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【ITニュース解説】We Moved from Serverless to VMs — Turns Out Billing Wasn’t Our Only Pain

2025年09月20日に「Medium」が公開したITニュース「We Moved from Serverless to VMs — Turns Out Billing Wasn’t Our Only Pain」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

ある企業はServerlessの費用高騰と、初回起動が遅れる「コールドスタート」を理由に、VM(仮想マシン)へ移行した。当初は費用削減が目的だったが、実際には起動の遅延も運用上の大きな問題であったことが明らかになった。

ITニュース解説

ある企業が、提供していたサービスを動かす基盤を「サーバレス」という仕組みから「仮想マシン(VM)」という仕組みへと変更したというニュースが報告された。この移行の背景には、当初サーバレスが持つとされていた「シンプルな約束」とは異なる、実際の運用における課題が浮上したことがある。具体的には、「毎月の請求額が恐ろしいほど高額になる可能性があった」こと、そして「コールドスタートと呼ばれる処理開始の遅延が煩わしかった」という点が主な理由だ。システムエンジニアを目指す初心者にとって、この事例は技術選定の難しさや、各技術の特性を理解することの重要性を示す良い教材となるだろう。

まず「サーバレス」とは何かを説明する。これは、開発者がサーバーの管理から解放され、コードの記述に集中できるクラウドコンピューティングの実行モデルだ。ユーザーは、特定のイベント(例えば、Webサイトへのアクセスやデータベースの更新など)が発生したときにだけ実行される短いプログラム(関数)を作成し、クラウドプロバイダーにデプロイする。このプログラムは必要なときに自動的に起動し、処理が終われば停止するため、使った分だけ課金されるという非常に効率的な仕組みが特徴だ。サーバーの準備やメンテナンス、スケーリング(負荷に応じてリソースを増減させること)といった煩わしい作業はクラウドプロバイダーが全て行うため、開発者はインフラ管理の手間を省き、迅速にアプリケーションを開発できるという大きなメリットがある。

一方、「仮想マシン(VM)」とは、一台の物理的なコンピューター上に、ソフトウェアによって複数の独立したコンピューター環境を構築する技術を指す。それぞれのVMは、まるで一台の独立した物理サーバーのように振る舞い、独自のオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションをインストールして実行できる。VMを利用する場合、ユーザーはOSの選択、必要なリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)の割り当て、そしてそれらのメンテナンスまで含めて、比較的自由に管理できる。サーバレスと比較すると、サーバーの管理は必要になるものの、その分、システムの挙動をより細かく制御できる点が特徴だ。

今回の企業がサーバレスからVMへ移行した主な理由の一つは「課金(Billing Pain)」に関するものだった。サーバレスは「使った分だけ課金」というシンプルなモデルが魅力的だが、これが逆に予期せぬ高額請求につながるケースがある。特に、多くのリクエストが頻繁に発生する、あるいは一つの処理が長時間にわたって実行されるようなワークロード(処理内容)の場合、個々の実行ごとに課金されるサーバレスのモデルは、固定のリソースを確保して利用するVMよりも総コストが高くなる可能性がある。記事では「長期間実行される」処理が課題であったと示唆されており、このような処理にサーバレスを適用すると、実行時間の累積によって課金が跳ね上がりやすいのだ。コストの予測が困難である点も、企業にとって大きな懸念材料となる。

もう一つの理由は「コールドスタート(Cold Start)の煩わしさ」だ。サーバレス関数は、一定期間リクエストがないと、コスト効率のために非アクティブな「休止状態」になる。次にリクエストが来たとき、関数が実行される環境を立ち上げる必要がある。この環境の初期化にかかる時間こそがコールドスタートと呼ばれ、数秒程度の遅延を引き起こすことがある。Webサービスなどでユーザーが操作を行った際、処理の開始までに遅延が生じると、ユーザー体験の低下につながってしまう。頻繁にアクセスされるサービスであれば、関数が常にアクティブな状態に保たれる「ウォーム状態」を維持しやすいが、アクセス頻度が低い、あるいは予測不能なタイミングで急なアクセスがあるようなシステムでは、このコールドスタートが頻繁に発生し、サービスの応答速度に悪影響を与える可能性がある。

これらの課題に直面し、同社はVMへの移行を決断した。VMであれば、一度起動してしまえば常に稼働しているため、コールドスタートの問題は発生しない。また、長期間にわたって安定したリソースが必要な処理や、予測可能なトラフィック量を持つサービスであれば、固定コストでリソースを確保できるVMの方が、結果的にサーバレスよりも安価になるケースも多い。VMは、システムの安定した運用とコストの予測可能性という点で、同社の「長期間実行される」ワークロードにより適していたと考えられる。

この事例からシステムエンジニアを目指す初心者が学ぶべきことは、どの技術にも一長一短があり、それぞれの特性を理解した上で、実現したいシステムやアプリケーションの要件(性能、コスト、運用性、開発速度など)に合わせて最適なものを選択する重要性だ。サーバレスは特定の条件下で非常に強力なツールだが、万能ではない。特にコストモデルやコールドスタートといった、一見すると「シンプル」な謳い文句の裏に隠された詳細な挙動まで考慮に入れる必要がある。技術選定においては、単なる流行や謳い文句に流されるのではなく、自社のワークロードやビジネス要件と照らし合わせ、多角的にメリットとデメリットを評価する冷静な視点が不可欠だと言えるだろう。

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