【ITニュース解説】Rimac introduces its take on solid-state batteries for electric vehicles

2025年09月09日に「Engadget」が公開したITニュース「Rimac introduces its take on solid-state batteries for electric vehicles」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

EVメーカーRimacが、軽量・安全でより多くのエネルギーを蓄えられる「全固体電池」の新型バッテリーを発表。EVの航続距離を伸ばし、安全性を高める次世代技術として期待される。ただし、実用化に向けた具体的なスケジュールはまだ未定だ。(117文字)

ITニュース解説

クロアチアの高性能電気自動車(EV)メーカーであり、技術サプライヤーでもあるRimac Technologyが、次世代のバッテリー技術として注目される「全固体電池」のみを使用した新しいEV向けバッテリーパックのプラットフォームを発表した。この発表は、EVの性能を飛躍的に向上させる可能性を秘めた技術が、実用化に向けてまた一歩前進したことを示す重要な出来事である。

現在、市場に出回っているEVのほとんどは「リチウムイオン電池」を搭載している。この電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充放電を行うが、そのイオンの通り道となる「電解質」には可燃性の液体が使われている。この液体電解質は、性能面で実績がある一方で、事故などによる強い衝撃で発火するリスクや、低温環境での性能低下といった課題を抱えている。

これに対し、Rimacが採用を発表した「全固体電池」は、その名の通り、液体電解質を固体の材料に置き換えたものである。電解質を固体にすることによって、従来の電池が抱えていた多くの課題を根本的に解決できると期待されている。まず最も大きなメリットは安全性の向上だ。電解質が不燃性の固体になることで、バッテリーの破損時に起こりうる発火や液漏れのリスクを劇的に低減できる。これにより、EVの安全性をさらに高いレベルに引き上げることが可能になる。

次に挙げられるメリットは「エネルギー密度」の向上である。エネルギー密度とは、バッテリーの同じ重さや体積あたりに、どれだけ多くの電気エネルギーを蓄えられるかを示す指標だ。全固体電池は、液体を保持するための部材や複雑な安全機構が不要になるため、バッテリー内部の構造をよりシンプルかつ高密度に設計できる。その結果、同じサイズのバッテリーでもより多くのエネルギーを蓄えることができ、EVの航続距離を大幅に伸ばすことが期待される。あるいは、同じ航続距離であればバッテリーをより小型・軽量にすることができ、車体全体の軽量化や設計の自由度向上にも貢献する。Rimacが「より軽量で、よりエネルギー密度の高いEVバッテリー」と主張しているのは、この特性に基づいている。

Rimacは、この先進的なバッテリー開発において、全固体電池技術の有力企業であるProLogiumや、素材科学の知見を持つ三菱ケミカルグループと協業している。これは、専門性の高い企業と連携することで、技術的なハードルを乗り越え、実用化を加速させる狙いがあると考えられる。Rimac自身も、アストンマーティンやケーニグセグといった高級スポーツカーブランドにEV関連部品を供給してきた実績があり、自社でも電動スーパーカー「ネヴェーラ」を開発するなど、高い技術力を持つ企業として知られている。そのような企業が、具体的な製品プラットフォームとして発表したことの意義は大きい。

しかし、全固体電池の未来は明るいことばかりではない。その商用化への道のりは依然として険しいのが現状だ。製造コストの高さや、長期間にわたる充放電サイクルでの耐久性、異なる温度環境下での安定した性能の確保など、解決すべき技術的な課題が数多く残されている。実際、数年前に多くの自動車メーカーが全固体電池の開発で提携を発表したが、実用化の目標時期は遅れる傾向にある。例えば、日産自動車は全固体電池を搭載したEVの市場投入を2028年度に目指しているが、これも挑戦的な目標と見なされている。今回のRimacの発表でも、この新しいバッテリー技術がいつ顧客に提供されるのか、具体的なスケジュールは示されなかった。これは、実用化に向けた開発の難しさを物語っていると言えるだろう。

今回のニュースは、EVの未来を左右する全固体電池という革新的な技術が、研究室レベルから実際の車両搭載を見据えた「プラットフォーム」という段階まで進んできたことを示している。Rimacのような先進企業が開発を主導することで、業界全体の技術開発が刺激され、EVが抱える航続距離や安全性といった課題の解決が期待される。システムエンジニアを目指す者にとっても、このようなハードウェアの進化は無関係ではない。バッテリーの特性が変われば、その性能を最大限に引き出すためのバッテリー管理システム(BMS)のソフトウェアも大きく変化する。より高度な充放電制御や、劣化状態を正確に予測するアルゴリズムが求められるようになり、ソフトウェア技術の重要性はますます高まっていく。全固体電池の実用化はまだ先になる可能性が高いが、その動向は今後の自動車産業とIT技術の進化を占う上で、引き続き注目していくべき分野である。