【ITニュース解説】ソラコム、ローコードIoTアプリ開発サービスとWi-Fiカメラの連携強化 動画ではない「ライブ画像」取得で何ができるのか
2025年09月10日に「@IT」が公開したITニュース「ソラコム、ローコードIoTアプリ開発サービスとWi-Fiカメラの連携強化 動画ではない「ライブ画像」取得で何ができるのか」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
ソラコムは、プログラミング知識が少なくてもIoTアプリを作れる「SORACOM Flux」とWi-Fiカメラ「ソラカメ」の連携を強化した。これにより、カメラから動画ではなく静止画に近い「ライブ画像」をリアルタイムで取得できるようになり、手軽にIoTシステムを構築・活用できる。
ITニュース解説
ソラコムが、ローコードIoTアプリ開発サービス「SORACOM Flux」と、同社のクラウドカメラサービス「ソラカメ」の連携を強化し、新たに「ライブ画像取得」に対応したことは、IoTの現場での活用を大きく前進させる重要な発表である。
IoT(Internet of Things)とは、様々な「モノ」がインターネットに接続され、データ収集や制御が行われる仕組みを指す。例えば、工場の機械、店舗の設備、家庭の家電製品などがインターネットにつながり、離れた場所から状態を監視したり操作したりする。ソラコムは、このIoTを実現するために必要な通信サービスやプラットフォームを提供しており、誰もが手軽にIoTを始められる環境を整備している企業だ。
「SORACOM Flux」は、ローコード開発と呼ばれる手法を取り入れたIoTアプリケーション開発サービスである。ローコード開発とは、プログラミングコードをほとんど書かずに、視覚的な操作や部品の組み合わせによってソフトウェアを開発する方法だ。通常、IoTデバイスから送られてくるデータを処理し、特定の動作をさせるためのアプリケーションを作るには、専門的なプログラミング知識が求められる。しかしFluxを利用すれば、データの流れをブロックとして表現し、それをドラッグ&ドロップでつなぎ合わせることで、センサーデータの処理、外部サービスとの連携、アラート発報といった複雑な処理を容易に構築できる。これにより、開発期間の短縮や開発コストの削減、そして専門知識を持たない人でもIoTシステムを構築できるという大きなメリットがある。
「ソラカメ」は、ソラコムが提供するクラウドカメラサービスだ。一般的な監視カメラと異なり、ソラカメは撮影された映像をインターネット経由で直接クラウド上に保存する。これにより、録画装置を設置する必要がなく、どこからでもリアルタイムで映像を確認したり、過去の映像を検索・再生したりできる。また、データは暗号化され、セキュアな環境で管理されるため、セキュリティ面でも安心して利用できる。店舗やオフィスでの防犯監視はもちろん、工場の稼働状況の確認、建設現場の進捗管理など、多岐にわたるビジネスシーンで活用されている。カメラデバイス自体も比較的安価で導入しやすく、手軽に高度な監視システムを構築できる点が特徴だ。
今回の連携強化の目玉は、SORACOM Fluxがソラカメから「ライブ画像」を直接取得できるようになった点である。ここでいう「ライブ画像」とは、カメラが撮影している最新の静止画像を指し、動画ストリーミングとは異なる概念である。従来のクラウドカメラサービスでは、継続的に動画を録画し、必要に応じてその動画の一部を切り出して利用することが一般的だった。しかし、動画を常時録画し続けると、通信量が増大し、それに伴うコストも増加する。また、必要な情報を得るために動画全体を解析するのは処理負荷が高く、リアルタイム性に欠ける場合があった。 「ライブ画像取得」では、SORACOM Fluxがソラカメに対して「今すぐ一枚の画像をください」という指示を出し、その瞬間の静止画像をピンポイントで受け取ることが可能になる。これは、特定のイベントが発生した時だけ画像を要求するといった、オンデマンドな画像取得を意味する。例えば、センサーが異常を検知した瞬間や、特定のボタンが押された時など、本当に必要なタイミングでだけ画像を取得するため、無駄なデータ通信やストレージ利用を抑えることができるのだ。
この「ライブ画像取得」機能は、様々なIoTシステムに新たな可能性をもたらす。まず、最大のメリットは、通信コストとストレージコストの削減である。動画を常時ストリーミングする場合に比べ、必要な時に必要な分だけ静止画像を取得するため、データ通信量を大幅に抑制できる。これは、特にセルラー通信のような従量課金制の環境では大きな利点となる。 次に、リアルタイム性の向上と処理負荷の軽減が挙げられる。動画解析ではフレーム単位での処理が必要だが、静止画像であれば一枚の画像を解析するだけでよく、より迅速に状況判断が可能となる。SORACOM Flux上で、この取得した画像を直接処理したり、さらにAIによる画像解析サービスと連携させたりすることも容易になる。 具体的なユースケースを考えると、例えば小売店舗では、不審な動きをセンサーが検知した際にのみソラカメのライブ画像を取得し、その画像を自動で店長に通知するといった防犯システムが構築できる。工場では、生産ラインのセンサーが異常値を検出した際に、該当箇所のライブ画像を取得し、機械の現状を即座に確認することで、迅速な対応を可能にする。建設現場では、特定の時間帯に現場の様子を自動で撮影し、進捗管理レポートに活用することも考えられる。また、オフィスの入退室管理システムと連携させ、特定の人物がドアを通過した際にその人物の画像を記録するといった応用も可能だ。これらは全て、複雑なプログラミングなしにSORACOM Flux上で構築できるため、開発のハードルが格段に下がる。
ソラコムのSORACOM Fluxとソラカメの連携強化、特にライブ画像取得機能の追加は、IoTシステム開発におけるコストと手間の両面で大きな改善をもたらす。ローコード開発とクラウドカメラの組み合わせにより、より多くの企業や開発者が、これまでは専門知識や多大なコストが必要だった高度な画像活用システムを、手軽に構築できるようになるだろう。これは、IoTのさらなる普及と、社会のデジタル変革を加速させる一歩となる。