【ITニュース解説】The State of the Art: Sculpting Application State in 2025
2025年09月16日に「Dev.to」が公開したITニュース「The State of the Art: Sculpting Application State in 2025」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
アプリケーションの「状態管理」は、Reduxのような複雑な手法から、Zustandなどシンプルで直感的な新しいツールへと進化している。これにより、開発者は定型コードを減らし、プロジェクトの目的に合わせて最適な方法を選び、効率的に状態を扱えるようになった。
ITニュース解説
現代のソフトウェア開発において、アプリケーションが持つ「ステート」、すなわちデータや状態の管理は極めて重要である。ユーザーの操作履歴、表示中のデータ、システム設定など、アプリケーションの挙動を左右するあらゆる情報がステートに含まれる。かつて、多くの開発現場で広く利用されていたのが「Redux(リダックス)」というステート管理手法であった。Reduxは、アプリケーション全体のステートを一つの場所に集中させ、そのステートがどのように変化するかを厳密なルールに基づいて定義することで、予測可能でテストしやすい堅牢なシステム構築を目指した。ステートを変更するには、「アクション」と呼ばれる「何をしたいか」を示すオブジェクトを作り、そのアクションを受け取ってステートを実際に更新する「レデューサー」という関数、そしてステートから必要なデータを取り出す「セレクター」といった多くの要素を記述する必要があった。これは、大規模で複雑なアプリケーションにおいてステートの一貫性を保ち、問題の原因特定を容易にする上で非常に強力なアプローチであった。
しかし、アプリケーションが単なる情報表示から、より高度で対話的な体験を提供するものへと進化するにつれ、Reduxの厳格な作法が時に開発の負担となることが指摘されるようになった。例えば、ユーザーのテーマ設定やダイアログの開閉状態といったシンプルなステート変更のためにも、多くのアクション、レデューサー、セレクターといった定型的なコード(ボイラープレート)を記述する必要があったのである。これは、アプリケーション本来の機能に関するコード(ビジネスロジック)よりも、ステート管理のためのコード記述に多くの時間が割かれる状況を生み出した。
そこで、現代の開発者たちは、この「記述の重さ」を解消し、より直感的かつ効率的にステートを管理できる新しいツールを求めるようになった。これらの新しいツールは、Reduxのような厳密なアーキテクチャの強制よりも、開発者がアプリケーションの意図を直接的かつ使いやすく表現できるような、柔軟で構成可能な基本的な機能を提供することを目指している。これは、複雑な設計図に忠実に従うアプローチから、より手になじむ道具を使い、自由で直感的にシステムを構築するアプローチへの変化と言える。
これから、代表的な3つのモダンなステート管理ツールについて説明する。これらは、それぞれ異なる設計思想に基づいている。
一つ目は「Zustand(ズースタント)」である。Zustandは、グローバルステート管理において、最も本質的な部分だけを残し、冗長な要素を極力排除するという哲学を持つ。そのモデルは、アプリケーション全体で共有される変更可能なオブジェクトとしてステートを扱う。このオブジェクトには、ステートの初期値だけでなく、ステートを変更する関数も直接定義できる。コンポーネントでZustandを利用する際は、「フック」というReactの特別な機能を使って、ストアから必要なステートや更新関数だけを取り出す。これにより、コンポーネントは指定した部分のステートが変更された時のみ再レンダリングされるため、非常に効率的である。Zustandは、Reactの基本的なステート管理フックであるuseStateを、アプリケーション全体に適用するような手軽さで利用できる。定型的なコードがほとんどなく、シンプルでありながら強力な機能を提供し、多くのアプリケーションで高いパフォーマンスを発揮する。
二つ目は「Jotai(ジョタイ)」である。Jotaiは、ステートを「アトム」と呼ばれる非常に小さな独立した単位で定義し、それらを組み合わせて複雑なステートを構築するというアプローチを取る。個々のステート、例えばユーザー名やテーマ設定などをそれぞれアトムとして定義し、これらの基本的なアトムを組み合わせて、新しい「派生アトム」を作成することが可能である。派生アトムは、依存する他のアトムが更新されると自動的にその値も更新される。コンポーネントでJotaiのアトムを使う際も、useStateに似た感覚で、アトムの値とその更新関数を受け取ることができる。Jotaiの大きな特徴は、Context APIを使わずにグローバルなステートを管理できる点と、無限にステートを組み合わせて複雑な依存関係を構築できる柔軟性にある。これにより、Reactの考え方に沿った形でグローバルステートを扱える。
三つ目は「Valtio(ヴァルティオ)」である。Valtioは、「ステートが単なるJavaScriptオブジェクトであり、それを直接変更するだけでUIが自動的に更新される」という革新的なアイデアに基づいている。ValtioはJavaScriptの「プロキシ」という機能を活用し、通常のJavaScriptオブジェクトを「リアクティブなステート」として機能させる。開発者は、プロキシとして作成されたステートオブジェクトを、通常のJavaScriptオブジェクトと同じように、例えばstate.theme = 'dark'のように直接書き換える。すると、その変更がプロキシによって検知され、ステートを使用しているUIコンポーネントが自動的に再レンダリングされる。コンポーネントでは、プロキシステートの「スナップショット」を取得することで、変更を監視し、必要な時にUIを更新する。このアプローチは、特に深くネストされた複雑なオブジェクトのステートを管理する際に、非常に簡潔で直感的な記述を可能にする。
これらの新しいツールは、それぞれ異なる利点を持つため、開発者はプロジェクトの性質や要件に合わせて最適な選択ができるようになった。例えば、アプリケーションのほとんどのグローバルステートがシンプルで、堅牢かつ最小限の外部ストアを求めている場合にはZustandが非常に適している。ステートが多くの部分に分散し、細かく組み合わせて使いたい場合にはJotaiが優れた選択肢となる。また、深くネストされた複雑なステートオブジェクトを管理し、その更新を簡潔に行いたい場合にはValtioが強力なツールとなるだろう。
これはReduxが不要になったという話ではない。Reduxは、非常に複雑で、あらゆるアクションとステート変更を厳密に追跡する必要があるようなシナリオにおいては、依然として非常に強力なツールであり続ける。しかし、すべてのアプリケーションが同様の厳密さを必要とするわけではない。2025年の開発環境における大きな進歩は、この選択の自由にある。私たちはもはや、一つの解決策に縛られることなく、プロジェクトのアーキテクチャや哲学に完全に合致するステート管理ツールを選ぶことができるようになった。自分の意図に沿ってステートを構築するために、これらの新しい、洗練されたツールを自由に活用できる時代になったと言える。