【ITニュース解説】Stop Abstracting and Start Programming
2025年09月12日に「Dev.to」が公開したITニュース「Stop Abstracting and Start Programming」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
システム開発で、過度な抽象化はコードを複雑にし、理解や保守を困難にする。まずシンプルに機能を実装し、動くことを優先する。必要時にのみ抽象化しよう。不要な汎用性を避け、問題を効率的に解決するコードを書くべきだ。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す初心者の皆さんに、プログラミングにおける「抽象化」という重要な概念とその適切な使い方について解説する。プログラミングを進める中で、コードをより汎用的にし、将来的な再利用を可能にしようと考えるのは自然なことだ。しかし、この再利用性への過度な意識が、時として開発を困難にする「過剰な抽象化」という落とし穴を生むことがある。
開発中に「この処理は繰り返し出てくるから汎用化すべきだ」「この関数はもっと抽象的に書けるはずだ」といった考えが浮かぶことはよくある。これは一見、コードを洗練させるための良いアイデアのように思えるかもしれないが、記事ではこうした思考が「痛みと苦悩の道」へ導く可能性があると警鐘を鳴らしている。
では、なぜ過剰な抽象化が問題を引き起こすのだろうか。プログラマーは誰もが、今書いているコードが将来的に再利用されることを期待し、可能な限り再利用しやすく、汎用的なものにしようと努める。そうすれば、いざという時に最小限の労力で他のプロジェクトに組み込める、と考えるからだ。
しかし、この考え方には盲点がある。行き過ぎた抽象化は、コードベース全体を理解しがたいものにしてしまうのだ。何層にもわたる間接的な参照(インダイレクション)が生まれ、データの流れやロジックがどこを通っているのかを追跡するのが非常に難しくなる。これはコードの複雑性を大幅に増加させ、新しい開発者はもちろん、そのコードを書いた本人でさえも理解や保守に苦労する状況を生み出す。
筆者は過去に、ごく簡単な変更、例えばインターフェース上のテキストラベルを一つ変更するだけで、5〜7層もの異なるファイルを掘り下げなければならなかった経験を述べている。これでは、コードの一部が何をしているのかを理解するだけでも多くの手間がかかり、コードベース全体の構造を頭の中で把握すること自体が極めて困難になる。
具体的な事例として、ボタンのテキスト変更という本来2分で終わるはずの作業が、悪夢に変わったエピソードが紹介されている。そのテキストは、コンポーネント内にも、プロパティ内にも、定数ファイル内にも見つからず、最終的には「UIContextProvider」が「GenericLabelRenderer」をラップし、さらに「LocalizedStringFactory」へと渡されるという、複雑な抽象化の階層の奥深くに隠されていた。目的の文字列を見つけるまでに6つものファイルを辿り、一体何のために作業をしていたのかさえ見失ってしまうほどの状況だったという。誰かが「柔軟で再利用可能なテキストシステム」を目指した結果、簡単な変更が何時間もかかる作業となり、皮肉なことにその複雑なシステムは一度も再利用されることはなかった。これこそが、過剰な抽象化の具体的な代償である。
では、コードを抽象化する適切なタイミングはいつなのだろうか。明確な答えは「状況による」とされているが、記事では生産性を維持し、過剰な抽象化を避けるためのいくつかの指針を挙げている。
まず重要なのは、「最初に動くコードを書き、後から抽象化する」というアプローチだ。最初から完璧な抽象化を目指すのではなく、まずは機能を動作させることに集中し、素直な形でコードを書く。実際に動作するソリューションができあがってから、抽象化やリファクタリングの機会を探すのだ。この方法は、「分析麻痺」という、どうすれば汎用的で再利用可能なものになるかを考えすぎて作業が進まなくなる状態を防ぎ、結果として開発を迅速に進めることができる。
次に「YAGNI(You Ain't Gonna Need It)」、つまり「本当に必要になるまでは作るな」という原則がある。現時点で必要としない機能やユースケースのために抽象化を追加することは避けるべきだ。将来の仮説的なシナリオのために過剰に設計する誘惑に駆られがちだが、抽象化は明確な必要性が生じたときにのみ行うべきである。
また、「シンプルさを保つ」ことも重要だ。コードのシンプルさを追求し、明確なメリットがないのに不必要な複雑さを増すような抽象化は、避けるべき対象となる。シンプルなコードは、一般的に理解しやすく、保守も容易である。
さらに「間接性のレベルを制限する」という点も忘れてはならない。抽象化の層を最小限に抑えるよう努めるべきだ。もし、コードの一部が何をしているのかを理解するために複数のファイルや階層をまたいで参照する必要がある場合、それは抽象化が深すぎる兆候である可能性がある。
そして、「記述的な名前を使用する」こと。抽象化を作成する際には、その目的が明確にわかるような、わかりやすい名前をつけることが重要だ。これにより、コードを読む際の認知的な負担を軽減し、理解を助けることができる。
これらの指針の中でも、特に「最初に動くコードを書く」という点は、筆者も最も価値があると強調している。一時的な、あるいはシンプルな実装であっても、まずは機能が動作することを確認する。そうすることで、初期実装が完了した後に、どの部分が本当にリファクタリングや抽象化を必要としているかを明確に見極めることができる。これは、過度に汎用的な関数や複雑な仮説シナリオの迷路に陥り、目の前のタスクにはあまり役立たない方向にアーキテクチャを進めてしまうことを避けるためにも、極めて重要なアプローチである。
結論として、抽象化はソフトウェア開発において非常に強力なツールだが、他のツールと同様にその使い方を誤ると問題を引き起こす可能性がある。コードのシンプルさに焦点を当て、まずは動作するコードを書き、いつどのように抽象化すべきかを慎重に判断することで、過剰な抽象化の落とし穴を避け、保守しやすく理解しやすいコードを作成できる。プログラミングの究極の目標は、問題を効果的に解決するコードを書くことであり、可能な限り最も汎用的で再利用可能なコードを作成すること自体が目的ではない。次に「全てを抽象化したい」という衝動に駆られたときは、一歩立ち止まって、それが目の前のタスクにとって本当に必要なことなのかどうかを自問自答することが、良いコードを書くための鍵となるだろう。