かせない基盤施設のことだ。ウェブサイトの閲覧、スマートフォンのアプリ利用、オンラインゲーム、動画ストリーミング、さらにはビジネスの基幹システムまで、これらデジタルサービスの多くはデータセンター内に設置された無数のサーバーやストレージ、ネットワーク機器によって支えられている。これらのIT機器は常に稼働しており、大量の情報を処理する過程で莫大な熱を発生させる。
IT機器が発する熱は、データセンターの運用において非常に重要な課題となる。熱は機器の性能低下や誤作動、さらには故障の原因となるためだ。例えば、私たちが普段使うパソコンも、長時間にわたって重い処理をさせると熱くなり、動作が不安定になったり、フリーズしたりすることがある。データセンターの機器は、それよりもはるかに大規模で高性能なため、適切な熱管理なしには安定したサービス提供が不可能となる。このため、データセンターでは効率的な冷却システムが必須だ。
これまで、データセンターの冷却には主に「空冷」方式が用いられてきた。これは、家庭用のエアコンのように冷たい空気を送り込み、機器の周りの熱い空気を排気することで冷却する方法だ。多くのデータセンターで長年採用され、広く普及してきたが、近年その限界が見え始めている。その背景には、IT技術の急速な進歩と「高密度化」がある。高密度化とは、データセンターの限られたスペースに、より多くの、より高性能なサーバーやストレージを詰め込むことだ。サーバーの性能が向上すればするほど、一台あたりの処理能力は上がるが、同時に発熱量も増大する。さらに、そうした高性能なサーバーを一つのラック(サーバーを格納する棚のような構造物)に多数集積することで、ラック全体の熱量は劇的に上昇する。空気は熱を伝える効率があまり高くないため、特に高密度ラックのような発熱量の大きい環境では、冷たい空気をどれだけ送り込んでも、機器の内部まで十分に冷却することが難しくなってしまうのだ。また、冷気を送り込むための巨大なファンの電力消費も膨大になり、運用コストの増大という課題も抱えている。
このような空冷の限界を打破するために、近年注目されているのが「液冷」技術である。液冷は、空気ではなく、水や特殊な冷却液といった液体を用いてIT機器を直接冷却する方式だ。液体は空気と比べて非常に高い熱伝導率を持つため、機器が発する熱を効率的に吸収し、素早く外部へと排出することができる。身近な例では、高性能なゲーミングPCなどでCPUを冷却するために使われる水冷システムを想像すると分かりやすいかもしれない。データセンターの液冷システムは、これをデータセンター全体で大規模に展開するものだ。
ジョンソンコントロールズが今回発表した「Silent-Aireクーラント・ディストリビューション・ユニット(CDU)プラットフォーム」は、この液冷システムの中核を担う重要な製品である。CDUは、データセンター全体に冷却液を供給し、各高密度ラックへと分配する役割を果たす。具体的には、CDUはデータセンターの主冷却システムから冷やされた冷却液を受け取り、それを適切な温度と圧力で各サーバーラックに送り出す。ラック内のサーバー機器が発する熱を冷却液が吸収すると、温かくなった冷却液はCDUに戻され、そこで再び冷却されてシステム内を循環する。このように、CDUは冷却液の温度、流量、圧力を適切に管理し、液冷システム全体が安定かつ効率的に機能するように制御する重要な装置なのだ。「プラットフォーム」という言葉からは、単一の製品にとどまらず、さまざまなデータセンターの規模やニーズに合わせて柔軟に対応できる多様な機能や構成を提供する意図が読み取れる。
このCDUプラットフォームが「信頼性・効率性に優れた液冷」を特徴としていることは、データセンターの運用にとって非常に大きなメリットをもたらす。信頼性が高ければ、冷却システムがダウンするリスクが低減され、結果としてデータセンター全体のシステム停止(ダウンタイム)を防ぎ、安定したサービス提供が可能となる。また、効率性が高ければ、冷却に必要な電力消費を大幅に抑えることができ、データセンターの運用コスト削減や環境負荷低減にも大きく貢献する。特に、大規模なデータセンターでは電力消費が莫大になるため、冷却効率の改善は直接的なコスト削減に直結するのだ。
ジョンソンコントロールズのような企業がデータセンターの熱管理ソリューションに注力する背景には、データセンター市場の継続的な成長と、AI(人工知能)や機械学習、高性能コンピューティングといった分野の急速な普及がある。これらの技術は、従来のサーバーよりもはるかに高い処理能力と、それに伴う膨大な発熱量を要求するため、空冷では対応しきれない状況が増えている。液冷のような次世代の冷却技術は、このような高性能コンピューティング環境を安定して運用するために不可欠な存在となっている。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、サーバーやソフトウェアの知識だけでなく、データセンターを支える物理インフラ、特に熱管理技術の進化を理解することは、今後のキャリアにおいてますます重要になるだろう。高性能なシステムを設計・構築する際には、単にソフトウェアの要件だけでなく、そのシステムが稼働するハードウェアの熱特性や冷却要件まで考慮に入れることが求められる時代になっている。未来のデータセンターは、さらに高密度化し、より強力なコンピューティング能力を持つようになるだろう。それに伴い、液冷技術はデータセンターの標準的な冷却方式の一つとして、さらに普及していくことが予想される。CDUはそのような液冷インフラの要として、安定した高性能コンピューティング環境を支える上で不可欠な存在となる。