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【ITニュース解説】The Polestar 5 electric sedan makes its world debut

2025年09月09日に「Ars Technica」が公開したITニュース「The Polestar 5 electric sedan makes its world debut」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

電気自動車メーカーのポールスターが新型「Polestar 5」を発表した。ポルシェに対抗する高性能モデルで、新開発のバッテリー技術により超高速充電と圧倒的な加速を実現。自動車の電動化と高性能化を支える技術の進化を示す一台だ。

ITニュース解説

スウェーデンの電気自動車メーカー、ポールスターが、高性能な電動GT(グランドツアラー)セダンである「Polestar 5」を正式に発表した。このモデルは、ポルシェ・タイカンやテスラ・モデルSといった既存のハイパフォーマンスEV市場における強力な競合となることを目指して開発された。Polestar 5は、単に速いだけでなく、その性能を実現するために複数の先進的な技術が投入されており、特にシステム開発の観点から注目すべき点が多い。

まず、車両の性能を支える中核技術として、800Vの電圧システムアーキテクチャの採用が挙げられる。現在主流のEVの多くは400Vシステムを採用しているが、電圧を倍の800Vに高めることには大きな利点がある。電力は「電圧×電流」で決まるため、同じ電力を供給する場合、電圧が高ければ電流を低く抑えることができる。電流が低いと、送電時の電力損失が減少し、発熱も少なくなるため、より細いケーブルの使用が可能となり、車両全体の軽量化と効率向上に貢献する。この高電圧システムは、後述する超高速充電を実現するための基盤ともなっている。

Polestar 5の最も革新的な要素の一つが、イスラエルのスタートアップ企業StoreDot社が開発した「XFC(eXtreme Fast Charging)」と呼ばれるバッテリー技術の採用である。この技術により、バッテリー残量10%の状態から80%までをわずか20分で充電することが可能になる。この驚異的な充電速度の鍵を握るのが、バッテリーの負極(アノード)にシリコンを多用した新しいセル化学である。従来のEV用バッテリーで一般的に使われるグラファイト負極に比べ、シリコンはより多くのリチウムイオンを蓄えることができるため、エネルギー密度の向上に寄与する。しかし、シリコンは充放電の際に大きく膨張・収縮するという特性があり、これがセルの寿命を縮める大きな課題とされてきた。StoreDotの技術は、この課題を克服し、高いエネルギー密度を維持したまま、超高速充電と長寿命を両立させることに成功した。このような高速充電を実現するためには、各バッテリーセルの温度や電圧、電流を常に監視し、最適に制御する高度なバッテリーマネジメントシステム(BMS)が不可欠であり、ハードウェアだけでなく、それを制御するソフトウェアの精密さが性能を左右する。

車両の基本骨格であるプラットフォームにも、ユニークな技術が用いられている。Polestar 5は、溶接ではなく特殊な接着剤でアルミニウム部材を接合する「接着アルミニウムプラットフォーム」を新たに開発し、採用した。この工法は、少量生産のスーパーカーなどで用いられることが多く、軽量でありながら非常に高い剛性を持つ車体を作り出すことができる。高い車体剛性は、サスペンションが設計通りの性能を発揮し、正確なハンドリングや安定した走行性能を実現するための基礎となる。また、衝突時のエネルギーを効果的に吸収・分散させることにも繋がり、安全性の向上にも寄与する。

これらの技術基盤の上に構築された駆動システムは、前輪と後輪にそれぞれモーターを搭載したデュアルモーター式の全輪駆動(AWD)である。システム全体の最高出力は872馬力(650kW)、最大トルクは900Nmに達し、停止状態から時速100kmまでを3.2秒で加速する性能を持つ。この強大なパワーを効率的かつ安全に路面に伝えるため、ソフトウェアによる緻密な駆動力制御、すなわちトルクベクタリングが重要な役割を担う。コーナリング時などに、車両に搭載された各種センサーからの情報をECU(電子制御ユニット)がリアルタイムで解析し、左右の車輪に配分する駆動力を瞬時に調整する。これにより、車両はドライバーの意図通りに曲がり、極めて高い走行安定性を実現する。これは、ハードウェアのポテンシャルをソフトウェア制御によって最大限に引き出す、現代の自動車開発における典型的なアプローチである。

Polestar 5は、単なるパワフルな電気自動車ではなく、800Vアーキテクチャという電力システムの土台の上に、革新的なバッテリーセル技術、高度なBMS、軽量高剛性な車体構造、そしてそれら全てを統合・制御するソフトウェア技術が組み合わさった、先進技術の集合体と言える。自動車が、機械工学だけでなく、電子工学や情報工学といった多様な技術領域の高度なシステムインテグレーションによって進化していることを示す好例である。

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