【ITニュース解説】Sequence Dynamic Cache Resizing in Oracle 21c and 19.10
2025年10月02日に「Dev.to」が公開したITニュース「Sequence Dynamic Cache Resizing in Oracle 21c and 19.10」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Oracle 21c/19.10の新機能「Sequence Dynamic Cache Resizing」は、シーケンスのキャッシュサイズを自動調整する。これにより、連番取得の効率が向上し、手動設定の手間や不適切な設定による性能低下を防ぐ。システムの利用状況に応じて動的に最適なキャッシュサイズを提供し、データベース性能を最適化する。
ITニュース解説
データベースにおけるシーケンスとは、システムが自動的に一意な連番の数値を生成するために使われるオブジェクトである。例えば、新しく登録されるデータのIDや、注文番号など、決して重複してはならないが、規則的に増加していく値が必要な場面でシーケンスは非常に役立つ。シーケンスは、データベースが大量のデータを効率的に処理するために欠かせない要素の一つだ。
シーケンスが番号を生成する際、一つ一つディスクにアクセスして次の番号を管理していては、処理速度が大幅に低下してしまう。この問題を解決するために、「キャッシュ」という仕組みが利用される。シーケンスのキャッシュとは、次に使われる予定のいくつかの番号を、事前にデータベースのメモリ上(共有プールと呼ばれる領域)に確保しておくことである。これにより、アプリケーションがシーケンスから新しい番号を要求するたびにディスクへアクセスする必要がなくなり、高速に番号を発行できるようになる。例えば、キャッシュサイズが100に設定されていれば、データベースはメモリ上に100個の番号を確保しておき、それを使い切ってから次の100個をディスクから読み込み直す。この仕組みは、シーケンスを利用するアプリケーションのパフォーマンスに大きな影響を与えるため、キャッシュサイズの適切な設定は非常に重要とされてきた。
しかし、従来のOracleデータベースでは、このキャッシュサイズは開発者やデータベース管理者が手動で設定する必要があった。多くのユーザーがシーケンス作成時にデフォルト値(通常20)のままにしてしまいがちだが、このデフォルト値が常に最適なわけではない。シーケンスの利用頻度やアプリケーションの特性によっては、デフォルト値では十分なパフォーマンスが得られないこともあれば、反対に過剰なキャッシュ設定がメモリを無駄に消費するケースもあった。また、システムの負荷や利用状況は常に変化するため、一度設定したキャッシュサイズが長期的に最適であるとは限らなかった。アプリケーションの制約によりキャッシュサイズを0に設定せざるを得ない場合も存在するが、これはキャッシュによるパフォーマンス向上の恩恵を受けられないことを意味する。これらの課題に対し、常に最適なキャッシュサイズを維持するための手動でのチューニングは、手間がかかる上に専門知識を要するため、しばしば困難であった。
こうした課題を解決するために、Oracleデータベースは21cバージョン(そして後に19.10バージョンにもバックポートされた)で「Sequence Dynamic Cache Resizing(シーケンス動的キャッシュリサイジング)」という新機能を導入した。この機能は、シーケンスの利用状況に応じて、キャッシュサイズをデータベースが自動的に調整するという画期的な仕組みである。シーケンスが頻繁に使われるようになればキャッシュサイズを増やし、あまり使われなくなればサイズを減らすことで、常に最適なパフォーマンスを保とうとする。ただし、手動で設定したキャッシュサイズを下回ることは決してない。この機能はデフォルトで有効になっているため、特別な設定をしなくてもその恩恵を受けることができる。
この動的キャッシュリサイジング機能がどのように動作するかを、具体的なシナリオで見ていこう。まず、キャッシュサイズを3と手動で設定した seq1 というシーケンスを作成する。
1create sequence seq1 cache 3;
シーケンスが作成された後、seq1.nextval を初めて呼び出すと、シーケンスは値「1」を返す。この時、データベースのメモリ上には、次に発行される「2」と「3」もキャッシュされる。ディスク上では、次に発行可能な値として「4」が記録されている。この「4」は last_number と呼ばれ、メモリ上のキャッシュが失われた場合に次にシーケンスが発行する値となる。
ここで、システム運用中にデータベースの共有プール(メモリの一部)をクリアする操作(alter system flush shared_pool;)や、データベースのインスタンスが何らかの理由で再起動するような事態が発生したと仮定する。すると、メモリ上にキャッシュされていた値(この例では2と3)は失われてしまう。この状態で再度 seq1.nextval を呼び出すと、データベースは last_number である「4」を返す。結果として、最初に「1」が発行された後、メモリのキャッシュが失われたことで「2」と「3」がスキップされ、次に「4」が発行されるという「ギャップ(欠番)」が生じる。このギャップの発生は、シーケンスのキャッシュ機能の特性であり、一意な番号を効率的に発行するための代償として、以前から存在する挙動だ。シーケンスは「一意であること」を保証するが、「連続であること」は保証しないという点を理解しておく必要がある。
次に、このシーケンス seq1 を非常に高い頻度で利用する状況を想定してみよう。例えば、100万回もの nextval 呼び出しを伴う大量のデータ挿入を行うとする。これにより、シーケンスの使用率は大幅に上昇する。この間、Oracleの動的キャッシュリサイジング機能は、バックグラウンドで seq1 の利用状況を監視し、自動的にキャッシュサイズを増大させている。手動で設定した初期のキャッシュサイズ3よりも、はるかに大きなキャッシュがメモリ上に確保されている状態になる。
そして再び、データベースの共有プールをクリアする操作(alter system flush shared_pool;)を実行し、その後に seq1.nextval を呼び出す。もし動的キャッシュリサイジング機能がなければ、初期設定のキャッシュサイズに基づいて、小さなギャップが発生するだけだと予想されるだろう。しかし、実際には、以前よりもはるかに大きなギャップが発生する。これは、高負荷時に動的キャッシュリサイジング機能によって自動的に増大していた大量のキャッシュが、共有プールクリアによって一瞬にして失われた結果である。last_number が大幅に増加しており、その時点でのシーケンスの現在の値と、直前の nextval との間に大きな開きがあることで、この動的なキャッシュサイズ増加とそれに伴うギャップの拡大が確認できる。
このように、Sequence Dynamic Cache Resizing機能は、シーケンスのパフォーマンスを自動的に最適化してくれる非常に便利な機能である。しかし、アプリケーションによっては、このような大きなギャップが発生すること自体が問題となる場合もある。例えば、請求書番号や顧客IDなど、連番に欠番があるとビジネスロジックに影響が出るようなシステムでは、ギャップの発生は避けたい事態かもしれない(ただし、シーケンスの番号は一意であり、重複することはない)。
もし、アプリケーションがこのようなギャップに対して非常に敏感であり、自動的なキャッシュサイズの調整を望まない場合は、この機能を無効にすることも可能だ。以下のSQL文を実行することで、システム全体で動的キャッシュリサイジング機能を無効にできる。
1alter system set "_dynamic_sequence_cache" = FALSE;
結論として、Sequence Dynamic Cache Resizing機能は、Oracleデータベースにおけるシーケンスのパフォーマンスチューニングを簡素化し、多くのシステムで効率的な番号生成を自動で実現する。特に、使用頻度が時間とともに大きく変動するシーケンスにおいては、その恩恵は大きい。しかし、この機能はキャッシュの動的な増加をもたらすため、データベースの再起動や共有プールのクリアなど、メモリ上のキャッシュが失われる事態が発生した際には、従来よりも大きな連番のギャップが生じる可能性があることを理解しておく必要がある。アプリケーションの要件と、一意性と連続性のどちらを優先するかを考慮し、この機能を最大限に活用するか、あるいは無効にするかを慎重に判断することが、システムエンジニアとしての重要な役割となる。