【ITニュース解説】China says NVIDIA's Mellanox acquisition violated antitrust law
2025年09月16日に「Engadget」が公開したITニュース「China says NVIDIA's Mellanox acquisition violated antitrust law」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
中国の規制当局は、NVIDIAのMellanox買収が独占禁止法に違反したと発表した。買収承認時に課した条件にNVIDIAが違反したと指摘しており、調査は継続中。罰則は未定だ。この発表は米中間の貿易交渉と重なるタイミングで行われた。
ITニュース解説
今回のニュースは、半導体大手であるNVIDIA(エヌビディア)によるMellanox(メラノックス)社の買収に関して、中国当局が独占禁止法違反の疑いをかけているという内容だ。この問題は、単なる企業の買収話にとどまらず、米中間の技術覇権争いという大きな背景を抱えている。
まず、事の発端となったNVIDIAによるMellanox買収の経緯から説明する。NVIDIAは、特に高性能なグラフィック処理装置(GPU)の開発で知られる企業で、近年では人工知能(AI)の計算処理にも不可欠な存在となっている。一方のMellanoxは、データセンター内でサーバー間の通信を高速化するための「相互接続製品」と呼ばれるネットワーク機器や半導体を開発していた企業だ。2019年、NVIDIAはMellanoxを約69億ドル(約1兆円)で買収すると発表し、高性能なGPUと高速なデータ通信技術を統合することで、データセンター向けのソリューションを強化する狙いがあった。
この買収は、各国の規制当局によって承認される必要があった。中国の市場規制当局であるSAMR(State Administration for Market Regulation)は、2020年4月にこの買収を条件付きで承認した。その条件とは、「NVIDIAがGPUおよび相互接続製品を中国市場に継続的に供給すること」と、「公正、合理的、非差別的な原則に基づいてこれらを提供すること」というものだった。これは、NVIDIAがMellanoxを買収することで市場での競争が阻害されないよう、中国企業がNVIDIAの重要な技術にアクセスできることを保証するための措置である。
しかし、今回SAMRは、NVIDIAがこの条件、さらには中国の国内独占禁止法にも違反したという予備調査結果を発表した。独占禁止法とは、特定の企業が市場を独占したり、競争を不当に制限したりする行為を防ぎ、消費者の利益や公正な市場競争を保護するための法律である。SAMRの主張によれば、NVIDIAは買収後に、中国が設定した条件や独占禁止法の精神に反する行為を行ったと見られている。具体的な違反内容はまだ詳しく公表されていないが、市場での公平な競争を阻害した、あるいは中国への供給義務や原則を遵守しなかった、といった点が指摘されている可能性が高い。
現状では、SAMRは予備調査の結果を発表したに過ぎず、NVIDIAに対する具体的な罰則はまだ決定されていない。調査は今後も継続され、最終的な結論が出るまでには時間がかかるだろう。
この発表のタイミングには、政治的な側面も指摘されている。SAMRは数週間前からこの予備調査結果を把握していたとされるが、米国との貿易交渉が行われている最中に発表を控えていた。これは、中国当局が米国との交渉において優位に立つための「切り札」として、この情報を利用しようとした可能性がある。実際に、米中関係は近年、貿易摩擦だけでなく、技術覇権を巡る激しい競争が繰り広げられており、半導体技術はその最前線の一つとなっている。
最近の関連する動きとして、米国がNVIDIAの最先端チップの中国への販売を制限していることも、今回の件と無関係ではない。米国政府は、NVIDIAの高性能なAI向けチップが中国の軍事力強化に利用されることを懸念し、輸出規制を強化している。昨年には、一時的に中国へのチップ供給が禁止された時期もあったが、その後、NVIDIAは規制に対応した性能を抑えた代替チップ(例えばH20チップなど)を中国市場向けに開発し、供給を再開した。
しかし、米国のハワード・ルトニク商務長官は、中国へのチップ供給再開に関して、挑発的な発言をしている。彼は、「我々は中国に最高の技術も、二番目、三番目の技術さえ売っていない。四番目の技術を使い続けさせたいのだ」と述べた。さらに、「中国は自力で技術を構築する能力があるため、我々は彼らが作れるものの一歩先を行き続けることで、彼らが我々のチップを買い続けるように仕向けるべきだ。中国の開発者がアメリカの技術スタックに“依存”するように、十分な量を売ればよい」とも発言した。この発言は、中国の技術進歩を牽制し、意図的に米国技術への依存を深めさせようとする意図が明確であり、中国側の強い反発を招いた。実際に、この発言の後、中国国内の企業はNVIDIAのH20チップの購入を国家安全保障審査まで控えるよう奨励されたと報じられている。
今回の中国によるNVIDIAへの独占禁止法違反の指摘は、直接的にはMellanox買収時の条件違反が焦点だが、その背景には、このような米中間の技術覇権争いと、米国による対中技術戦略への強い不満があると考えられる。
システムエンジニアを目指す初心者にとって、このニュースは、IT業界が単に技術的な側面だけでなく、国際的な政治や経済情勢、そして国家安全保障といった広範な要素によって大きく左右されることを示している。特定の技術や製品が、政治的な理由でサプライチェーンから外されたり、利用が制限されたりするリスクは、今後ますます高まる可能性がある。システムを設計・構築する際には、技術的な要件だけでなく、どの国の製品を使うか、どのような国際情勢のリスクがあるかといった、サプライチェーンの安定性や地政学的な要因も考慮に入れる必要が出てくるだろう。また、特定の国の技術スタックに過度に依存することのリスクを理解し、多様な技術選択肢を持つことの重要性も再認識させられる事例である。