【ITニュース解説】SATA HDDではなく「SAS HDD」「SSD」の価格上昇――その訳は?
2025年09月17日に「TechTargetジャパン」が公開したITニュース「SATA HDDではなく「SAS HDD」「SSD」の価格上昇――その訳は?」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
2025年3月以降、SSDの単価が大幅に上昇し、サーバーなどで使われるSAS接続型HDDも約25%値上がりした。これにより、ストレージ製品全体の価格動向が大きく変化し、新たな局面を迎えている。
ITニュース解説
システムエンジニアにとって、コンピューターシステムを構成する様々な部品の中でも、データを保存する「ストレージ」は特に重要な要素の一つである。ストレージは、私たちが作成した文書、写真、動画、そしてアプリケーションのプログラムやOS(オペレーティングシステム)そのものに至るまで、あらゆる情報を永続的に保持する役割を担っている。そのため、ストレージの性能や容量、そして最も重要な「価格」の動向は、システムの設計や構築、運用計画に大きな影響を与える。
近年、このストレージの価格動向に注目すべき変化が見られる。具体的には、2025年の3月から9月にかけて、特定の種類のストレージである「SSD(Solid State Drive)」と「SAS HDD(Serial Attached SCSI Hard Disk Drive)」の単価が大幅に上昇したという報告がある。これは、システムを構築する上でストレージの選定を考える際、これまでとは異なる視点や判断が必要になる可能性を示唆している。
まず、価格が上昇したストレージについて、システムエンジニアを目指す初心者のためにそれぞれの特徴を簡単に説明する。
HDD、つまり「ハードディスクドライブ」は、内部に磁気ディスクと読み書きを行うヘッドを持つ、昔から使われているストレージである。ディスクが高速で回転し、ヘッドがデータを読み書きすることで動作する。データの読み書き速度はSSDに比べて遅いが、大容量のデータを比較的安価に保存できるため、コストパフォーマンスに優れている点が強みである。このHDDには、主に「SATA(Serial Advanced Technology Attachment)」と「SAS(Serial Attached SCSI)」という二つの接続規格がある。
「SATA HDD」は、主に一般的なデスクトップPCやノートPC、あるいは小規模なサーバーなどで広く利用されている。個人向けのPC市場や、それほど高い性能や信頼性を求められない用途において、最も普及している接続方式のHDDだ。シンプルで扱いやすく、またコストも抑えられるため、多くのシステムで採用されている。
一方、「SAS HDD」は、主に企業のデータセンターや大規模なサーバー、高性能なストレージシステムといった、より高度な用途で利用される。SATA HDDに比べて、データの転送速度が高速であり、より多くのHDDを同時に接続できる高い拡張性を持つ。さらに、エラー訂正機能が強化されていたり、複数の経路で接続することで信頼性を高められたりする特徴があり、ビジネスにおいて停止が許されないようなミッションクリティカルなシステムで重宝される。SATAよりも高性能で高信頼性だが、その分価格も高くなる傾向にある。
そしてもう一つ、価格が大幅に上昇したのが「SSD」である。SSDは、HDDのように物理的な回転部品を持たず、半導体メモリである「フラッシュメモリ」を使ってデータを保存する。このため、HDDに比べてデータの読み書き速度が圧倒的に高速である。また、物理的な駆動部品がないため、衝撃に強く、静音性にも優れている。OSやアプリケーションの起動速度を劇的に向上させたり、データベースのように頻繁に高速なデータアクセスが必要なシステムにおいて、その真価を発揮する。しかし、HDDに比べると容量あたりの単価は高くなる傾向にあった。
今回のニュース記事が示しているのは、このSSDの単価が2025年3月から9月にかけて「大幅に」上昇したという事実である。具体的な上昇率は示されていないが、そのインパクトの大きさを物語っている。さらに、HDDの中でも高性能・高信頼性を特徴とする「SAS HDD」も、同じ期間に「25%近く」という明確な数値で単価が上昇したと報じられている。この25%という上昇率は、システムのコスト全体に少なからぬ影響を与える数字であり、特に多くのSAS HDDを搭載するサーバーやストレージシステムにおいては、予算計画を見直す必要が出てくるだろう。
一方で、ニュース記事のタイトルには「SATA HDDではなく」という表現が含まれていることから、SATA HDDの価格については、SSDやSAS HDDのような大幅な上昇は見られない、あるいは価格が安定している可能性が示唆される。これは、SATA HDDが主に一般消費者向けや比較的負荷の低い用途で用いられることが多く、供給と需要のバランスがSAS HDDやSSDとは異なるためだと考えられる。
今回の価格上昇は、ストレージ市場全体が「新たな局面を迎えている」ことを示している。高性能・高信頼性が求められるエンタープライズ用途でのSSDやSAS HDDの需要が高まっている可能性、あるいはそれらの製品の生産状況や原材料のコストに変化が生じている可能性などが考えられる。システムエンジニアにとって、ストレージの価格は、システムの初期導入費用だけでなく、将来的な拡張や交換にかかる費用にも直結する。したがって、これらの価格動向は、最適なストレージ構成を検討する上で非常に重要な情報となる。
たとえば、新しいサーバーシステムを設計する際、以前であれば「データ容量が大きいのでSAS HDDを多く使う」という選択肢が妥当だったかもしれない。しかし、SAS HDDの価格が25%も上昇したとなると、SATA HDDや、あるいは用途によってはクラウドストレージの利用など、他の選択肢を真剣に検討する必要が出てくる。SSDについても同様で、高速性が必須の要件であれば採用は避けられないが、価格上昇を考慮に入れた上で、容量や冗長性(データを複数箇所に保存して信頼性を高める仕組み)などの設計をより慎重に行う必要がある。
このように、ストレージの価格動向は、システムの性能、信頼性、そしてコストのバランスをいかに取るかという、システムエンジニアにとって重要な判断を要する部分に直接影響を与える。今後のストレージ市場の動向を継続的に追いかけ、最新の情報を把握することは、効率的で安定したシステムを構築・運用するために不可欠な要素となるだろう。