【ITニュース解説】Part-37: 🚀 Google Compute Engine – Managed Instance Groups (Stateful) in Google Cloud Platform (GCP)

2025年09月04日に「Dev.to」が公開したITニュース「Part-37: 🚀 Google Compute Engine – Managed Instance Groups (Stateful) in Google Cloud Platform (GCP)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Google CloudのStateful MIGは、VMが自動修復・更新されても、ディスクやIPアドレスといった個別の状態を保持する機能だ。データベースなど、インスタンス固有のデータが重要なアプリに適している。オートスケーリングは非対応だ。

ITニュース解説

現代のアプリケーション開発では、サービスを安定して効率的に動かすためにクラウド環境が広く利用されている。Google Cloud Platform (GCP) もその一つで、ここでは仮想マシン(VM)を柔軟に管理する「Managed Instance Groups(MIGs)」という機能が提供されている。MIGsは、多数のVMインスタンスを一つのグループとして扱い、アプリケーションのスケーラビリティと耐障害性を大幅に向上させる強力なツールである。多くのアプリケーションは、どのVMで処理されても結果が変わらない「ステートレス」な性質を持つため、VMを自由に増減させることができるステートレスMIGsが適している。しかし、中には特定のVMに固有のデータや設定(状態)を保持し続ける必要がある「ステートフル」なアプリケーションも存在する。このような要件に対応するために、GCPでは「Stateful Managed Instance Groups(Stateful MIGs)」という特別なMIGが用意されている。

Stateful MIGsは、その名の通り、グループ内の各VMインスタンスに固有の状態を保存できるMIGである。これは、VMが自動的に修復されたり、新しいバージョンに更新されたり、あるいはシステムによって置き換えられたりする際に、そのVMに紐づく重要な情報を失わないように設計されていることを意味する。具体的には、VMの起動に使われるブートディスクや追加されたデータディスクといった「永続ディスク」、VMに設定されたカスタマイズ情報である「インスタンスメタデータ」、個別に識別するための「カスタムインスタンス名」、そしてVMに割り当てられた「内部IPアドレス」や「外部IPアドレス」といった要素が保持される。これにより、たとえ基盤となるVMが入れ替わったとしても、アプリケーションは中断することなく、以前と同じ状態で処理を継続できる。

Stateful MIGsは、アプリケーションの安定運用に貢献する様々な機能を提供している。まず「ロードバランシング」により、複数のVMにネットワークトラフィックを均等に分散させ、単一のVMへの負荷集中を防ぎ、アプリケーションの応答性を高めることができる。また、複数の異なる「ゾーン」にVMを配置する「マルチゾーンデプロイメント」に対応しており、特定のゾーンに障害が発生した場合でもサービスを継続できる高い可用性を提供する。ヘルスチェックと連携した「自動修復」機能も備わっており、VMが不健康な状態になった場合、自動的に新しいVMに置き換えられるが、この際もStateful MIGsは以前のVMの状態(ディスクやIPなど)を新しいVMに引き継ぐ。さらに、VMのイメージや設定を新しいバージョンに更新する「自動更新」機能も利用でき、この際にも既存の状態は損なわれることなく、更新が適用される。このように、Stateful MIGsはVM自体の信頼性を高めつつ、状態を維持するという重要な特性を両立させている。ただし、重要な注意点として、Stateful MIGsは「オートスケーリング」をサポートしていない。これは、VMの自動的な増減が、各インスタンスに固有に保持されている状態の喪失につながる可能性があり、ステートフルなアプリケーションの特性に反するためである。

Stateful MIGsは、インスタンスごとに固有の状態を維持することがアプリケーションの機能上不可欠な場合に最適な選択肢となる。代表的な利用シーンとしては、データベースが挙げられる。MySQLやPostgreSQL、MongoDBなどのデータベースは、その性質上、データが特定のストレージに永続的に保存され、そのストレージが入れ替わることは許されない。Stateful MIGsを使用すれば、データベースVMが何らかの理由で再作成されても、関連するデータディスクが自動的に再アタッチされ、データベースの運用が継続できる。また、ローカルストレージや特定のカスタム設定に強く依存するレガシーなモノリシックアプリケーションにも適している。これらのアプリケーションは、VMが入れ替わるたびに設定を再構築する必要がある場合が多く、Stateful MIGsによってこの手間を省くことができる。さらに、大量のデータを処理し、その途中経過や結果を永続的なローカルデータとして保持する必要がある長時間実行バッチ計算にも有用である。

GCPで複数のVMを管理する方法には、いくつかの種類がある。最も基本的なのは「Unmanaged Instance Groups(アンマネージドインスタンスグループ)」である。これは、設定が異なるVMを一つのグループにまとめることができ、主にロードバランシングの対象として手動でVMを管理したい場合に利用される。アンマネージドグループは、オートスケーリングや自動修復、自動更新といった高度な機能は提供しない。次に一般的なのは「Managed Instance Groups - Stateless(ステートレスMIGs)」である。これは、インスタンステンプレートというVMの設計図に基づいて同一のVMを多数作成し、自動的に増減させたり、障害が発生したVMを自動で置き換えたりする機能を持つ。ウェブサーバーやアプリケーションサーバーなど、各VMが独立して動作し、セッション情報などを共有しない(または外部サービスに保存する)ステートレスなワークロードに広く利用されており、GCPのVM運用における標準的な方法と言える。そして、この記事で解説している「Managed Instance Groups - Stateful(ステートフルMIGs)」は、ステートレスMIGsと同様にインスタンステンプレートから同一のVMを作成し、自動修復や自動更新といった管理機能を提供するが、それに加えて各VMの永続ディスクやIPアドレスなどの状態を維持する特別な能力を持つ。オートスケーリングはサポートしないものの、ステートフルなアプリケーションの高い可用性と信頼性を実現するために不可欠な選択肢である。

Stateful MIGを作成するプロセスは、いくつかのステップに分かれている。まず、アプリケーションが正常に動作しているかを確認するための「ヘルスチェック」を作成する。これは、MIGがVMの健康状態を監視し、異常を検知した場合に自動修復アクションを実行するための基盤となる。ヘルスチェックプローブからのアクセスを許可するために、適切な「ファイアウォールルール」を設定する必要がある。次に、Stateful MIGが作成するVMの設計図となる「インスタンステンプレート」を作成する。このテンプレートには、VMのOS、マシンタイプ、起動時に実行されるスクリプト、そしてStateful MIGsの重要な要素である追加の「永続ディスク」の設定が含まれる。特に、この永続ディスクはVMが再作成されてもデータが失われないように「Stateful」としてマークされることになる。

これらの準備が整ったら、いよいよStateful Managed Instance Group本体を作成する。MIGの名前、配置するゾーン、そして先ほど作成したインスタンステンプレートを指定する。そして、MIGの最も重要な設定である「状態保持(Stateful configuration)」の項目で、どのリソースを各VMに紐付けて永続的に保持するかを具体的に指定する。作成した永続ディスクを保持対象として設定すると、VMが修復や更新で置き換えられても、そのディスクは新しいVMに引き継がれ、データが保護される。同様に、外部IPアドレスや内部IPアドレスも保持対象に設定できるため、VMのIPアドレスが変わることなく運用を継続できる。これにより、DNSの更新やクライアント側の設定変更なしにサービスを提供し続けることが可能となる。また、この段階でMIGの自動修復に利用するヘルスチェックを指定し、VMが異常になった場合にどのようなアクションを取るかを設定する。

Stateful MIGが作成されると、指定された数のVMインスタンスが起動し、それぞれのVMには指定された永続ディスクやIPアドレスが割り当てられる。GCPの管理コンソールから、作成されたインスタンスグループの状態、各VMインスタンスの詳細、そしてVMに紐づくディスクが正しく作成・管理されていることを確認できる。Stateful MIGを削除する際には一つの重要な注意点がある。Stateful MIGでは、各VMに固有の状態を保持するために作成された永続ディスクは、MIG自体が削除された後も自動的には削除されず、独立したリソースとしてGCP上に残り続ける。これは、誤ってMIGを削除してしまった場合でも、アプリケーションの重要なデータを失わないための仕組みである。そのため、MIGを完全に削除し、関連するデータを不要とする場合には、別途残された永続ディスクも手動で削除する必要がある。同様に、必要に応じて永続的に割り当てられていたIPアドレスも解放し、不要なリソースの課金を避けるためのクリーンアップ作業が求められる。

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