【ITニュース解説】RAGをノーコードで驚くほど簡単に構築してナレッジ活用 Google Cloudを使った方法とは
2025年09月04日に「@IT」が公開したITニュース「RAGをノーコードで驚くほど簡単に構築してナレッジ活用 Google Cloudを使った方法とは」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
RAGシステムは専門知識やソフト不要で、ノーコードかつ数ステップで簡単に構築できる。Google Cloudを使えば、AIチャットボットアプリの社内公開まで容易に実現し、組織のナレッジ活用を進める。
ITニュース解説
最近の技術進歩により、人工知能(AI)の活用は専門家だけの領域ではなくなりつつある。特に「RAG」(Retrieval Augmented Generation)と呼ばれる技術を「ノーコード」で構築し、企業の知識を効率的に活用する方法が注目されている。これは、システムエンジニアを目指す初心者にとって、AI開発への敷居が劇的に下がったことを示す良い例だ。
RAGとは、生成AIの能力を外部の知識と結びつけることで、より正確で最新の情報に基づいた回答を生成させる技術である。大規模言語モデル(LLM)は、膨大なテキストデータから学習するため、非常に流暢で自然な文章を生成できるが、その知識は学習時点のものであり、最新の情報や、特定の企業が持つ内部情報については知らないという限界がある。また、知らなくてもあたかも知っているかのように誤った情報を生成してしまう「ハルシネーション」と呼ばれる問題も抱えている。RAGはこの課題を解決するために考案された。ユーザーからの質問があった際に、まず外部にある信頼できる知識ベース(例えば、企業の社内ドキュメントやデータベースなど)から関連する情報を探し出し、その情報をLLMに与えて回答を生成させることで、より事実に基づいた正確な情報を提供できるようになる。
このRAGシステムを構築する際、通常であれば複雑なプログラミングスキルやAIの専門知識が必要とされる。しかし、今回のニュース記事が示唆するのは、それを「ノーコード」で、しかも「ソフトのインストールすらせずに」実現できるという画期的な方法である。「ノーコード」とは、プログラミングコードを一切書かずに、グラフィカルなユーザーインターフェース(GUI)を操作するだけでソフトウェアやシステムを開発できる手法を指す。これにより、プログラミング経験がない人でも、まるでブロックを組み合わせるかのように、簡単にアプリケーションを作成できるようになる。
Google Cloudのようなクラウドサービスを利用することで、このノーコードでのRAGシステム構築が可能となる。クラウドサービスとは、インターネットを通じて必要なコンピューターのリソースやソフトウェア、プラットフォームなどを利用できるサービスのことである。自分たちのコンピューターに何もインストールすることなく、ウェブブラウザからGoogle Cloudの提供する各種ツールやサービスにアクセスし、RAGシステムを構築できる。これにより、開発環境のセットアップにかかる時間や手間が大幅に削減され、専門的なスキルを持つエンジニアがいなくても、システムを迅速に立ち上げることが可能となる。
具体的なRAGシステムの構築ステップは、概ね次のようになる。まず、企業内に蓄積されたドキュメント、マニュアル、FAQ、過去のプロジェクト記録などの「知識データ」を準備する。これらのデータが、AIが参照する外部の知識ベースとなる。次に、これらの知識データをGoogle Cloudのサービスにアップロードし、AIが検索しやすい形に加工・整理する。具体的には、文章を意味的な塊に分割し、それぞれを数値のベクトル(埋め込み表現)に変換して、高速に検索できる特殊なデータベース(ベクトルデータベース)に保存する。このプロセスにより、数多くの情報の中から、ユーザーの質問と関連性の高い情報を瞬時に見つけ出すことが可能になる。
そして、ユーザーがチャットボットに質問を入力すると、その質問も同様にベクトルに変換され、ベクトルデータベースの中から最も意味的に近い知識データが検索・抽出される。この抽出された情報とユーザーの元の質問を合わせて、LLMに渡す。LLMは与えられた知識データを「根拠」として参照し、その情報に基づいて回答を生成する。これにより、LLMが学習していない最新の社内情報や、特定の業務に関する詳細な情報であっても、正確な回答を提供できるようになる。
このようにして構築されたRAGベースのAIチャットボットアプリは、社内ナレッジ活用に大いに貢献する。従業員は、必要な情報を探すために膨大なドキュメントを読み込んだり、担当者に問い合わせたりする手間を省き、チャットボットに質問するだけで瞬時に適切な回答を得られるようになる。これにより、情報検索にかかる時間を削減し、業務効率を大幅に向上させることができる。また、情報共有がスムーズになることで、組織全体の生産性向上にも繋がる。
今回のニュースは、AI技術の民主化が進んでいることを如実に示している。これまでは高度なプログラミングスキルやAIに関する深い専門知識が必須だったAIシステム開発が、ノーコードツールとクラウドサービスを組み合わせることで、より多くの人が手軽に取り組めるようになっている。システムエンジニアを目指す初心者にとっても、これは大きなチャンスである。プログラミングの基礎知識はもちろん重要だが、それ以上にクラウドサービスの活用方法や、ビジネス課題をAIで解決する視点を持つことが、これからの時代に求められるスキルとなるだろう。専門家でなくとも、アイデアとツールの活用方法を理解していれば、実用的なAIシステムを構築し、社会やビジネスに貢献できる時代が到来したのである。