【ITニュース解説】プログラミングの学習方法を聞かれたら、こう答える
2025年09月02日に「Qiita」が公開したITニュース「プログラミングの学習方法を聞かれたら、こう答える」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
プログラミング学習では、同じテーマのアプリを異なる技術で繰り返し作ることが有効だ。「チュートリアル疲れ」に陥らず、知識が定着しやすい。様々なアプローチを試すことで、技術の比較検討や応用力も身につく。
ITニュース解説
プログラミングの学習を始めた多くの人が直面する課題に「チュートリアル疲れ」がある。新しい技術を学ぶために、ReactやVue、Go、Ruby on Railsといった様々な言語やフレームワークの入門チュートリアルを次々とこなしていく。しかし、多くのチュートリアルを完了したにもかかわらず、いざ自分で何かを作ろうとすると手が止まってしまい、結局何も身についていないという感覚に陥ることが少なくない。これは、学習の目的が「チュートリアルを終えること」そのものになってしまい、そこで使われている技術の断片的な知識しか得られていないために起こる現象である。このような学習方法では、応用力が身につかず、知識が定着しにくいという問題がある。
この「チュートリアル疲れ」を克服し、実践的なスキルを効率的に身につけるための強力な学習方法として、「同じテーマのアプリケーションを、異なる技術やアプローチを用いて繰り返し開発する」というアプローチが提唱されている。一見すると遠回りに思えるかもしれないが、この方法はプログラミングの根幹をなす概念を深く理解し、真の技術力を養う上で非常に効果的である。
同じアプリケーションを何度も作る最大の利点は、プログラミングの普遍的な基礎概念への理解が深まることにある。例えば、最初にシンプルなブログシステムを開発する場合、変数や条件分岐、繰り返し処理、関数といった基本的な文法はもちろん、データベースとの連携、ユーザー認証、データの表示といったWebアプリケーションの基本構造を学ぶことになる。そして、次に同じブログシステムを別の言語やフレームワークで開発する際にも、これらの基本的な要素は必ず登場する。2回目、3回目と実装を繰り返すうちに、最初は見様見真似で書いていたコードが、なぜそのように動作するのかという原理レベルで理解できるようになる。また、同じ機能を実現するために「今回はもっと効率的なデータ構造を使えないか」「この処理はもっと簡潔に書けるのではないか」と自ら問いかけ、改善を試みるようになる。この試行錯誤のプロセスこそが、特定の技術に依存しない、エンジニアとしての揺るぎない土台を築き上げるのである。
異なる技術スタックを用いて同じものを作る経験は、それぞれの技術が持つ思想や特性を体感的に理解する上で非常に有益である。例えば、同じチャットアプリケーションを、まずRuby on Railsのようなフルスタックフレームワークで作り、次にバックエンドをGo言語、フロントエンドをReactで分割して作ってみると、両者の開発体験の違いが明確にわかる。Railsでは規約に沿うことで素早く開発が進む一方、GoとReactの組み合わせでは、APIの設計や状態管理などを自分で細かく制御する必要がある。この経験を通じて、モノリシックアーキテクチャとマイクロサービスアーキテクチャのメリット・デメリットや、それぞれのフレームワークがどのような課題を解決するために設計されたのかという背景まで理解が及ぶようになる。これは、単にツールの使い方を覚えるだけの学習では決して得られない、技術選定能力にもつながる深い洞察である。
学習を継続する上で、自身の成長を実感することは極めて重要だ。同じテーマで開発を繰り返すという方法は、この成長を可視化しやすいというメリットも持つ。数ヶ月前に初めて作ったアプリケーションのコードを見返したとき、現在の自分が書くコードと比較して、その構成の拙さや非効率な部分に気づくことがあるだろう。これは、紛れもなく自身のスキルが向上した証拠である。過去の自分を超える体験は、学習に対する自信と意欲を大いに高めてくれる。また、一つのアプリケーションを何度も改善していくことで、単なるチュートリアルの成果物とは一線を画す、質の高いポートフォリオを構築することにもつながる。
この学習法を実践するにあたり、テーマはTODOアプリやブログシステム、簡易的なSNSなど、機能が限定的で全体像を把握しやすいものが適している。まずは、自分が最も学びたい、あるいは比較的扱いやすいと感じる一つの技術スタックを選び、基本的な機能がすべて動作する状態まで完全に作り上げることが重要である。一つ完成させたら、次はその一部を異なる技術で置き換えてみる。例えば、フロントエンドのビュー部分だけをjQueryからReactに書き換えたり、使用するデータベースをMySQLからPostgreSQLに変更してみたり、あるいはバックエンド全体を別のプログラミング言語で再実装したりする。このように、一部分ずつ要素技術を入れ替えながら繰り返し開発することで、それぞれの技術の違いを明確に認識しながら、着実に知識を積み重ねていくことができる。
プログラミング学習の最終的な目標は、多種多様な技術の「使い方」を網羅的に知ることではない。むしろ、目の前にある課題を解決するために、どのような技術を組み合わせ、どのように設計すれば最適かを自ら考え、実装できる能力を養うことにある。そのために、「同じものを違う方法で何度も作る」という学習アプローチは、表面的な知識の収集に終始することなく、問題解決能力というエンジニアにとって最も重要なスキルを鍛え上げるための、確実で効果的な道筋となる。この地道な反復こそが、本物の技術力を手に入れるための最短距離であると言えるだろう。